表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/35

第三十二話 お別れです

 ミール様と拠点に帰ると、ヒース団長とニーナが私を待っていた。

 私はジーニアス殿下との面会の報告がてら、ふたりと話をする機会を設けてもらった。

「そうか……王太子は、そんなにお前のことを……」

「フリッグはそれでいいの?王子様への気持ちと、現実とのギャップに悩んでいるって言っていたじゃない」

 心配してくれる二人に、涙腺が緩んだ。

「私……怖いの。殿下は私が国民に受け入れてもらえるように配慮してくださるわ。でも……分からないの。私、ここを出て、国へ帰るべきなのかな?どうしたらいい?ふたりは、いつも正解を知ってるわ。教えてよ」

「フリッグ……」

 ニーナは優しく私を抱きしめた。

「ここにいたいなら、いればいい」

 ヒース団長は静かに声を絞り出した。

「でも、お前は王太子のところへ行きたいんだろう?怖くても、自分の心に従うんだ。お前は、自由な傭兵なのだから」

「自由な、傭兵……?」

「そうだ」

 ふたりは頷いた。

「たとえ王太子妃になっても、フリッグはフリッグだ。お前は貴族の娘でもあるし、俺たちの大切な仲間でもある。そこに矛盾は生まれない。なにがあっても、お前の心は、お前が望む限り、傭兵だよ」

「大好きなフリッグ!もしなにかあったら、立場なんて捨てて、いつでも戻っていらっしゃい。ここは、いつでも、あなたの帰る場所よ」

 ニーナはお別れを間近にして、涙を浮かべていた。

 突然市井に投げ出された私にとって、親代わりだったヒース団長とニーナ。

私も、ぎゅっとニーナを抱きしめる。

「……今までありがとう……私、みんなが、この傭兵団が、大好き!」

 話しを終えて部屋を出ると、ミール様が待っていた。

 私は、決意を込めて彼に頷いた。

 ミール様も、同じように返す。

「荷物をまとめます」

「……ありがとうございます」

 私は、その足で広間のほうへ行く。

 マリン、ノア、一緒に暮らしてきた仲間たちに、さよならを言うために。

 マリンとノアは、私を祝福してくれた。

「よかったじゃん。これでむさくるしいこの場所とおさらばだね」

 わざと皮肉っぽく言うノア。

 黙り込んで、眉を下げるマリン。

「今まで本当にありがとう。ふたりのおかげで、私……ここまでこられたよ」

「……さみしくなる」

 マリンはそういうと、懐刀を取り出した。

「これ、餞別。魔よけの加護があるから、きっとフリッグを守ってくれる」

「いいの?大事なものなんじゃ……」

「うん。フリッグに持っていてもらいたいんだ」

「……ありがとう」

 私たちはお別れの握手をする。

 マリンの、私と同じ、ガサガサした傭兵の手。

 成り行きを見ていたほかの仲間たちから、ぱちぱちと拍手が生まれてきた。

「おめでとう!」

「いつでも戻ってこい!」

 部屋の入り口で、ヒース団長とニーナも笑っている。

 ミール様が、使用人に私の荷物を運び出す指示を出しているのが見える。

「……ありがとう!……いってきます!」

 私は、涙と笑顔にまみれて、晴れ晴れと拠点を後にした。

 振り返ると、傭兵団の拠点が夕日に染まっていた。

 私のもう一つの家が、そこにあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ