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第十五話 : 東条みるくほ~る

今回は、令和初の投稿ということで頑張りすぎた結果、結構長い文章になってしまいました。(;^ω^)

ですが、それでもいいよという方はゆっくり読んでいってね。('ω')ノ




ここは、とある大型百貨店。


その中にある、屋上を含めた四階建ての駐車場の一階の端に停車している黒の日本車(ト〇タエステ〇マをディーゼルパンク風に改造したようなもの)の中で怪しげな四人組が何やら準備をしていた。


車は四人乗りで、運転席にはスーツ姿でウエーブがかかった金髪の白人系アメリカ人男性、助手席には日本人とはまた違った東アジア系の整形美人寄りの赤髪の女性、運転席から見て右斜め後ろには、本来の1950年代にはないはずの薄型で高性能な個人計算機パソコンと格闘しているスキンヘッドの黒人系アメリカ人男性が、そのとなりにはサイバーパンクな世界観に不釣り合いな紫色でふちが金色のローブをまとっているハッテン場が厠のおじさんを白人寄りにしたような魔法使いがいた。


「宋美鈴さん、例の細工はできていますか?」


 金髪の白人男性は、アジア系の美鈴と呼ばれる女性に敬語で彼らの作戦に重要であろう仕事の進捗を聞いた。


 「ええ、細工は流々。いつでもどうぞですわ。」


 美鈴は、コロコロと笑いながら答えた。


 「しかし、まさか貴方様が直々に今回の作戦に参加してくださるとは。」


 美鈴は、持ってきた爪切りの底についているやすりで爪を整え、その後整えた爪を見るため手を広げて斜め上にあげながら、別にあなたたちのためにやっているわけじゃないといった。


 「でも、あなたたちと同じように日本鬼子リーベングイズを嫌っているのは確かね。」


 すると黒人男性も作業の手を止めて、日本人が彼にしてきたひどい仕打ちを口にした。


 「私もです。彼らは、人種平等を謳いながら、わたしに濡れ衣を着せたうえで身に余る拷問を行ったのです。」


 「放せる範囲でいいんだが、どんな罪を着せられたんだい?」


 すると黒人男性はぐっと握りこぶしを握った。


 「・・・痴漢冤罪というやつですよ。」


 「ほう。」


 「私は日本に観光に来てたことがありまして、電車に乗っている最中に痴漢の犯人にされて、警察も黒人だからと言ってろくな取り調べもせずに、ありもしない罪を吐かせるために殴る蹴るなどの暴行も行ったんです。」


 彼の腕には、黒い肌からもわかるように痛々しい古傷があちこちにあった。


 「かわいそうに。でももう安心して、ここにいるのはあなたを必要としている人達ばかりだから。なんならいつか、私の同志が創り上げるであろう人種の楽園に連れていってあげるからね。」


 美鈴は妖艶な笑みを浮かべて、黒人男性に自分らの国に連れていってあげることを約束した。


 「よかったじゃねえか、姫様直々のお誘いだぜ!憎いねこのお~。」


 紫色のローブの魔法使いは、隣の黒人男性に肘で肩をつんつんしながら茶化した。


 「姫様はよしてよ魔導士ハイピース。あくまで私たちは志を同じとする仲間ですからね。」


 「そうでしたな、ハハハハ!」


 腕時計を確認していた運転手の金髪の白人男性は時間かなとつぶやくと美鈴の方を向いた。


 「そろそろ準備はいいですか美鈴さん。」


 「ええ、いつでもいいわよ。」


 彼女は不敵に笑うと車を降りて、駐車場に完備されている女子トイレに消えていった。


 一方岩原たちは、情報取集のため金門橋区に支店を構えている『みるくほうる』という飲食店に滞在していた。


 本来ならば関東大震災の後の喫茶店ブームなどにより衰退していくはずだったのだが、岩原と同じ転移者によって、客寄せのための様々な工夫が施された。


 例えば、1920年代まではあまり普及していなかったアイスコーヒーを全面的に売り出したり、女給さんたちをモチーフにした「もえきゃら」なるものを店の看板と一緒に出したり、彼女の服や髪型そのものを彼らごのみにしたりした結果、徐々に喫茶店に取られていたお客さんたちも珍しいもの見たさに『みるくほうる』に戻ってきた。


「無理言ってすまなかったな塚田、『家族市場』(小売店の名前)で軽く済ませたかっただろう?」


 塚田は笑顔で首を振った。


「いえいえ、いいんですよ。私も『みるくほうる』にはいつか行ってみたいと思ってましたから。」


「そうかそうか。おっ!ここは充電設備があるのか、ありがたい!」


 そういって岩原は、充電器を取り出して携帯を充電させることにした。


 「それにしても驚きましたよ。まさか岩原さんが噂の転移者だったなんて。」


 「ほかにもいるのか?」


 「ハイ、しかも日本人だけじゃなく、ドイツ人、イギリス人、フランス人、そしてアメリカ人などにもいるらしいですよ。」


 「ソウソウ、これは噂なんだケド『イーグル』の全身である『シャドウイーグル』を立ち上げたものの中にハ、転移者が沢山いたそうヨ。」


 ガリクソンは、ようやくこの珍しい店になれたのか会話に参加してきた。


「話変わるけど、ガリクソンもここに来るのは初めてか?」


 「ええ、物心つく頃にはイーグルにいたし、それにイーグルは日本を敵視している組織だから自然とこういう日本政府の息がかかっている施設は情報取集担当の人しか行かなかったからネ。」


 すると、一応警察なので塚田も恐る恐る手を挙げて容疑者の一人でもあるガリクソンに質問した。


 「あのー、ガリクソンさん。そもそもなんでイーグルなんかに入ろうと思ったのですか?」


 ガリクソンは、妖艶な笑みを浮かべて「知りたいの?じゃあお姉さんがそれ以外のことも後でサービスで教えてあげル。」などと舌なめずりをしながら、塚田にハニートラップのようなものを仕掛けようとしたため、岩原から軽いチョップを食らった。


 「頼むから目立つようなことはしないでくんない?」


 「わかりましたですワ。」


 ガリクソンはむすっとしながらも自分がイーグルに入った理由を教えた。


 それによると、もともとガリクソンはそんなに日本を嫌っておらず、物心がつく前に父親が借金を残して蒸発し、借金取りが押し掛けてきたときにガリクソンを借金の代わりとして『イーグル』(当時は『シャドウイーグル』)に売り飛ばしたらしい。


 また、その後は掃除洗濯食事作りなどの雑用を同じような理由で連れてきた10歳前後の子供たちと混じって行ったそうだ。


 ちなみに特殊性癖はその過程で判明したそうだ。


 ガリクソンが一通り話し終わると、ずっと注文をうかがう時を待っていた店員さんが話しかけてきた。


 「あの~、ご、ご注文はお決まりですか?」


 岩原は、「あ、すいません」と一言言って、メニュー本を開いてどれを注文するか探した。


 「よしじゃあ、俺はこの『しべりあ』と『あいすみるく珈琲』のセットで。」


 「あ、ハイ。『大正もだんせっと』ですね、かしこまりました。」


 「で、お前らはどうする?」


 「そうですね・・・じゃあ、このカレーライスとアイスティーのセットで。」


 「ハイ、えーと・・・・『どかたどころせっと』ですね、かしこまりました。」


 「じゃあ、ワタシはダイエット中だから、この五色カクテルで。」


 「かしこまりました。」


 店員は一通り注文を岩原の前で確認した後、一礼して長いドレスを翻してそそくさと去っていった。


 「ありゃ、もう行っちゃった。ふつうはこの後、お客とおしゃべりの時間なのに・・・新人さんかな?」


 岩原が首をかしげていると、眼鏡をかけた銀髪のいかにも経験豊富そうな女給さんが、新人さんが入った部屋の方から出てきた。


 「申し訳ありません岩原さん、並びにお付き添いの方々。彼女は何分恥ずかしがり屋で、しかもまだここにきてから一か月程度なのでどうかご容赦を・・・」


 「いえ、いいんですよ月夜野さん。別に気にしてませんから。」


 後から聞いた情報によると、この人は月夜野咲子という人で、この『みるくほうる金門橋店』の店長である。


彼女は、齢二十にしてその可憐で瀟洒な見た目に似合う働きぶりで前社長の曳小森から東京神田の本店の次に大きいここ、金門橋で店長を任されたのだという。


 「あいにく今日は黄金週間初日なので若手の娘たちがほとんど休んでしまったのです。」


 なるほど、あたりを見回してみるとまだ容量を得ていない新人さんか、やる気のある姉御肌で店長より4、5歳年上のベテランしかいなかった。


 そのためお客も少なく、いつも冷やかしに来るおじさんたちもおらず、お客はただ飲み食いをしたり、新聞を見たり、携帯で動画を見ている人しかいなかった。


 「お、お待たせしました。『大正もだんせっと』の方~。」


 岩原が視線を戻すと先程の新人さんがおっかなびっくり戻ってきた。


 「これ!なんですかお客さんに対してそのへっぴり腰は!」


 「まあまあ、店長。その辺にしてください。新人さん、追加でこのエルフ男性にみるくを頼む。」


 「あ、ハイただいま。」


 「岩原さん甘やかしてもらっちゃ困ります。」


 「ハハハ、美人には優しくしろって母ちゃんに言われてたからさ。」


 そんな他愛のない話をしていると、店の入り口の自動ドアが開いた。


 店長は、反射的にとびっきりの笑顔で「いらっしゃいませ。」と出迎えた。


 お客は一名で、一言で言うならばずるがしこそうな女狐のような黒髪ポニーテールの女性だった。


 彼女は、ガリクソンの方を向くと顔をニヤつかせて手をひらひらさせ、拳銃でガリクソンを撃つようなしぐさをした。


 当のガリクソンは面識がないのか首をかしげた。


 「おや?あなたはこの町のヒーローである岩原さんじゃないですか!」


 女はそういうと身分証のようなものを出して自己紹介した。


 「初めまして。私は、米京夕日新聞の記者の鈴木紅子と申します。」


 「新聞記者が俺に何の用だ?」


 「そんな怖い顔しないでくださいよ。ほら、あれですよ例のトロワ族の女の子が誘拐された事件。あれの犯人を追っているんですよね。それに対する・・・ほら、犯人に言いたいこととか、岩原さんが思っていることとか・・・。」


 岩原もそうだがほかの店の従業員や客が彼女に対していやそうな顔をしているのは、大衆向けの情報機関関係の人(主に新聞記者)の取材目的での入店禁止を破っているからだけではなく、客の中にイーグルのスパイが紛れ込んでいて、あの女性のせいで岩原が彼女を警戒して情報をしゃべらないだろうと思ったからでもある。


 なので、岩原が威嚇射撃のために拳銃を突き付けようとしたその直前に、目にもとまらぬ速さで岩原より先に拳銃(M1911)を突き付けたアメリカ人男性がいた。


 「てめえ、町のヒーローである岩原様になれなれしいゾ。それにここは取材禁止って立て看板に書いてあるだろうが・・・お帰り願おうかァ?」


 だが、紅子はひるむことなくそれどころかいつ発砲するかわからない男の拳銃を右手で上からゆっくりと下に向けるように押さえつけてこう言った。


 「悪いわね、こっちも商売なんでね。飯の種があればすぐに飛びつき、たとえナチスの総統官邸だろうと東京のど真ん中にいる人の形をしたお天道様の御家だろうとどこへでも行き、編集室で私達好みの歴史を作り上げるのが新聞記者という職業なのよ。」


 そう言いつつ彼女が取り出した薬の入った万年筆に偽装した注射器のようなものを見て男は何かに気が付いたのか、悪態をつくふりをしながら席に着いた。


 「ケッ!あんたのマスメディア精神はよーくわかった。だが、気をつけネーとお前いつか死ぬゾ?」


 紅子はフフッと笑って岩原の方に向き直り「さて」と手拍子をして、中身が白紙の手帳と先程の万年筆に偽装した注射器を取り出して岩原に改めて取材をしようとした。


 その時、また店の玄関のドアが開く音がした。


 「おいーっす。咲子ちゃーん、またきたよ~ん。」


 岩原は、自分の目を疑った。


 「あ、あれは!?」


 紅子もまさか彼が来るとは思っておらず、思わず獲物を落としそうになった。


 「まさか!あれは!?」


 すると店に入ってきたスキンヘッドで丸眼鏡をかけた白の無精ひげの男は表が黒で裏が赤い外套を翻し目をカット開くとこういった。


 「そう、わーれこそはァ!王立警視庁警視総監兼アメリカ王国初代内閣総理大臣!東条英才とうじょうひでとしでアール!!!」


 「な、何で警視総監殿がココにィ!?」


 しかも、東条はひどく酔っ払った様子で千鳥足のまま店長の咲子に絡んできた。


 その時、彼は小声で咲子に何かを話していたが周りのざわめき声で何を言っているのか岩原たちにはわからなかった。


 「かしこまりました。」


 咲子はそういうと、そそくさと従業員室に戻っていった。


 「いやー、今回の誘拐事件の作戦会議が長くて全然進まないもんだから、ヒック、おじさんはおにゃの子たちに癒されに来ちゃった。」


嘘つけ、絶対別のところで酒飲んできただろと言いたかったが、岩原はぐっと我慢した。


 すると、東条は岩原のもとへと近づきドヤ顔でささやいた。


 「君もその調子じゃ、感覚が衰えちゃったのかねー岩原君。」


 その声には、とても酔っ払っているスケベおじさんとは思えないすごみがあった。


 「なっ、ど、どう言うことだあ?」


 岩原が言い終わる前に、東条は懐から南部二十八年式拳銃(近未来のレーザー銃を南部十四年式風にしたもの)を取り出した。


 岩原は、戦争で培ってきた勘から何かを感じ取ったらしく、無詠唱俊足魔法をとっさに使ってその場から離れつつも後ろを振り向いた。


 そこには、人質を逃して拳銃(山西17式)を持ったまま悔しがっている女性がいた。紅子だ。

 東条は、してやったりな顔をして彼女に銃口を突き付けた。


 「観念しな鈴木紅子・・・いや、宋美鈴!貴様をスパイ防止法違反の容疑で逮捕する。これが貴様の逮捕状だ。」


 「ハン!そんな紙切れなんの役にもたちゃしないよ。」


 「それもそうだな、なんせエゲロス人以外のスパイであれば、基本的人権の適用外になるからな。」


 そういって東条が手を挙げると、ガリクソンを覗いた全員が一斉に立ち上がり宋に拳銃を向けた。


 「な、なぜ?なぜですジム団長!私たちは、仲間でしょう!」


 宋は、仲間と思っていたジムと呼ばれているアメリカ人男性に英語で詰め寄った。


「ジム?まさか『イーグル』の団長の息子か!?」


驚く岩原を鼻であしらいながらもジムは、とある理由で宋を責めた。


 「トージョーから聞いたぜ。何でもお前、『イーグル』の派閥争いを利用して俺たちの組織をお前さんの旦那の蒋介岩の手駒にしようとしたそうじゃねーか!?」


 宋は、一瞬後ずさりしかけたがすぐに気を立て直し反論した。


 「そんな根も葉もないうわさ、だれが信じるのよ!第一証拠がないじゃない!」


 「証拠ならあるぞ。」


 そういったのはジムではなく、東条だった。しかも流ちょうな英語で。


 「これを見ろ。」


 驚く二人をよそに東条は、スチームパンクっぽい装飾がちりばめられた腕時計のようなものをいじくると、空中に映像が映し出された。


 それを見た宋は驚愕した。


なんと自分の旦那の蒋介岩と自分が、『イーグル』を乗っ取るための超極秘の会合をあたかも第三者がそこに居るかの如く鮮明に映し出されていたのだ。


「な、なんで・・・あそこには誰もいなかったはず・・・魔導感知装置も部屋全体に効果がいきわたるようにしたのに、あったものといえば、あたしの旦那の銅像・・・まさか!!」


 泣きそうな顔になっている宋を東条は、腕組みをしてこれでもかというぐらいの満面の笑みで見ていた。


「そうだ。そのまーさかだぁ!高い金を払って夜土狩やどかり族の一人をエゲロス人から借りて正解だったぜ!!」


「じゃあ、東条さん・・・これって夜土狩族目線ってこと!?」


「ご名答だよ岩原君!偵察させた後、奴らに許可をとって彼の特殊な脳波を読み取って映像にしたのさ!ガハハハハハ!」


宋は観念したのかその場に座り込んだ。


「よし、塚田君だっけか?こいつを署まで連行してくれ。」


「りょ、了解しました。」


ほどなくして店長も店の奥から戻ってきた。


「仰せの通りに店の周りにいた不審者たちを休みを取っていた戦闘女給たちとともに始末しました。」


「うむ、大儀であった。」


東条は満足そうに頷いた。


岩原は、なんのことかわからなかったので店長に恐る恐る聞いてみた。


「あのー、店長。もしかして休んでた女給さんたちってまさか・・・」


「正確には私が東条さんから依頼を受けて、公には戦闘女給たちである彼女らがあたかも自分たちで休みを取ったかのように見せていただけです。」


今回の事件の犯人の仲間をあぶりだすために、彼女はあえて彼らも知っているであろうこの政府御用達の店『みるくほうる金門橋店』におびき寄せることにした。


その際、戦闘女給さんたちも反政府勢力に職業上顔を知られてしまっているため、電網の公式掲示板にも彼女たちが休むというある意味嘘の情報を流したのだ。


「はあ・・・」


「・・・で、奴らはやはり中国語か英語を?」


「ハイ、ですので情報を聞き出すために何人か詠唱型と無詠唱型の束縛魔法を使い分けてやっと捕縛しました。」


すると、ジムという男が英語という単語に反応して店長に質問した。


「そいつらの中にはやはり俺と同じ組織の人間が?」


「ええ、特殊な方法で質問したら気になる情報をくれたわ。たしか・・・俺たちはラッキーホース派だ!今回の事件とは何の関係もない!とかなんとか。」


ジムは、驚きと殺意が入り混じった表情をしたとき、店の外からサイレンの音がした。


物語を読んでいてわからない部分があれば気軽に質問してください。ネタバレになるもの以外はなるべく答えます。<(_ _)>

あと、十五話を予定していたカーアクションは次の話からになります。もう少し待っててください。

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