セイロンとキリス
あれから数ヶ月が経った。
キャンディとお義母様、リプトン家の当主、一族は没落となり、お父様は心労で倒れ、避暑地へ、そのまま家督は私が引き継ぐ事なった。
ぐーたらとはほど遠い生活だわ。
学園に通いつつ、家の仕事もするものだからとにかく忙しい毎日だったけれど、そばにはいつも‥‥セイがいたから大丈夫だった。
「リゼ、私もついていっていいでしょうか」
「ふふ、セイ。エリザベス様も貴方に会いたいらしいわ。それにお話しもあるみたいよ?」
「私にですか?」
「えぇ、そう手紙に書いてあったわ。さあ行きましょう」
今日は久しぶりにエリザベス様達とお茶会なので手土産にチョコレート菓子を持ち城へ向かうと、エリザベス様とダージリン王太子が待っていた。
「お、きたな。リゼ嬢とセイ君」
「‥‥ダージリン王太子、その呼び名やめて下さい」
「お二人とも、おまたせしまして申し訳ございません」
「リゼ様、お忙しいのにお茶会へ来てくださってありがとう」
「エリザベス様とのお茶会は楽しいですもの」
そう私達は甘いお菓子と共に話す。エリザベス様はお妃教育はもう終わり、来年にはダージリン王太子と結婚をするとの事だ。
「ドレスがね、沢山ありすぎて‥‥」
ズラッと沢山のドレスのデザイン‥‥どれも素敵ね!!エリザベス様にはシンプルかつ、上品なデザインが良いけれど、、
「人生一度の結婚式となると、可愛らしいデザインも着たくなりますよね。これは確かに迷います」
「ですよね!?」
そう私とエリザベス様が話しているとダージリン王太子は
「ドレスなんてなんでもいいじゃねえか?どれも似たようなーーもがっ」
そう口出すダージリン王太子にセイは口を手で塞ぐ。あら、なんだかお二人は仲良しさんね。セイはチラッと私を見てから、少し頬を赤く染めて目を逸らしてエリザベス様に話しかける。
「ところでエリザベス様、私に何かお話しがあると聞きましたが‥」
「あぁ、その事ね。リゼ様にも今後関わる事ですから、そのお話が本題ですの」
なんの話なのか私とセイはお互いの顔を見て、エリザベス様のお話しを聞く事にした。
ダージリン王太子はセイから解放されて、また椅子に座り出した。
エリザベス様は紅茶を一口飲んでから、セイを見る。
「貴方はリゼ様と一緒にいるお覚悟はあるのはわかりますが、リゼ様は現在オレンジペコーの当主でもあります。その当主と一緒になるには、まだ貴方に足りないものがあるのはご存知かしら」
シンと静かな雰囲気となる。セイはピシッとエリザベス様を真っ直ぐ見つめる。
「‥‥身分ですね。私はまだ見習い騎士を目指している学生に過ぎません。どんなにこれから功績を上げても、それ相応の身分が重要です」
私は咄嗟にセイの手をぎゅっと握ると、セイは私を見て、安心して下さいと言わんばかりに微笑んでくれた。
「私は次期王妃として、これからこの国を見守らなければなりません。貴方は強いです、リゼ様と幸せにもなってほしいと願っております。
それと‥‥この馬鹿のそばにいて、信頼できる臣下となって欲しいのですが‥」
この馬鹿というのは、もちろんダージリン王太子だ。皆一斉にダージリン王太子をジッと見つめるがダージリン王太子はヘラヘラ笑うだけだった。ダージリン王太子は、一気に紅茶を飲み干して話しだす。
「ま、要はさ、セイロン!お前キーモン家の養子になれ」
「「はい???」」
突然の事を言いだす、ダージリン王太子に私とセイは声を出してしまった。エリザベス様はダージリン王太子の口に大量のクッキーを入れて睨み黙らせた。
「あの、エリザベス様。キーモン家はエリザベス様の‥‥セイをエリザベス様の義弟に?」
「ふふ、少し近いわね。キーモン家の跡継ぎがいなかったらそうしてたかもしれませんわ。セイロン様は優秀な方ですが、我がキーモン家の跡継ぎはもう弟に決まってますわ」
「‥ではキーモン家にというのは‥」
そう私とセイが質問をするとエリザベス様はダージリン王太子をチラッと見て話す。
「‥‥どの家にも自由奔放な子はいて困まる者ですものね。私のお父様には、弟がいるの。つまり私にとっては叔父にあたるかしら‥‥
その叔父はね、ある令嬢に恋をしたの。だけど令嬢にはすでに婚約者がいて、それでもそばにいたいからと理由で家と名を捨て出ていった人なの。私も最近まで顔とかは知らずに過ごしてたのだけれど‥‥すぐ身近にいて驚きましたわ」
「‥‥つまり、その‥エリザベス様の叔父にあたる方の養子にと?」
「えぇ、私も初めてお会いした時は驚きましたが‥‥本来の名前と身分を、セイロン様の為に取り戻すとおっしゃりましたわ」
「まってください。エリザベス様、その方は私と面識があるのですか?」
そうセイが質問をすると、エリザベス様は苦笑いをしていた。身近にいた?どんな方かしら??
後ろから「エリザベス」と声をかけてくる中年男性がやってきた。
「あら、お父様だわ。外交の仕事を終えたんだわ」
そうエリザベス様は席をたち、キーモン公爵の元へ寄る。この方がエリザベス様のお父様ね、外国へ行く事が多く、私も初めてお会い‥‥ん?私はチラッと、セイを見た。セイも私と同じくキーモン公爵のお姿に違和感というか‥。
タレ目で緑色の髪で、『誰かさん』と似ているからだ。いや、キーモン公爵の方が頭が良さそうで品があり、ピシッとしていらっしゃるわね。
「セイ‥‥私キーモン公爵の、その家出をした実の弟さんって、一人しか思い浮かばないわ」
「えぇ‥私も一人思い当たる人物がおります」
セイの剣の師匠でもあり、我がオレンジペコー家の騎士団長であるキリス団長だわ。
彼の本当の名前はプアール・キーモンだった。
ーー真夜中の夜ーー
「おやすみなさい」
「リゼ良い夢を」
二人は見つめい、挨拶をして各々の部屋へと戻る。
セイロンはまだ部屋へと戻らず、訓練所の方へと足を運ぶとそこには酒を飲みながら、座っていたキリス団長がいた。
呆れた顔をしながら団長に話しかけるセイロン。
「‥‥あなたは何をしているのですか」
「んなあに、もうすぐ俺は出ていく身だからな。少しばかりこの屋敷の思い出を思いだしてたんだわ」
「‥‥」
キリス団長はフウとタバコも出して吸い始めてセイロンを見る。
「で、俺をお父様と呼ぶきになったか?」
「なりませんよ。それにまだ私達は赤の他人です」
「それと俺の本当の名前は知ってるだろうがーー」
「あなたは、キリス。私の師であり、女と酒が好きでどうしようもない団長ですよ」
ツンとそう答えるセイロンを見てニヤニヤ笑うキリスに、セイロンは少し不愉快な顔をするものの話しを続けた。
「‥キリス団長、あなたが恋をした方というのはーーリゼの母親だったのですか」
「‥‥‥若気のいたりだ。気にすんな。今は世の中の女性全員大好きだから!」
そう茶化すキリス団長に、セイロンは黙ったまま訓練用の木刀を投げる。
「うぉ?なんだ?久しぶりに稽古か?」
「えぇ、まあ‥‥」
二人は何も話す事なく、ただ剣の稽古を朝方まで続けていた。何度も何度も、撃ち合いながら‥‥
キリス団長は『勘弁してくれー!』と朝泣いている声が聞こえてきたとかなんとか。




