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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
~ 第一部最終章 ~ 新たなる時を刻み始める世界
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第二話 彼女達の心の空模様は如何に その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




 まだ日も昇らぬ朝と夜の狭間の時。


 私達が休む大部屋には山の澄んだ空気と女性が放つ甘い匂いが混ざり合った何とも言えない匂いが漂っている。


 誰かが寝返りを打つ布と布が擦れ合う矮小な軽い音、安定して等間隔に続けられる呼吸音、そして外の木々の枝同士が微風によって擦れ合う心地良い音。


 素敵な環境音が私の体を包み込み布団の温かさが心の肩ちゃんをポンポンっと叩いて安寧を齎してくれる。睡眠を取る為にこの上無い素敵な環境下で私はぐ――すかと眠りを貪っているかと思いきや……。



 不思議と眠気は襲い掛かって来なかった。



 勿論?? 数十分程度は眠りに就いたけれども夢を見る様な深い眠りは待てど暮らせどやって来ない。


 昨日は三食ぜぇんぶ食べたにも関わらず、だ。


 その最たる理由は恐らく、と言うか確実に昨日聞かされた昔話の影響でしょうね……。


 私が生まれる約三百年前に起こった驚愕の事実は長い時を経ても治癒され、消失する事無く現代にも続いている。



 そしてもう間も無くこの世界に終焉を齎そうとしている者が長い眠りから目覚めてしまう。



 私達に課せられた仕事……、じゃあ無くて運命か。


 それはボケナスの実の母親を殺す事。そうしなければ私達に明るい未来は訪れないのだ。


 頭では分かり切った事実なのだが心は何時まで経っても踏ん切りが付かない様ね。


 満腹になった私がガッツリ眠れないのが良い証拠よ。



 私はアイツが笑って過ごせる世界を守る為、この星に遍く広がる食という文化を守る為に天下無双の槍を揮うと心に誓ったのだが……。


 ボケナスの母親の血でこの手を染める覚悟はあるかと問われたら正直答えに詰まるでしょうね。


 彼女を殺せば世界は救われる、しかし彼の心は誰よりも深く傷付き再起不能になるかも知れない。



 そして……。アイツは母親を殺した私達を一生許さないでしょう。



 くっそぅ……。なぁんでこうなるかなぁ――……。


 世界を守る為とは言えイスハ達が慕ったボケナスの母ちゃんを殺さなきゃならないのよね。


 これが見ず知らずの人なら此処まで悩む事は無いだろうさ。


 頭の中で中々纏まらない考え、うじうじとした決意を誤魔化す様にして寝返りを打つと。



「……ッ」


 両手を枕の上に乗せて天井をこわぁい目で睨み付ける我が親友の横顔が視線に入って来た。



 唇をツンっと尖らせてしっかりと目を開いているという事は私と同じで眠れなかったのだろうさ。


 ユウもきっと中々踏ん切りが付かないのでしょう。彼女は私よりもずぅぅっと優しい性格だからね……。


 親友の横顔に何気なく視線を送り続けていると、ユウが私の視線に気付いたのかそれとも眠れない気持ちを誤魔化す為なのか私の方へ向かって寝返りを打った。



「ん……?? 何だ、マイも起きていたのか」


 目元は青空も満点です!! と合格点を叩き出してくれる様に青く染まり眠れぬ怒りかそれともどうしようもないモヤモヤとした気持ちを誤魔化す為なのか両の眉は今まで見た事が無い程に鋭角に尖っている。



 顔、こっわ……。


 何ソレ。今から親の敵討にでも行くのかって感じの顔じゃん。



「まぁ、ね……」


 普段よりも二段階、三段階落とした声量を放ちユウの台無しになっている可愛い顔を見つめた。


「なぁ、マイはさ。もう踏ん切りが付いたのか??」


「ん――……。包んで話す?? それとも正直に話す??」


「馬鹿正直に、で頼むよ」


 どうでも良いけども馬鹿は付ける必要があったのかしら??


 さり気なく私の性格を揶揄っている様に聞こえるんだけど??


「足りない頭で一晩中考えまくっていたけどさ……。正直まだ決意が付かないのが本音ね。だってそうでしょう?? 漸く見付かったボケナスの母親を私達の手で殺さなきゃいけないんだから」


「だよな……。あたし達がヤらなきゃ世界が滅んじまう。でも、でもさ……。レイドの母親を殺さなきゃいけないのは流石に堪えるって…………」


 ユウがそう話すと左目の端から本当に小さな雫が彼女の美しい曲線を描く頬を伝って行った。


「本当に辛いのなら作戦に参加しなくても良いのよ?? 私が城に突入して全員ぶっ倒せばそれで丸く収まるんだし」



 彼女の優しい心をこれ以上傷付ける訳にはいかない。


 私が全員の罪を被ればそれでも構わない。


 アイツから憎まれるのは私一人の方がユウ達にとってよっぽど楽だろうからね……。



「お前さんの手に世界の命運を握らせる訳にはいかないさ。安心しなって。それまでにちゃんとケジメは付けるから」


「うんっ、私もそうするね。所でさ、昔話の中で出て来た自爆花の実も食べたくない??」


「あ――、あの色んな甘味に変化する実か。イスハ達の話によると確か強力な魔力に反応して爆発するんだろ?? それならあたし達に採取は無理じゃん」


「そこはカエデに頼めば大丈夫そうだし。それに?? 馬鹿みたいに体が頑丈なユウが前線に立てば意外と耐えられそうじゃん」



 例え自爆花の爆発の直撃を受けたとしても。


『あはは!! いやぁ――!! すっげぇ威力だったよな!!』


 美しい深緑の髪は実験に失敗した研究員の様に焼け焦げてゴッワゴワに膨れ上がり、爆発の余波によってほぼその機能を消失させた服の中からはあの恐怖の大魔王が仁王立ちで私達をギラリと光る鋭い瞳で威嚇する。


 そんな酷いナリでもいつもの快活な笑みを浮かべて私達に向かって元気良く右手を振るのだ。


 うんっ、採取の失敗した姿が容易く想像出来るって事は私の天才的な頭はユウの体は爆発を受け止めても大丈夫だと判断しているのでしょうね。


 いつか南の大陸に出掛けたのならユウに採取を頼も――っと。



「あたしは好き好んで超爆発に巻き込まれたくないっつ――の」


 深い悲しみと絶望で参ってしまいそうになっているユウの顔を見つめながら下らない日常会話を続けていると、恐らく私達の会話に聞き耳を立てていたのだろう。



「――――。皆さん、私から改めて話しておきたい事があります」


 カエデが静かに上体を起こして周囲の布団へ視線を送った。



 紺碧の海の彷彿させる綺麗な藍色の髪は栗の外皮を連想させる様にピンッ!! と尖って四方八方に伸びて私達と同じく目元は青ざめている。


 カエデも私達と同じく寝不足か。



「なぁにぃ、カエデちゃん」


 布団の中からモソモソ這い出て来たルーの顔色も悪く。


「どうした、カエデ」


 ユウと同じ姿勢で休んでいたリューヴの顔色も優れない。


「カエデも起きていたのですか……。改めて話したい内容とは一体何ですか??」


 鳥姉ちゃんの寝癖はカエデと一、二を争う様に乱れに乱れ。


「恐らく我々に対して今一度の覚悟を問う為でしょう。そうですよね??」


 蜘蛛は鬱陶しいの無視無視っっと。



 へへっ、やっぱり皆眠れずに心を痛めていたのね。


 私の友達は皆等しく優しい心の持ち主である事に改めて感謝の念が湧いてしまった。


 あ、一応付け加えておくと蜘蛛は友達でも何でも無いのであしからずっと。



「アオイの言う通りです。私達は作戦に参加するとレイドの母親を殺す事になります。作戦成功の暁には恐らく、彼から向けられる瞳は今まで通りとはいかないでしょう」


 アイツから憎しみを向けられるのは正直、心が痛む。


 誰だって好意を抱いている人から嫌われたくないからね。


「そんな事は分かり切っている。だが、そうしなければ我々の世界は消滅してしまうのだろう??」


「リュー、そんな怖い声で言わないでよ……」


「だったらどうすれば良い!! 私は……、私は!! 主の肉親を殺める為に強くなった訳では無いのだぞ!!」


 リューヴが布団を蹴り飛ばして上体を起こすと己の半身に対して睨みを利かせる。


「誰だってそう考えているさ。でもな、リューヴ。あたし達がヤらなきゃ皆の愛する家族や友達が全員死んじまうんだぞ??」


 ユウが真剣そのものの口調で話す。


「分かっている!! 分かっているから苦しんでいるんだ!!!!」


「私達がこうして悩み苦しんでいるという事は、レイドさんはもっと苦しんで居るのでしょうね……」


 鳥姉ちゃんが平屋の閉じられている戸へと視線を送る。


「レイド様の傷付いた御心は私が長い時を掛けて癒しますわ。例え彼から許されなくても、憎まれても、拒絶されても私の心は変わりません」



 けっ、テメェの癒しなんていらねぇんだよ。


 それを受け取る位なら私は阿保みたいな量の飯を食って傷付いた心を癒すわ。



「皆さんの考えは良く分かりました。私も彼の心の空模様を考えると正直、決断に躊躇してしまいます。しかし、しかし……。この世界を守る為に我々は決断しなければなりません。そう、レイドの母親を殺めるという大罪を犯す事に」



 カエデがそう話すと彼女は布団の上で痛い程己の拳を握り込んだ。



「この決意が揺らげば作戦は失敗に終わります。我々の双肩には全世界の命運が重く圧し掛かっている事を忘れない様に。そしてその時までに金剛不動の決意を胸に秘めておいて下さいね」


「ん、分かったわ」


 彼女の有り得ない寝癖に向かってそう話すと平屋の戸がおずおずと、そして静々と開いて行った。



「あれ?? 皆もう起きていたの??」


 ボケナスが普段通りの表情で既に起床……、じゃあ無くて。ほぼ徹夜明けの全員の顔を見渡した。


 私達と同じくほとんど眠れなかったのか顔色は優れないでいる。


 しかし、どういう訳かアイツの額には大粒の汗が浮かんでいた。



「腹が減ったから起きたのよ」


 取り敢えず心の内容を悟られぬ様、ほぼ完璧な理由を付けてボケナスの顔を見てやる。


「さっきモアさん達とすれ違ったからもう直ぐ朝御飯だぞ」


「ッ!!」



 何ですと!? もうそんな時間なのか!?


 彼の声を受けて障子の先の光を確かめると成程、ボケナスの話した通り新しい一日に相応しい陽光が確認出来た。


 こうしちゃ居られねぇ!! 卵掛け御飯を最強最高に美味しく食べる為にも今からもっとお腹を空かせておかないと!!!!



「おう!! 野郎共!! 朝の鍛錬に付き合いなさい!!!!」


 太腿に掛かっている布団ちゃんを適当に放り投げて畳の上に両足を突き立てて叫んでやる。


「あたしはいいや。もうちょっと横になってるから」


 こ、この無駄に育った巨乳をぶら下げている乳牛めがっ!!!!


「ユウ!! 最高の朝飯を食べる為にお腹を仕上げておかなきゃいけないの!!」


 彼女の体の上に乗っかっている布団を引っぺがそうとするが。



「ぐににぃぃいいいい――――ッ!!!!」


「無駄な努力御苦労さ――ん」


 私のきゃわいい力ではびくともしなかった。



 何これ!? 私が掴んでいるのは布団なのに超重たい岩を持ち上げているみたいなんだけど!?


 こ、こうなったら奥の手だ。龍の姿に変わって布団の内側から強制的に起こしてやらぁ!!!!



「とうっ!!!!」


「んなっ!?!?」


 取り敢えずユウの腰辺りに突貫を開始すると頭頂部にムニっとした柔らかい感触を捉えた。


 ほぅ?? 此処は恐らくユウの可愛いお尻ちゃんでしょうね。


 突破口は此処から開き!! 貴様の沈んだ心と部下達を包み込む暗い雰囲気を払拭してやるわ!!



 ったく、隊長ってのは本当に大変よね。だから余計に腹が減るのでしょう。



「ほぉっれ、ほれっ。どうさ――?? 尻の割れ目に手を入れられるのは堪えるだろう??」


「アハハ!!!! わ、分かったからあたしの服の中から出て行ってくれ!!!!」


「じゃあ俺はもう少し休んでいるからね」


「分かりましたわ。レイド様の御体を癒す為にもアオイが添い寝をしますわねっ」


「うん、気持ちだけ有難く請け負っておくよ」


「あ――れ――っ」


「アオイ。チクチクした毛が痛いですよ??」


「うふふ、慣れればそれが快感になるのですっ」


 そいつの気色悪い毛はぜってぇ快感に変わらねぇからな?? 鳥姉ちゃんには後でその事をしっかりと教えておかなければ……。


「ひゃぁっ!? そ、そこは駄目だ!!!!」


「うひょ――ッ!! 相変わらず良い匂いがするしやわらけぇ――!!!!」


 ユウの妙に湿っているお尻の割れ目に手を、尻尾を突っ込み彼女の陽性な感情を強制的に解放する為。そして隊全体の雰囲気を陽性な空気に上昇させる為に私は暗闇の中で一人健闘を続けていたのだった。



お疲れ様でした。


外に出たら花粉、家に帰って来ても花粉……。何処に出掛けても花粉が襲い掛かって来るこの花粉ヘルはどうにかなりませんかね!?


息苦しさと鼻から零れ続けて来る大量の水分……。早くこの季節が去ってくれと只々祈りながら執筆を続けてしましたよ。


花粉症の読者様達も同じ苦しみを味わっていると思われますのでどうか万全の花粉対策を講じて下さいね。


そしてブックマークをして頂き有難う御座いました!! 花粉症で体が疲れ切っている中、本当に嬉しい励みとなりましたよ!!




それでは皆様、お休みなさいませ。

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