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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act six 第6幕 Reincarnation──『輪廻』
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輪廻編 3話 慈極道3

 目の前には戦前建てられたと思わしき、近代的な西洋風の豪邸。それが色絵家の実家であった。2階建てだが、地下には座敷牢と呼ばれる施設があるらしい。何故そんなものがあるのかは理解が及ばないが、瑠璃くんはそこに閉じ込められていたと言っていた。


 門の前には護衛軍所属の軍人らしき少女が立っている。階級は准尉官。見たことは無いが筒美流の使い手で師範代級の実力がある思われる。


「それで来たのは良いけど、まさか正面突破する気?」

「ふむ……ついて来い」


 パラドはそう相槌を打つと堂々と正面に歩いていく。


「ちょっ……ちょっと!」


 焦ってついて行くと、私達は軍人に見つかった。私はその瞬間、『僻遠斬撃リモートインパクト』と『痛覚支配ペインハッカー』で相手を気絶させる準備をする。


「仮面の男と漆我しつがくれない!」


 少女がそう叫んだ瞬間、彼女は倒れたのだった。勿論、私がやった訳では無い。『パラド』の仕業だ。特異能力エゴを使ったようにも見えなかった。決して相手も弱い訳では無い。


 これが最強の特異能力者エゴイスト止水しすいだいを殺した男の力か。


「無茶苦茶ね」

「温存しておけ。お前が一撃で仕留められる相手では無い」

「殺したの?」

「いや。気絶させた。奴に気付かせる為に」

「奴……?」


 私がそう彼に尋ねると館の中から大きな力が揺らめいたように見えた。私もこの力何処かで見たことがある。


「まさか……浅葱あさぎ氷華ひょうか⁉︎」

「行こうか」


 私の静止を振り切るように館の扉を開けて、内部へと進んでいくパラド。


「……ちょっ! 祖父ししょうレベルの人間と正面から戦う気なの?」

「奴の攻撃は全て俺が受けきる。お前は色絵紫苑の攻撃を全力で回避しろ」

「待って待って待って! 整理できない!」

「来るぞ!」


 正面玄関前の大きな中央階段の上からとてつもない覇気を纏う二人の人間が見えた。


 浅葱氷華と色絵紫苑。二人とも止水題と並ぶ護衛軍最強の一角だ。あの天照てんしょうてる大将補佐ですら、対マンでは絶対に勝ち目が無いと言った二人。実力的には泉沢いずみさわさんよりも上。祖父ししょうでもこの二人を同時に相手なんてしないぞ。


「仮面の男だけだと思っていたが、まさか筒美紅葉もいるとはな。オイ、お前。宣言通りサシでやるんだろうな?」


 浅葱氷華はとてつもない圧を私たちにかけながら、煙草に火をつけそう言った。


「望み通りにしてやろう。だが、そちらの女は俺に用があるみたいだ」


 それに応えるが如くパラドは圧に圧をぶつけて返す。そして、それに呼応するかのように、着物と刀が特徴的なポニーテールの女性……色絵紫苑は刀を抜き臨戦体勢へと入った。


『素の力が化け物じみてる。何なのよコイツら!』


 私も髪を結び『同調アシュミレーション』を行い臨戦体勢に入る。


「浅葱。貴様、黙っていたな?」

「何を?」

「あの仮面、題さんを殺した奴よ。私とあの奴が黒い糸で繋がっている」

「チッ。まともに勝負できる奴が少ない俺の身にもなれよ」


 舌打ちをした瞬間、『あーあ』と彼は嘆く。


「んでどーすんの? 譲ってくれないの? お前じゃアレ倒せないと思うんだけど」

「貴様から殺すぞ、浅葱」


 彼女は刀を浅葱氷華に向ける。


「オイ、無職。刀を向けるとは良い度胸だな。お前、時間が止まっても動けんの?」

「出 来 る」

「おーこわ」


 彼はやれやれとタバコを消し炭にする。それを皮切りに色絵紫苑がこちらを向く。


「貴様は後だ。漆我紅。両親だけでなく、瑠璃るりを誑かした事、後悔してもらう」


 彼女が私に飛ばしたのは殺気。一介の感情生命体エスターならそれだけで行動が出来なくなる程のものだ。私も本気を出さなければ文字通り太刀打ち出来ない。


「……?」


 私が彼女の殺気を受け切ると浅葱氷華がこちらを怪しむように見た。


「どうした浅葱」

「あいつ一昨日あった時には佇まいがズブの素人だった。まるで今は達人かってくらい落ち着いてやがる」

「本気を出していなかっただけだろう」

「……面白い。仮面の男はお前にやるよ。俺は筒美紅葉を仕留める」

「……ッ!」


 私が構えた瞬間、パラドは浅葱氷華に体術で攻撃を繰り出していた。


「……⁉︎」

「言っただろう。望み通りにしてやると」


 パラドのハイキックを言葉とは裏腹に片手で受け止める浅葱氷華。私にも今の挙動が分からなかった。まるで、あの蹴りは当たってから放たれたような挙動だった。それを浅葱氷華は止めた。


「っぶねーな!っておいおいおい、そりゃ反則だろ!」

「コレに対応できるか。流石だな」

「こりゃ不意をつけば題を殺すことも出来るなぁ!」


 今のは一体なんだ。私と同じくパラドの挙動を見て、色絵紫苑も言葉を失っていた。


 パラドと浅葱氷華。彼らは互いに距離をとり互いの間合いを推し量る。


「因果の逆転。起点の前に現象を起こした。つくづく化け物じみてるな。オイお前、そうだろ?」

「正解だ。対応方法は俺の攻撃を避けるのでは無く受けきるのみ。お前の得意分野だろ?」


 パラドは懐中時計を手に持つとカチカチとそれについているボタンを押す。


「……詰将棋がお好みか? 悪い紫苑、事情が変わった。コイツは俺の獲物だ」


 瞬間、浅葱氷華は防御術で自身を覆い氷の鎧を着たような姿となる。そこに唖然とする色絵紫苑。


「……」


 試しに彼女に挨拶をする。


「聴かれてますよ、お義姉様?」


 その瞬間、ブチリという大きな音が響き渡った。


 怒髪天を突く。人は極限まで怒るとこうなるのだろうか。ポニーテールが逆立つのは初めて見た。


 いや、私も別に彼女を怒らせる為にそんな事を言った訳ではなかったのだが、何故そうなったのだろう。


「今、虫の居所が悪いのよ。貴様にも姉と呼ばれる筋合いは無い!」


 瞬間、この場全員を建物ごと斬る斬撃がその刀から放たれた。

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