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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act five 第五幕 lunatic syndrome──『感情の希釈』
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堕落編 2話 ひとのしあわせはみつのあじ2

 一度、薔薇ばらに相談してから答えてみるか。


「……『ちょっと予定があるからスケジュール調整したら行くね』っと、送信」


 送信した瞬間、すぐに既読が付き返事もすぐ返ってきた。


『分かったよ。俺はいつでも良いから』


 ……なんだろう、私に話でもあるのだろうか。


「……とりあえず、薔薇が許可してくれれば言ってみるかぁ」


 私はそのまま体を伸ばすストレッチしながら、護衛軍の本部に帰還した。


 …………

 ……


 夕方程の時間帯、合同任務も撤収が完全に終了し消耗していた紅葉もみじ白夜はくやくん達が回復したくらいの時間帯になった頃、私は薔薇から例のプレゼントを受け取っていた。


「薔薇……アナタ……本当にこれ私に似合うと思って……?」

「はいですわ!」

「……うー」


 薔薇から貰った物はデニムショートのパンツに、私の特異兵仗アイデンのバタフライナイフともう一つ予備のサバイバルナイフをつける事ができるナイフホルダーとなるレッグチョーカー。トップスはぶかぶか気味の肩とへそがでる白色のシャツ。


 まるで、ダンサーのような格好であった。というか、ブラの紐が見えてて恥ずかしい。


「うー……露出が多い!」

「可愛らしいですわ!」

「まぁ、アンタがそういうなら良いけど……」


 溜息を吐きながら、やれやれと言う私を見て違和感を抱いたのか、薔薇は神妙な面持ちをし私に訊ねてくる。


「黄依さん? ……なにかありましたの?」

「いや、別に何かあったって程じゃ無いけど……。白夜くんがね」


 白夜くんの名前を聴いた瞬間、薔薇の目の色が変わった。


「白夜さん……ですか」


 それと同時に昔、私は白夜くんのことを好きだったことを思い出す。好きだった理由は私ともう親がいないと言う点で境遇が似ているからだったから。そして、雰囲気が幸の薄い、私の父親と同じ感じだったから。


 薔薇は私が白夜くんのことを好きなのを知っていたのだろう。だから、こういう風に表情を変化させた。


わたくし……ずっと聴きたかった事がありましたの」

「……それって白夜くんについて?」

「えぇ。そうですわね。……今、こうして黄依さんは私とお付き合いして頂いています。それは蒲公英病の事故があったからで……」


 気不味そうに……普段傲慢気な薔薇が自信の無さそうに、謙虚に上目遣いで私に話す。


「そうね。否定はしないわ。だって、私元々アンタのことなんて嫌いだったし」

「うっ……」


 どうやら薔薇は私が気を遣ってるから付き合っているというかのような反応だった。


「ハァ……勘違いしないでよ。今はアンタが好きだから……」

「でも……」

「アンタが変えたのよ、私の気持ちを。今更、誰に言われたってもう揺らぐ事はないわ。それくらい誇りなさいよ。ていうか、そうじゃなきゃこんな格好しないわよ」


 私は恥じているかのような表情を作り服を引っ張る。それに薔薇はかぁっと顔を赤くさせる。


「わっ……分かりましたわ! それで、白夜さんからお誘いというのは……?」

「なんだろう。検討つかないけど……まぁアンタが心配するような事は無いわよ」

「なら……良いのですが……」


 それでも、不安そうに薔薇は答える。


「さてと、そろそろ時間ね。着替えるのめんどくさいし、どうせまたこの服にして欲しいって言うでしょう? 白夜くんにこの格好見られんのは恥ずかしいけど、まぁいいよね?」

「えぇ……」


 彼女は空返事で私の質問に答えた。


「何? まだ不安? ならこっそりついてきても良いわよ。それで自分の気持ちを確かめれば良いじゃない」

「……そっそれは」

「はぁ……。まぁ好きにしなさい。じゃあ行くわね」


 私はこの格好のまま指定された護衛軍本拠地である病院の屋上へと向かった。やはり、薔薇は後ろから付いてきていた。何を不安に思うか分からないが、もしや白夜くんが私に何かすると思っているのだろうか。私がついてこれば良いと言ったのだから、別に構わないが白夜くんに気付かれたらどうするつもりなのだろうか。


 そんなことを考えていると屋上に着いたのでそこのドアを開ける。かつてここは私が紅葉に自身の過去を打ち明けた場所だった。そこのベンチには白夜くんの姿があり、私がドアから出てきた瞬間、『やぁ』と声をかけらてたのだった。


「お疲れ、霧咲きりさきさん」

「そちらこそお疲れ様だよ、白夜はくやくん。怪我とかなかった?」


 私が彼の目を見ようとすると彼は私から目を逸らす。


「……大丈夫。特異能力エゴの使いすぎでふらふらはしてるけど」

「そこまでして私にお礼したかったんだ」

「いや。……まぁ……それはそうなんだが……似合ってるなその服」

「……? あぁ……私のセンスじゃないけど、ありがと」


 彼が何を言いたいか分からなかったが、ここに私を呼んだ他の理由があるということだろうか。いつもは他人に流されない彼が少しだけおどおどしているようにも見えた。


「…………俺さ、多分こういう気持ちになったのが初めてで、今まで『収集家コレクター』に復讐することだけを考えて生きてきたつもりだったんだ。でも……最近気づいたんだ。唐突でごめんな」

「え?」

「気付いたら、君のこと見てたんだ」


 その言葉を聴いた瞬間、薔薇の心配が杞憂でない事を実感できた。


「なんでだろうって考えて分からなかった。だから、ゆっくり気持ちに整理をつけたらようやく意味が理解できた」

「──そっかぁ……」

「俺、君のことが好きなんだって」

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