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どうか、この世界を私たちに守らせてください。  作者: 華蘭蕉
Act five 第五幕 lunatic syndrome──『感情の希釈』
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殺人鬼編 24話 勤勉な復讐者11

かなめくん次第……?」


 そう怯えながら呟くこう


「僕はそれを手伝うだけだよ」


 だいがそれを呟いた瞬間、虎の姿に変化してその背後に居た要は題に対して襲いかかった。


「──『光風霽月アタラクシア』」


 否……正確には、題からその音の発音が出力し終わってようやくこの場にいた題以外の全員が要が彼に襲って来ていたことに気付き、一拍遅れて声に出した。


「グッ⁉︎」

「……ッ⁉︎」

「危な……い……?」


 しかし、その同じ瞬間に要が何らかの方法で既に地面に突っ伏している事も理解した。


 この状況が意味することは恐らく、あの状態の要は私たちの認識を超えるレベルの速さで動く出来たということ。そして、さらにその要すら気付かない内に題が彼の攻撃を苦もせず止めて尚且つ、要自身も無力化した事であった。


「君もやんちゃだね。要くん。僕に一回能力を使わせるなんて……ここは流石だねとも言って誉めておくことにするよ」


 今の不可解な現象……特異能力エゴか。だが、私にも題が何をしたのか理解できなかった。スピードが単純に速いだとか、そういう次元の話ではない。


 私の特異能力エゴ──『知能向上インテリジェンスインプルーブメント』の現在の全状況から未来を予想する能力で見た題の未来はその胴体を要の腕によって貫かれていた。あくまでも私の能力は予想である為、確実に未来を予測できるものではない。それでも、ある程度この能力を手に入れてから、相手が次言う台詞すらほぼ的中している。そのおかげで、一応は『収集家コレクター』を撤退させることもできた。


 しかし、止水しすい題……彼が現れてから、その全ての未来予想が外れている。洪と拓翔たくとが要に対して攻撃をしそれを防いだ時もそうだ。彼の言動が私の予想の範囲外となっていき、もはや彼の前では私の能力は無意味となっていたのだ。


 まるで、予め定められていた運命がかき乱されていくような、そんな感覚。私を上回る程の予測能力も踏まえると、まさか、彼の特異能力エゴは……


「今、時間が止まっていた?」


 私がそれを呟いた瞬間、私を抱えていた紫苑しおんが動きを止め、とても驚いた顔をしていた。いや、驚きというよりも嫉妬に近いものだろうか。一瞬、ムスッと表情が変わったのが見えた。


「あなた……特異能力者エゴイスト……?」

「うん。ユリに『収集家コレクター』から守ってもらっていたの。私にも分からないけど、何か事情があったみたい。そしてユリは何か薬みたいなものを飲んだから感情生命体エスターにならざる負えなくなったって言った後、自分で自分を……殺したよ」


 すると紫苑は『薬』という単語にピクリと反応した後、『……青磁せいじめ、何を考えている……?』と小声で呟いた後、私に対して申し訳なさそうに謝るように話してくれた。


「そうですか……成程。やはり『収集家コレクター』の目的は特異能力者エゴイスト狩り。そして、百合ゆりはあなたを守るために、あの子が自身が決めたことなら……あなたは悪くないですよ。悪いのはこの状況に気付けなかった私達です。本当に申し訳ございません。今は目の前で人が死んでしまって辛い精神状態かもしれないですが、もう少しだけ耐えてください。あなたが特異能力者エゴイストだと分かった時点でこの場の最優先保護対象です。命に変えてもお守りします」


 私を彼らから遠ざけて私をそこに座らせた瞬間、腰の刀に手をかけ気が付いた時には抜刀されていた。何をされたのか理解できなかったが、不思議と何か私の中で張り詰めていたものがプツンと切れ、不安や恐怖感が薄れていた。


「……?」

「これでもう、現在あなたを害する運命は千切れました。さて、百合の死体が回収されないのは不可解ですが、『感情生命体化アージュ』により死んでいないということなのか、『収集家コレクター』の特異能力エゴによるものなのか。似たような能力は知っているので恐らく、後者でしょう。どっちにしろ現在、ところさんが『感情生命体化アージュ』してしまっている状況とは関係は薄いですね」

「何をしたの……?」


 私がそう聴くと、彼女は刀を振り払い納刀しながら、先程の落ち着いたクールでカッコいいイメージが一変して、目を輝かせキラキラとした笑顔で答えた。


「占いと御呪おまじないですよ。言わば願掛けです。凄いですよね」

「……ん? あっハイ」

「……あなたもしかして、非科学的スピリチュアルなことは信じないタイプですか? あっ別にアレですよ、趣味嗜好は人によって様々なので私の嗜好を押し付けるような真似はしないですけど、あっでも、題さんは私の話をちゃんと聴いてくれて理解も示してくれているから……だから、やっぱり運命ってあると思うんですよ」

「……は?」

「こう言えば分かりますかね、これが私の特異能力エゴです。題さんの能力を少しでも、看破したあなたのものと恐らく性質は少し似ているのでしょう。まぁ、私以上に題さんのことを知ることのできる能力はないと思いますが、これ以上は護衛軍の規律に引っかかるので何も言えないのです。規則は規則なので……」

「ふーん、そっかぁ……」


 この状態の紫苑……彼女と話して少し分かったが、絶対に変な勧誘とか屑な男にハマるタイプの人間だ。彼女自身の能力の捉え方が良い証拠。


 傾向上、自身の特異能力エゴとなるものは自分の根源的欲求に近いものとなる。それを知覚し、受け入れて、現実との擦り合わせに耐えた先に獲得できるものなのだ。


 それを占いだとかまじないだとか願掛けとか存在が不確かなものとして認識している時点で矛盾してる。


 もし、逆にその矛盾が特異能力エゴ発生の原因だとすれば、彼女は自分の存在価値を他者との繋がり、もしくは他者自体に置いている人間となる。少なからず、人間はそういう部分があるのは承知だが、それが特異能力エゴに昇華されるほどの根源的欲求になってしまっている時点で相当酷く脆い。


 今は、恐らく彼──題が完全な人間なお陰で、この性格は抑え込められていると思うし、条件が整っている以上、相当な特異能力エゴであるのは確かだろう。故に絶対感のある題に対して完全な信頼と安心を置いているのだろう。


 それが消えて無くなった時が見ものだが、あまり彼女自身に関わるのも得策とは言えないな。


「さてと……状況がわかったのであなたはここでじっとしていてください。私は題さんにあなたの事を報告します。いくら題さんの能力を知ったからと言って調子に乗っちゃダメですからね」


 結論、彼女に対しての印象を一言で纏めるとこれだ。

 刀持ってる嫉妬深いメンヘラって怖いな。


「……ハイ、ワカリマシタ」

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