殺人鬼編 7話 特異兵仗7
あれから、私は朝柊さんと自身の特異兵仗について話し合った後、気付いたら夜になっていた為、自室に戻ろうとしていた。
自室に着く前に彼女と話し合ったことについてまとめておく。特異兵仗については私には特に愛用していた品などがなかった為、能力との相性を兼ねてスタンガン機能を備えた特殊弾を用いるリボルバー式シングルアクションの拳銃を二つ作ってもらう事になった。護衛軍が一般向けに製造しているオートマチックの拳銃やスタンガンよりも強い性能ではあるがそこは私が『精神力動』や特異能力でカバーする為、特殊な加工を加える必要はなく、1週間もしない内に私のものは出来上がるらしいと朝柊さんからは返事を頂いた。
仕組み的な話をすると内蔵バッテリーの代わりに、私の体毛や爪、細胞を加工した固形物を朝柊さんの特異能力で調整したものを使う事で、私にのみ反応するものとなっている。
現案では、従来私が特異能力として使っていた爆発の際に起こしている電気分解を利用し、その際に発生する電撃がエネルギー源となって動く代物だ。電撃は特異兵仗であるスタンガン部分を流れることで強化と性質の変換が行われる。
拳銃の持ち手の下の部分に電極が突出しており、物体や人が触れればスタンガンのような電撃の他にも、熱や磁力、爆発性を相手に付加することができる。この電撃以外にも攻撃手段が増やす事ができるというのが一番の利点だろう。といっても、これは対人用ではなく、対物体用のため人に対しての運用はほぼ考えていない。この機能を付けた理由のほとんどは銃を手放さなくても良いようにするためのもので、接近戦においてはほとんど素手と変わらない戦闘スタイルとなる。
というのも、私の特異能力は元々接近戦専用のようなものなのである。その為、ミドルレンジを超えるような攻撃方法を持つ相手には電撃を飛ばす事くらいしか攻撃方法がなかった。だから私はその弱点を補う為の特異兵仗を作ってもらおうと彼女に頼んだのだ。
主に銃撃を用いたミドルレンジでの戦いでは、相手によって拳銃を持つ数を変える事にした。感情生命体相手であれば図体がでかく、ほとんどの感情生命体は弾を見ても脅威と判定せず避けようとしない為、正確に狙う必要はなくオートマチックのハンドガンよりも威力と瞬間火力を重視した結果、リボルバー式で暴発のしにくく動作の少ないシングルアクションの拳銃を二つ用いることにしたのだ。
拳銃の構造は.50口径(約12.7mm)、全長381mm、重量2,055gの装弾数5発で、筒美流による強化無しでも弾速は初速で506.9m/sとなる。一般の人であれば高威力の為反動が大きい為両手ですら扱うのが難しいが、筒美流の防御術を使えば反動を受け流し銃口を固定することは簡単である為、両手に持ち実戦に使用する事ができる。
この銃を使う理由は筒美流の強化をしなくても、大抵の感情生命体の表面皮膚を貫けるという点と私の特異能力に反応できる特殊弾は最低でも50口径のマグナム弾である必要があったからだ。
だが、基本的に対人戦となると銃を持つ事は不利とされている事が多い。その理由は、相手を狙い照準を合わせ、引き金を引く瞬間という動作をする頃には距離を詰められ弾は当たる事なく一方的に攻撃をされてしまうからである。加えて、多人数対多人数の場合、弓のように曲射撃ちができない為味方撃ちが発生してしまう要因に繋がりかねない事や発砲した際の音や火薬の臭いが相手の情報をかき消し不利になってしまう可能性が高い。
その為、一流の筒美流の使い手であることに加え、特異能力と銃の相性が良い事が銃を持つ条件となる。この条件を満たして居るのは本当に色絵翠さん位なものだろう。翠さんは主に突撃銃や機関銃のタレットを使うが、彼女は狙撃速度と命中率が恐ろしく速く正確な為それが成り立っているのだろう。
さて、私の話に戻る。以上の話でいかに銃が対感情生命体に向いており、対人戦に向いていないかが分かったとは思うが、対人戦においての弱点をどのように克服するかという点についてまとめる。
私の特異能力は触れれば即死という性質上、弾丸が皮膚の中に入ろうものならそこで勝負は決するのである。相手が感情生命体ならそこで話は終わりなのだが、人間相手では弾丸を当てる事がほぼ不可能に近い。その為、発想を逆にするのだ。
勿論、様々な状況に対応する為二丁拳銃なんて火力重視の無茶な持ち方はせず、手に持つものは一つ、もう一つは弾切れを起こした時のサブウェポンとしてこれを用いる。
だが、弾丸は当てるためではなく、自分のコントロール出来る領域を広げるために使う。その為、自身の特異能力を込めた弾丸をわざと相手に当てずに適当に銃で相手の周辺にばら撒くのだ。
理由は銃弾にも私の特異能力の影響を及ぼす事ができ外れて壁や地面に埋まったとしても、その弾丸から電磁波を放つのか、爆発させるのか、音を出すのか、光を出すのか、電撃を放つのか、熱を放つのか、という自分に有利となる空間を作れるようになるのだ。その為、これだけで相手の行動をかなり制限するような動きができる。
特に相手を殺害しない場合、特異兵仗無しの私の特異能力では手加減のしようがない為、相手を無効化するための様々な攻撃手段を得ることができる。
といっても、相手を殺す気で能力を使った場合であっても、やはり有利であることには変わりない。




