234 (sideギィ)ロレンズ族長補佐の交渉②
タンゲは門番との交渉の様子を見ていた。
会話の内容は聞こえないが、門番が何やら慌てて奥に下がって行ったので、入り口で帰されてしまうことはないように思えた。
「交渉は順調見たいだ。戦闘などは出来れば起きないで欲しいもんね。きっとロレンズ族長補佐がうまくやってくれるだろう。・・っと、それよりも」
タンゲは門番とのやり取りで険悪な雰囲気ではなかったので、今の所出撃はないと安心した。
とりあえず、一息ついたので、リザード族がちゃんと待機しているかを確認しよと思い、
チラッとそちらを向いた。
なっ・・いない。
なんでだっ!
なんでいない!?
どこに行ったんだ・・・!?
先ほど待てちゃんといたのに、そこにリザード族の姿が見えない事でタンゲはかなり動揺してしまい、
思わず顔をそちらに完全に向けて探していた。
「タンゲ部隊長、何かそっちにあるんですか?」
タンゲは自分の部隊の隊員であるソロンゾから声をかけられて、ドキッとした。
「あっ、いや・・・何でもないよ。スノウキャットがいたらいけないからと思ってね・・・少し警戒していたんだ」
「キャット達の姿があったんですか?」
「いや・・・それはないから大丈夫だ。ソロンゾは門の方を確認しておいてもらっていいかな」
「はい、わかりました」
まずい・・・まずい・・・・・・っ!
あれだけ、勝手なことをしないようにと念を刺しておいたのに・・・・っ!
タンゲは昨日から、大粒の汗が止まらず、いの辺りがキリキリと痛むのを我慢しながらも、横目でチラチラとリザード族のいたはずの辺りを確認し続けた。
※ ※ ※
ロレンズ族長補佐とアンデスは、門番が戻ってくるのを待っていた。
丁度、門番が動くと同時に、雪がやんで積雪の雲は少しづつ減ってゆき晴れ間が見えて来た。
ロレンズ族長補佐はどうにかして門の中に入れないかと、門番が戻ってくる間に思考を巡らしていた。
門番のあの様子ならば、アンデスがいっていた通り、幾分こちらが有利に話を進められそうな予感がしていた。
相手の出方次第では何とかなるかもしれないと、色んなパターンを検討していた。
「お待たせしました。私は族長のフェイシズです。ロレンズ族長補佐殿。先ほどは門番が失礼な態度を取った事をお詫び申し上げます」
「なっ・・・・あっ・・・いや、いいえ、門番も必死だったのでしょう。いま、そちらでは何か問題が起きているというではありませんか?」
ま・・まずい、何でいきなり族長がやってくるんだ。
予想外の相手が来たことで、ロレンズ族長補佐は少し動揺をしていたが、距離もありフェイシズ族長には気づかれていないと思いたかった。
「いえいえ、そんなことはありませんよ。そちらの族長も色々と大変なんではありませんか。例えばスノウキャット達のことなど・・・はははっ」
ロレンズ族長補佐はフェイシズ族長が何を言っているのか、状況がつかめなかった。
スノウキャット達が最近群れていることによるトラブルは白熊討伐派も犠牲享受派も同じはず・・・。
それなのに、どうして、突然そんなことを話し出したのだ・・・・・・・しかも、族長に絡めてくるとは!?
「よくわかりませんが、スノウキャット達との対応はフェイシズ族長も同じように大変な状況ではありませんか!?」
「同じ・・・!?同じではありませんよ。しかし、もうすぐ、スノウキャット達の事も解決できると思いますので・・・まあ、そうするとそちらは少し・・・・いや、そちらの族長は少し困りますかな。はははっ」
どうしてフェイシズ族長はこれほどアリウス族長とスノウキャット達のトラブルを結びつけたがっているのだろうとロレンズ族長補佐は理解に苦しんでいた。
あの事・・・・いや・・・しかし・・・・・。
もしかして犠牲享受派は何か知っている・・・・のか!?
「フェイシズ族長殿、スノウキャット達の事が解決できるとは、どういうことですか?スノウキャット達に関してはこちらも困っています。もしも、お手伝いできることがあるのであれば、族長のアリウスも全面的に協力できると思いますがっ!!」
もう少し、情報が欲しい。
とにかく、今は話を続けないと・・・。
「アリウス族長!?・・・ターキウス族長ではないのですか!?まあ、どちらでも構いません。いずれにしても、ロレンズ族長補佐殿のご希望である私との面会は達成できましたので、これにてお引き取りをお願いします。はっはっはっ」
どうしてターキウス族長の名前が出てくるんだ!?
族長が困る・・・・スノウキャット達・・・・同じように大変ではない・・・・・そうかっ!!
「ちょっと待ってください。フェイシズ族長殿。先ほども申しましたが、現族長のアリウスはスノウキャット達との問題を解決できるのであれば、協力は惜しみません。もしよければ、少し、その事でお話できないでしょうか?」
フェイシズ族長は何か誤解している。
この誤解だけは、解いておかないと・・・・。
「先ほども申し上げましたが、スノウキャット達の問題は我々だけで解決可能ですので。そう言う訳で、今は立て込んでおりますので、お引き取り願おう」
フェイシズ族長は完全にこちらの話を聞く状況にはなかった。
ロレンズ族長補佐は、ターキウス前族長とスノウキャット達とのつながりを、
フェイシズ族長はどういう訳かわからないが知ってしまったんだろうということに気がついた。




