230 (sideギィ)キラキラの壁面
えーーーと、雪のない所、雪のない所はぁぁぁ・・・・あったっ。
でもぉ・・・かなり上だねぇ・・・!?
ギィは見上げながら考えていた。
壁面とこの村を囲んでいる多きな土塀がつながっている場所があり、壁面のでこぼこのせいで雪が積もっていない場所が見えた。
といっても、壁面の斜面はほぼ垂直っぽくて、出っ張りの部分はあるが、その上にもわずかながら雪らしきものが乗っかっていてキラキラしていた。
とりあえず、大きなでっぱり迄ジャンプして後はゆっくり登っていくしかなさそうだね。
だけど、私にはこれがあるから・・・たぶん楽勝だね。
ギィは自分の自慢の爪を見ながらほくそ笑んでいた。
まずは大きいでっぱりのあるあの部分まで、
ジャンプっ!
ツルッッ!
どんっ!
痛たぁぁぁい!
何で、しっかりつかんだはずなのに、どうしてつかめないんだっ!
ギィは凍っている場所を登ることが初めてだった。その為、滑るということがどういうことかわかってなくて、背中から思いっきり地面に叩きつけられていた。
あははっ・・・うっかりして滑っちゃったよ。
まあ、誰にも見られていないからいいやっ。
うぅぅ、それにしても、恥ずかしいよ。
よし、気合を入れなおして、もう一度だ。
今度はしっかりとつかまないとねっ。
ジャンプ!
ツルッッ!
どんっ!
痛たぁぁぁい!
どうしてっ・・・!?
今度は、しっかりつかんだはずなのに・・・。
どうなってるの!?
ギィは岩場の出っ張りの部分を凝視していた。すると、自分が手を当てた部分に立てに傷が入っていたのが見えた。
間違いなく、自分の爪はあのでっぱりに引っかかっている。だけど、そのまま滑って落ちちゃっているんだ。
あのキラキラした部分は引っかからないのかな。
巨大杉ではしっかりと引っかかって登ることが出来たのに・・・・・。
ギィは周辺で同じような場所を探してみた。すると、あちこちに同じようにキラキラしている部分があった。
あそこだけじゃないよ。
うわっっ、壁面のいたるところがキラキラしている。
ギィはすぐ側にあったキラキラの部分に手を当ててみた。
ツルッッ!
ガンッ!
痛っ!
手を乗せた瞬間に滑って、その勢いで顔面を壁面にぶつけてしまった。痛みと一緒に冷たさも感じて不思議な感覚だった。
今度は、ゆっくりとキラキラの部分をなでるように触ってみると、ツルツルとして引っかかりが悪く感じた。
うわぁ・・・・滑る滑るよ。
全然引っかからないよ。
これじゃぁ、勢いをつけて登るのは無理だよぉ。
う~ん。
どうしようかな!?
これを登らないと向こうには行けないっぽいしなぁ・・・。
そうだっ!
ギィは少し考えて、爪が引っかからないかどうかを試してみた。
すると、早いスピードでは引っかからないが、ゆっくりと丁寧にすれば引っかかりが取れる事に気がついた。それからはすぐだった。
ギィは自分の爪をキラキラの部分に刺し込むようにして力を込めた。すると、キラキラの部分はひびが入り爪を食い込ませることが出来た。
おおっ!
登れるよ。
私ってもしかして天才なのっ!!
巨大杉を登ることが思いつかなかった時を思い出して、ギィは自画自賛していた。壁を登ることは大して問題なく、あっという間に土塀を越えることが出来た。
次はぁ・・・門のところに行けばよかったんだよね。
ただし、気づかれないようにだったかな・・・・・。
ギィは土塀から巨大杉3本分位離れたところまで移動してそこから村を囲っている土塀の周囲を沿うようにゆっくりと進んだ。
周囲は真っ暗だったが、雪が積もっているので地面の様子はつかむことが出来た。
しかし、距離があると見えなくなるので、出来るだけ周囲キョロキョロとしていた。もしも、あの白いやつがいたら危険だった為、警戒だけは怠らなかった。
思った以上に時間がかかったが・・・キョロキョロしすぎて、途中で土塀を見失って、慌てまくっていたが、何とか門が見える場所までたどりつくことが出来た。
周辺はまだ暗く、深々と雪も降ってきていた。
師匠のおかげで寒くはないのでその点は側にいないけれども師匠に感謝していた。
師匠!ありがとうっす。
寒くないのは師匠のおかげっすよ。
でも、今どこにいるっすか。
早く迎えに来てほしいっすよ。
ギィは何時になったら周囲が明るくなるのかは分からなかったが、こんなところでじっとしていても暇だと考えていたら、
ぐぅっっっっ!
そうだ、昨日の朝から何も食べていなかった。
レニーエスちゃんからもらったトーロモイが最後だったよ。
あぁ・・・お腹すいたな。
そう言えば、トーロモイこの辺にないかな。
ギィは周辺を掘り始めた。
掘っていると手先がだんだん冷たくなり動きが鈍くなってきた。
そもそも、寒さ耐性があるとはいえ、変温動物のリザード種がこの寒さの中で自由に動けるのは、魔法や耐性のある異世界ならではの事だった。
しかし、そこはやはりリザード種である以上、冷たい雪をかき分けていくとすぐに手が動かなくなっていったのは仕方がない。
しかし、ギィがそんなことを理解しているはずはなかった。
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