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228 (sideギィ)レニーエスとネフューゼ

スノウラビット族 アンデス (衛兵隊長:白熊討伐派)

         タンゲ (衛兵隊の隊員、アンデスの幼馴染:白熊討伐派)

         レニーエス (アンデスの妹:白熊討伐派)

         アリウス族長 (族長で穏健:白熊討伐派)


         ネフューゼ(アリスのお世話係でまだ子供:犠牲享受派)

         フェイシズ族長(緊張するとまるでダメなネフューゼを気にかけている。犠牲享受派)

 レニーエスは薄暗がりの中、不安を解消しようと少しでも状況を確認するため、隙間から光が差し込んできている上空を見上げた。

 

 ふぅ、それにしてものどかな朝ね。

 とらわれの姫じゃなければとってもいいんだけど・・・。


 よしっと・・・・ドンッ。


 レニーエスは力強く右足で地面を踏みしめて気合を入れなおして、積雪の状態を確認した。レニーエスは子供のころからの癖で気分を変える時によく行っていた。


 上空の・・・積雪の雲は残っているわね。


 巨大杉のエリアは積雪で真っ暗な闇に包まれる時間帯とまぶしいほどに輝いているヒカリゴケのおかげであらゆる魔物が活動を始める時間帯で1日が過ぎていく。そして、丁度今は、積雪による闇が、すこしづつ晴れてきた時間帯だった。


 ということは、積雪の時間はずっと意識を失っていたということか・・・。

 結局、アンデス兄さんには会えずに犠牲享受派の連中に捕まったままね。


 レニーエスはギィちゃんのことをアンデス兄さんに確認することが出来ないばかりか、自分が捕まった事でさらに大きな大問題に発展しそうな今の状況を考えると不安は増すばかりだった。


 それだけでなく、犠牲享受派の連中が叫んでいた「そうだ、捕まえて生け贄の代わりにしてやれ」という言葉が特に気になった。


 かつて白熊討伐派と犠牲享受派それぞれが生け贄を捕獲するために同族同士での争いが絶えなかった。このようなお互いに無意味な争いを避ける為に、それぞれから1名の生け贄を出すことを当時の族長同士で協定を結んだ。


 今回もお互いから1名の生け贄をすでに出している以上、何の問題もないはず。それなのに私達が犠牲享受派のスノウラビット達を捕まえて生け贄の代わりにしたという発言が繰り返されていた。


 何度も伝えようとしたのに、襲撃をしてきた連中は耳を貸してくれなかった。


 この事は誤解だとなんとかして伝えておかないといけない。

 この誤解を解くための最大の難関があるとすれば・・・それは兄だよねぇ。


 私が出ることを門番が聞いているから、きっとアンデス兄さんにも伝わっていて、きっと救出に来てくれる。


 それはいいんだけど・・・・・・。


 レニーエスはアンデス兄さんが救出に来れば、まともな話し合いにならず、すぐに戦闘になるんじゃないかという心配があった。


 この状況でアリウス族長が来ることは・・・・まあ、無理ね。

 せめてロレンズ族長補佐あたりが来てくれると嬉しいんだけど・・・。


 レニーエスは誤解が解ければ、争うことなく問題は解決できると信じていた。


 岸壁をくりぬかれて作られた牢屋の中で、動きのほとんど見られない土塀の家を眺めながら考えていた。


 そんな中遠くで動きのある影が見えた。


 ・・・・あっ、こけたっ!

 いっ、いや、違う。


「ねぇ~、そこの、あなた!ちょっと来てもらえないかしら!!」


 レニーエスは、もしかすると誤解が解けるきっかけとなるかもしれないと思って、普通に歩いていてこけたスノウラビットの子供に声を掛けた。


 すると警戒しながらもゆっくりと近づいて来てくれた。


「あっ、あの・・・・あなたは、あの・・その、ほっ・・捕虜・・・さん」


 うわぁ・・・。

 この子はどうしてこんなに緊張しているんだろう。

 まあ、こんな状況だし・・・しかたがないか。


「あのね、もしよかったら・・・・話の出来る方を連れて来てもらえないかなぁ」


 レニーエスは出来るだけ、安心できるように優しくゆっくりと声を掛ける。


 正面の子供はポカァンとしつつもこちらを向くと、自分を凝視して、


「あっ、あの・・・話ので、出来るのは・・ぞっ、族長で・・・・いっ、いま、今は・・・忙しそう」


 そう言うとすぐに目線を外してきた。


 や・・・やばい、この子ではきっと呼んでくることは難しいかもっ!

 ・・・・そうだ、伝言。

 そうだ、伝言にしよう。


「あの・・・ごめんなさい。族長は呼んでこなくてもいいわ。だけど、伝えてほしいの!」

「つっ、伝えれば・・・いい?」

「ええ、アリウス族長はスノウキャット達を使っていないし、あなた達に危害を加えたこともないと伝えてくれればいいわ」

「ア・・・アリウス族長は・・・危害を・・加えないでいいか?」

「うーーーーん。それでいいわ」

「わかった」


 最後は短く返事をすると、すぐにその場を立ち去って行った。


 ああぁぁぁ・・・あの子じゃ無理だわ。

 誰かほかにいないかしら。

 それにしても、牢屋に入れたままほったらかしって、どうなっているのよ!


 レニーエスはどうにもならない状況にイライラしながらも待つしかないので、その場に座り込んで空を眺め続けた。


 積雪の雲はまだ残っているが、もうすぐ朝も終わる。


 アンデス兄さんが早朝に出発したとすると、おそらく到着するのはそろそろのはず・・・。


 レニーエスの心配は尽きることがなかった。


 ※     ※     ※


(ギィのところに向かったアンデス・・・積雪が始まり夜のとばりが降りる頃)


 ちくっしょぉぉ・・・。

 あのリザードの雌めがぁぁああ!!

 めちゃくちゃ怒っているじゃねぇか。

 レニーエスの話を聞きたかったが、あんな状態で話なんかできるかっつぅの!

 大体、どんな話を聞いたら無理してでも俺の所にこようって思うんだよ。

 そんなに緊急性があるのか?

 それなのに、レニーエスよぉ。

 お前が捕まったら意味ないじゃないかよ。


 アンデスはとにかくリザードの事は後回しにすることにした。


 まだ、積雪が終わるまで時間があるから、その間にレニーエスを奪還するための部隊編成をしておかないといけないからな。


 アンデスは先に行っているであろうタンゲにどういった言い訳をするか考えながら衛兵所までの道のりを急いだ。

読んでいただきありがとうございます。

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