222 (sideギィ)アンデス・・・リザード族に会わないと
「アリウス族長ッ、レニーエスが・・・レニーエスが・・・・」
アンデスは族長テントに飛び込んで、ロレンズ族長補佐と話しているのも気にせずに割り込んできた。
「おいっ、アンデス衛兵隊長。ここがどこか分かっているのか?」
「ロレンズっ、構わない。アンデスそんなに急いでどうしたんだ?」
「・・・・捕まった。だから、救出部隊を編制してほしい。無理ならかまわない。その時は、俺一人で行く。早急に決めてくれ」
「アンデス衛兵隊長、いきなりやってきて、何を言っているんだ。訳がわからないぞ。いいかっ、とにかく落ち着いてから・・・順を追って話してくれないか?」
ロレンズ族長補佐は怒りで動転しているアンデスを落ち着かせるように、ゆっくりとなだめるように声をかけた。
「えっと・・・あの・・・すみません。実は・・・・・」
アンデスの話では、祠付近でレニーエスが自分を探しにきていたという話だったが、その姿は1度も見なかった。それで、付近を探したら、スノウラビット族同士の戦闘があったと思しき場所があり、その付近の巨大杉には明らかにスノウラビット族の鉤爪だろうと思われる傷が多数散見した。そこから、レニーエスは犠牲享受派のスノウラビット族が自分達の生け贄の代わりにレニーエスをさらって行ったはずだということだった。
だまってアンデスの話を聞いた後に、アリウス族長が静かに口を開いた。
「アンデス衛兵隊長が急いでいるのもわかるが、もうまもなく積雪の時間になる。この時間から外にでることは出来んし、部隊を出すことも許されん。わかるな?」
「・・・・はい」
「それに、その傷だけでは、レニーエスが犠牲享受派にさらわれたという確証はないんだろう・・・・」
「・・・でもですね族長っ!現にレニーエスはいないし、あの現場はスノウラビット族のものばかりだった。間違いなく同族同士の・・・・・」
アンデスはアリウス族長の話をさえぎるように自分の主張を通そうとしていた。
「いいから、落ち着けっ!それから、タンゲっ!お前も現場を見てるんだろう。アンデスと同意見か?」
「レニーエスと犠牲享受派が争ったという確証はありません。ですが、あの場所にスノウキャットや他の魔物たちとの戦闘はありませんでした。残っていたのは、間違いなくスノウラビット族の鉤爪です」
「そうか・・・」
アリウス族長は短く返事をしたあと、ソロンゾ族長補佐に無言で同意を得ると姿勢を正して命令を下した。
「アンデス衛兵隊長へ命じる。明日の早朝に2部隊で現場を確認。その後、犠牲享受派の村に行け。それと、ソロンゾ族長補佐は部隊について行け。編成はアンデス衛兵隊長に任せる。それからアンデスよ!交渉はソロンゾ族長補佐にやってもらう。くれぐれも、間違いで戦闘を起こすなよ」
「「はっ、了解しました」」
アンデス衛兵隊長とタンゲは一礼をして、族長テントを出ると、タンゲが話しかけてきた。
「なあ、アンデス。レニーエスは無事だといいな」
「ああそうだな。だが、もしもレニーエスに何かあったらあいつら全員ただじゃおかねぇ」
この時のアンデスはいつもの豹変ではなくて、普通に兄が妹を思って怒りを出しているように見えた。
タンゲはアンデスのあの違いはどこにあるんだろうと疑問に思ったが、今はレニーエスを救出することが先決だと気持ちを切り替えた。
「そうだな。いずれにしても、これから翌朝までに部隊を選別しないといけないけど・・・アンデス大丈夫か?少し手伝おうか?」
「おう、頼むわ。部隊は、まずは俺とお前だろ。そして、残り4兎が必要だな。あ・・・・それから、ソロンゾ族長補佐だったな」
タンゲは、アンデスがすぐに部隊選別の為に衛兵所へ行くだろうと思っていた。しかし、族長テントを出ながら、部隊の選別の話を持ち掛けてもなぜかそわそわしていた。
「そう言えば、急用を思い出した。タンゲは部隊の選別をしていてくれないか。おれは、急用をかたずけたらすぐにそっちに向かうよ。すまんが、頼むな。タンゲ」
「急用って、お前、レニーエス救出以外にどんな・・・・・・ああ、行っちまいやがった」
族長テント前で、部隊選別をしてからとタンゲは思っていたが、アンデスは急用があるといって、族長テントを出ると、いきなりその場から走り去っていった。
アンデスの走って行った方向は、村の奥の立ち入り禁止区のように見えたが、まさか違うだろうとタンゲは考えていた。
※ ※ ※
アンデスにとって、レニーエスの救出は最上位に位置するくらい大事なことだったが、レニーエスがわざわざ自分を探しに来るくらい急ぎの用事は何だったのかも、かなり気になっていた。
そして、その原因は間違いなくリザード族の件だろうというのは想像できた。しかし、それが何なのかは、どんなに考えてみても、リザード族に会ってみないとわからなかった。
何があったんだ、なぜレニーエスはあんなに急いで俺に会いに来ようとしたんだ。
あいつが何か吹き込んだのか?
それとも、何か脅して・・・・しかし、あの状態で何が出来るって言うんだ。
あーーーわからない。
とにかく会えば何かわかるかもしれない。
アンデスはギィのとらわれている洞窟へ急いで走って向かった。




