214 (sideアリス)スノウキャット討伐部隊
ネフューゼ(スノウラビット族の子供で犠牲享受派、アリスのお世話係)
それは、眉間にある印の数は進化した数と同義であり、正面にいるキルアント族は2度の進化をすでに終えているというものだ。
キルアント族はただでさえ強固な外装を持ち、その個体が進化することで、特殊な攻撃手段を持つできると言われている。
とすれば、目の前にいるキルアント族が2段階の進化を終えていることを踏まえると、それはかなり強力な攻撃手段を持つと考えられる
しかしラクーン大洞窟1階で活動するキルアント族・・・キルアント族に限らす第1階層に生息する魔物は積雪のあるこの極寒エリアでは活動が半減するとも言われていた。
それを踏まえると戦闘に参加させるのは、いくら2度の進化をして強くなっているとは言え、かなり大きな危険をはらむとも言える。
フェイシズ族長は迷っていた。
本人からの訴えとは言え、まだ歳若いキルアント族にこの危険な戦場へ行かせることが本当に良いのだろうかと。
「きっと役に立てると思います。私、寒さ耐性がありますので、この寒さの中でも、通常の力を出すことができますわ!ですから、どうかお願いいたしますの?」
このキルアント族は私の迷っている理由をまるで知っているかのごとく適切に、かつ、先手を打つように返事をしてきた。
ここまでされれば仕方がないかぁ。
このキルアント族をスノウキャット討伐部隊に入れることにした。
「ふぅ〜、あなたの観察力には参りました。現在準備をしているスノウキャット討伐部隊へ入ることを許します。分りましたね、ネフューゼ。この方を部隊迄ご案内してください」
「はいぃぃ!アッアリス様・・よっよかったですね」
ネフューゼは嬉しそうにアリスに向かって返事をしてきた。
知らない場所で、心細く、緊張感も強かったので、ネフューゼの屈託のない笑顔には癒された。
同時に、その顔がギィちゃんの笑顔とかぶり急に心配な気持ちがこみあげて来た。
「あっあの・・・アリス様は、うっうれしくないのですか?」
「あっ、いえ、そうではないのですよ。うれしいですのよ。ネフューゼ。部隊迄ご案内よろしくね」
アリスはネフューゼに優しく声を掛けると、軽く一礼をした。
「フェイシズ族長様お忙しい中、時間を割いていただき、本当にありがとう存じます。微力ではありますが全力で力になりたいと思います」
「アリスさん。お気持ちはうれしいのですが、あくまでスノウキャット達とのいさかいは我々の問題ですので、決して無理しないようにしてくださいね」
フェイシズ族長はねぎらいの言葉を述べるとそのまま一礼をして土蔵を出て行った。
次の場所に向かって行ったのだろう。今は戦闘準備で忙しそうだ。
「そう言うわけだから、ネフューゼちゃん。スノウキャット討伐部隊の集まっている所まで案内してもらえるかしら?」
「はっはい。アリス様、こっこちらです」
ネフューゼは後ろから来ている私を気にかけながら、前を進んだ。
少し歩いたら、後ろの私を確認してを何度も繰り返すから一向に目的地に到着する様子がうかがえない。
「ネフューゼちゃん。私は大丈夫だから、前を向いてはやく集合場所に連れていってね」
「ご・・・ごめんな・・・さい。あ・・アリス様」
優しく伝えたつもりだったが、ネフューゼは涙目になりながらこちらを向いた。
あ・・・・だめだ。
これ以上突っ込めないわ。
「ところで、集合場所はどこにあるのかしら?」
アリスは話をそらすように別の話題をふってみた。
「はっはい、もうすぐ到着します。しゅ、集合場所は正門前大通りです」
ネフューゼの言う通り大きな土蔵の角を曲がるとすぐに大通りが見えた。
そして、そこにはスノウラビット族の戦士達のように見える集団があった。
「アッアリス様到着しました」
「ええ、ありがとうね。ネフューゼちゃん」
「えへへっ」
ネフューゼにお礼を伝えると嬉しそうにニコニコしていた。
「よお~ネフューゼっ!こんなところに何しに来たんだ?」
右目に大きな傷のある体格の良いスノウラビットがネフューゼに声をかけて来た。
「ところで、その後ろの黒いやつは何なんだ?」
「えっと。こっこの御方はアッアリス様です。ぶっ部隊にいれても良いって、族長が・・・」
「話に割り込んで申し訳ありませんが、私を部隊の末席で構いませんので参加させていただきたく存じます。フェイシズ族長の許可は頂いておりましてよ」
ネフューゼに任せていては、話が付くのに時間がかかりそうだったからアリスは自分から声を上げた。
ガラの悪そうなやつだったので、少しイラっとしたことも影響していた。
「あーーーっ。なんだ、その場か丁寧な話し方はっ!それに、虫がこの極寒の地で役に立つって言うのか?」
「あのぉ~。この頭の悪そうな御方以外にこの部隊で話の出来る方はいらっしゃらないのですか?目の前のちちっこいお方は少々言葉に不自由していらっしゃられましてよ」
「なんだ。この黒いのは喧嘩打ってんのかよっ」
目の前のスノウラビットはアリスに対して、今にも殴りかかりそうな勢いでどしどしと歩いてきた。
アリスは念の為に鋼外殻をかけて備えておいた。
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