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212 (sideアリス)ネフューゼとフェイシズ族長

ネフューゼ(スノウラビット族の子供で犠牲享受派、アリスのお世話係)

フェイシズ族長(スノウラビット族の犠牲享受派 緊張するとまるでダメなネフューゼを気にかけている)

 アリスはネフューゼに期待をしてじっと戻ってくるのを待っていた。

 ネフューゼの運んできた食事も食べ終えて特にすることのなかったアリスは外の様子を聴き続けた。


 ネフューゼちゃんはまだですの。

 やっぱり、今の状況で族長に話をするのは無理がありましたわね。

 まあ、確かに、こんな積雪エリアにいるキルアント族なんて、あまり重要度は高くありませんもの、きっと話をしたとしても後回しにされるに違いありませんわねぇ。


 アリスはネフューゼには少し難しいかもしれないから、自分で動き出す必要があると感じていた。


   ※   ※   ※


 丁度そのころ、族長であるフェイシズの前にネフューゼはいた。


 えぇと、伝えるのは、アリスちゃんが目を覚ましてたことを伝えればいいんだよね。

 まあ、思ったよりも優しくて、優雅で、かっこいい事も伝えられればよりいいかも。


 ネフューゼはスノウキャットの攻撃で大怪我を追った珍しいキルアント族の治療後のお世話を頼まれていて、目を覚ましたら、フェイシズ族長まで直接報告に来るように言われていた仕事の報告をするだけだった。


 うん、簡単なお仕事だもん。

 簡単な・・・でも、なんで、フェイシズ族長あんなに怖い顔しているんだろう。

 ちゃんと、目を見て話せるかな・・・。


 ネフューゼは族長のいる土蔵の入り口から入ってすぐの右隅の方で、フェイシズ族長に話をする機会を待っていた。


 普段から出入りの多い場所ではあるが、今日は何時にもまして出入りが多く、フェイシズ族長は忙しそうにしていた。


 入ってくるスノウキャットの戦士や村の中の管理を行う兵士が立て続けに入っては出て、入っては出てを繰り返すため、ネフューゼはその場所から移動することが出来ないでいた。


 族長は忙しそうだな。

 でも、時々目が合うんだよね。

 また、その目が怖んだよぉ。

 私は簡単な報告をするだけだから、すぐに出来るはずなんだけど・・・。


「ぞ・・・」


「フェイシズ族長、対策の目度が立ちました。確認をしてほしいので、至急、会議室のある土蔵まで来てほしいんですがっ」

「急ぎかっ」


 フェイシズ族長はネフューゼに目を合わすと、すぐに、入ってきた兵士に向けて返事をした。


「はい、急いでいただいた方がよいかと進言いたします。向こうでの準備はすでにあらかた整えております」

「わかった、こちらの要件を済ませたらすぐに向かう。そう、伝えてくれ」

「はい、わかりました」


 兵士は族長に返事をすると、すぐにその場を離れて、族長室の土蔵から出て行った。


「ネフューゼ、先ほどからそこで何をしておる?ここは休憩室ではないぞ」

「いっ・・いえ、そっそれは・・その、あのですね。アリス様が・・・いえ、キル・・・・」


 ネフューゼは何かを訴えているようだが、何が言いたいのか、さっぱり分からなかった。

 フェイシズ族長はネフューゼに、大けがを負ったキルアント族の者が目を覚ましたら報告に来るように言っていたはずだが、目の前にいるネフューゼからいまいちはっきりとした報告が来ない。

 報告は出来ていないが、ここに来ているということは、キルアント族が、目を覚ましたと考えていいのだろうが・・・。


「ネフューゼっ!」

「はっ・・はいぃぃぃ」


 フェイシズ族長が声を掛けると、ネフューゼは背筋をピンと伸ばして声高に変な返事をしていた。


「キルアント族は目を覚ましたのか?」

「はい、アリス様は取っても素敵で・・・」

「ネフューゼっ、キルアント族は目を覚ましたのか?」


 フェイシズ族長は素直に聞かれたことに返事をしてくれないかなと思いながらもう一度同じ質問をした。


「はっ、はい。目を覚ましました。そっそれで、あの・・その」

「ネフューゼっ」


 何を緊張しているのか分からないが、話が一向に進まない・・・。

 仕方ないのでこちらから尋ねるとするか。


「はぅ、はいぃぃ」

「キルアント族は話が出来る状態にあるのか?」

「はっ、はい。誰かにお礼を言いなゃい・・・・ああぁぁ」


 あぁ、かんだな。

 緊張した状態で、話そうとしてかんだな。

 しかたない・・・。


「はぁ、キルアント族は責任者にお礼がしたいと言っているのだな。ネフューゼや」

「はい、そうです。しかも、アリス様はとても素敵な方なんです」

「まあ、それはいい。分かった。会いに行こうじゃないか。その素敵なキルアント族にな。いいか?ネフューゼついてこい」

「はいぃぃぃっ」


 ネフューゼは戦闘に関してはこの村の中でトップクラスの才能にあふれている。

 まだまだ、幼い為に実戦経験を積むことはできないが、近いうちに実戦経験を積ませようと考えている。

 しかし、大きな問題があった。

 それは、なぜか、コミュニケーションを取ろうとすると、極度に緊張してしまい。

 何を言いたいのか、全く分からないのだった。

 そのため、戦闘訓練以外の場ではとてつもなく役に立たないのだった。


 フェイシズ族長は後ろにネフューゼを引き連れて、重症のキルアント族のいる土蔵の前にやってきた。


「入るぞ」


 フェイシズ族長はキルアント族のいる土蔵の前で声を上げると、ゆっくりと扉を開けて中に入って行った。


 アリスは自分のいる土蔵に近づいてくるスノウラビット族がいるのに気がついた。

 そして、その側にネフューゼがいる事も気がついた。


 ネフューゼっ、よくがんばりましたわ。

 誰か話ができる方を連れてきてくれたんですのね。

読んでいただきありがとうございます。

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