207 (sideギィ)レニーエスとギィ
スノウラビット族 アンデス 衛兵隊長
レニーエス アンデスの妹
「・・・そうなんだ。それなら仕方がないね。なんだか、急にお腹がすいたなぁ」
ギィは目が覚めてからは、この場所から抜け出る為に色々と試行錯誤してきた。
それらすべてが無駄になり、怒りと苛立ちのまじりあった気持ちになり、結局、ふてくされて、それに、疲れもあって横になっている間は、そんなこと全然気がつかなかった。
そんな中、レニーエスが現れたことで、この場所から出ることが出来ると喜んだのもつかの間、聞こえてきたのは、この場所から出ることはできないということだった。
じゃあ何で来たんだよ!と言いたかったが、レニーエスが悪いわけじゃないからそんなことを言うことも出来ない。
そんなこんなで気が抜けてしまったギィは急に空腹感が襲って来たのだった。
「もしよかったら・・食べ物をもって来たんだけど、ギィさんは食べ・・食べませんか?」
「えっ、本当!どうせこの中にいてもすることがないから丁度良かったよ」
そう返事をするとレニーエスは、コリコリの木の根であるトーロモイを投げ入れてくれた。
「これはうまいやつだ。ありがとうね。レニーエス」
トーロモイは木の根だか、中身は白くて粘り気やほんのり甘みがあり、癒しの効果もあるこの積雪エリアでとれる食べ物だ。
アリスちゃんからもらった時にとてもおいしかったのを覚えている。
「そうだ、レニーエスもしよかったら、君たちのことを教えてもらえないかな?」
「・・・よかった」
レニーエスは小さくつぶやいた。
ギィにはその声は小さすぎて聞こえなかったが、レニーエスの表情から緊張感が少し取れたようでゆっくりと大きく深呼吸をすると、口元が少しだけゆるんでいた。
ギィはトーロモイに集中し、ゆっくりと咀嚼しながらレニーエスの話しをきいた。
逆光の為に、ギィからレニーエスの表情はほとんど見て取れなかったようだが・・・。
「私たちはスノウラビット族です。この村は・・・・・」
レニーエスによると、この村はスノウラビット族が外敵から身を守るために、土魔法で強力な壁を作りその中でほそぼそと暮らしていた。最近ではスノウキャットが急に群れ出して我々スノウラビット族を襲うようになった。そのため、集団で狩りをするようになっていたんだけれど、昨日、兄達が狩りに出ていた時、たまたまギィを発見した。兄はなぜか種族の違うギィを救って村に連れて来た。レニーエスは兄のアンデスが救ったのか理由はわからないということだった。
「つまり、私は運よく救われたことになる・・・のかな!?でも、こうして捕まっているということは、ちょっとだけ私の運が伸びただけ・・・!?まあ、考えてもわからないし、なるようになるしかならないね。ニコッ」
「えっと・・・ギィさんは結構あっさりしているのですね」
「そうかなぁ。まぁ私はアリスみたいにね・・・えーっとアリスは私の友達で、とても頭がいいんだよ。だから、そんなアリスみたい考えられないから、今できることを一生懸命やるだけだよ。ふふふっ」
満面の笑顔で笑うギィさんを見てレニーエスは少しほっとしていた。
一方で、こんな優しいギィさんをこんなところに閉じ込めている兄アンデスに対して、そして昨日、何かを企んでる発言に対して困惑せざるを得なかった。
「そうそう、レニーエスちゃん。そろそろ普通にしゃべってもらっても構わないよ。私だけ普通に喋るのも変だしね」
今、ギィちゃんにこんなにひどいことをしている兄の妹なのに、ギィちゃんにそんな言葉遣いすることがほんとにいいのか迷ったけど、変に堅苦しく話し続けるのもギィちゃんに申し訳ないと思って普通通り話をすることにした。
「そうだ、ギィちゃんのお友達のアリスちゃんも、ギィちゃんと同じ種族なの?」
レニーエスは少し打算的な思いもあって、ギィの仲間の事について聞いてみることにした。
それなのに、ギィちゃんはアリスちゃんのことを尋ねると、ニコッと笑ってうれしそうに返事を返してくれた。
「うん違うよアリスちゃんはね、キルアント族なの。このラクーン大洞窟地下1階で仲良くなったんだよ。今じゃ親友かな。ははっ。それに、アリスちゃんは進化してバレットアントでね、体はちっちゃいんだけどとっても強いんだよ。もう家族みたいなもんなんだ」
キルアント族はについては話でしか聞いたことがないけれど、バレットアントは王族の護衛になるくらいだから、上の階では気をつける必要があるといわれていたはず。
だけど、こんな極寒エリアでまともに活動できるのかしらね。
「アリスちゃんの事は大好きなんだね。ところで、ギィちゃんの家族はどこにいるの?とらえられたギィちゃんを探しているんじゃないの!?えーと・・あの・・・同じ種族の家族の事だけど・・・どこにいるの?」
もしも、ギィちゃんが、あのグレートリザードの親近者だったとするとあまりにも危険すぎるから、これだけはどうしても聞いて起きたかった。
「同じ種族の家族はいないよ。でも師匠とアリスちゃんが私の家族なんだ」
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