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パルクール・ランナーズ  作者: 桜崎あかり
第1部
6/63

怒涛の展開へ

・2021年10月24日付

細部調整

 ギルドスタッフの話を聞き、西雲春南にしぐも・はるなは別室へと案内される。


 そこに用意されていたのは、複数のインナースーツとARガジェット――まるで、武器屋を連想させる光景だ。


「ここで使用するガジェットは基本的に正規品とは、別の意味でも違った物だ――それを把握した上で、ガジェットを選べ」


 別室へと案内した男性マスターは、西雲の方に視線を向ける事はない。西雲の方は、周囲を見回している途中で着替え室がある事に気付いた。


 つまり、そこでインナースーツに着用すると言う事の様である。しかし、それは一般的なARゲームの場合だ。


「確か、ARゲームってインナースーツに着替える必要性があるってガイドラインには書いてあったけど――」


「正規品とは違うと言った。どれでも好きなガジェットを選べ。そうすれば、答えが出る」


 西雲の質問にも答える事はなく、彼はマイペースで話を進める。まるでゲームのシステムナレーション等のノリだ。


 それに不満をぶつけても――意味はないので、ガジェットの方をいくつか品定めをする。


「ランダムフィールド・パルクールでは、武器に該当するガジェットはセーフティがかかる仕組みだ。使いやすいと思った形状のガジェットを選べば問題はないだろう」


 マスターの言う事も一理ある。アクション系でもバトル要素が皆無な物では、武器の威力は飾りに過ぎない。


 その為、ランダムフィールド・パルクールで重要なのは――ガジェットのサポート機能にある。


「これだけは伝えておこう。空を飛んでコースをショートカットする事は不可能だ。それを踏まえて、これだと思ったガジェットを使うのが良いだろう」


 マスターのアドバイスもあったが、それは全く聞こえていないかのような表情で――西雲は品定めをしていた。


 飛行系ガジェットは見た限りなかったので、このアドバイスは無駄に終わったのだが。



 10分が経過した辺りで、あるガジェットが目にとまった。複数のブレードが融合したようなボードである。


 ボードと言っても、パルクールで陸サーファーでもやるつもりなのか――と言うと、そうではない。ボードに関してはホバータイプなのだ。


 ボードの大きさは2メートルあるのだが、置かれている状態が縦ではなかった段階で違和感を持つ。


「これは――?」


 ボードに乗った西雲は、何かの光に包まれる。そして、数秒と立たない内に青色のインナースーツが着用されていた。


 まるで変身ヒーローものの変身と同じようなレベルである。これには西雲も驚きの声が出ない。


 更に言えば、瞬間的にインナースーツが装着されたと思ったら――今度はSF作品のメットを思わせるデザインのヘルメットが装着された。


『このメットは――ARメット?』


 ボイスチェンジャーは動作していないので、スピーカーで声が少し――と言う状態である。


 西雲の目の前には様々なデータが表示されているのだが、これも動画で見た事のある光景だ。これがARゲームのシステムと言う事か?


「言い忘れていたが、ARパルクールでは一部作品以外――ARアーマーは必須となっている。怪我人が出た事でゲームが終了――は避けたいからな」


 確かに動画でもARアーマーを装着していた人物はいたが、それはあくまでも任意だと西雲は考えていた。


 しかし、まさかの必須と聞いて本当に驚くしかない。本来のパルクールとは大きく違う物なのに、パルクールと名乗っていいのか?


 確かにネット上のウィキや公式サイトでも詳細をチェック済みだが、改めて聞いても驚くしかない。


 ある意味でも『大事な事なので二度言いました』という状態なのだが――。


『軽傷でもネットが炎上すると? それを本気で思っているの?』


 これは西雲も思わず叫びたくなるレベルの発言だ。ネット上でコンテンツ炎上が起きている昨今の現状を踏まえ、このような仕様になっているとしたら――。


 その元凶は、間違いなく特定芸能事務所や広告会社による超有名アイドル商法を初めとしたゴリ押し――日本では超有名アイドルしか存在を許されないWEB小説で題材になっているディストピア物だ。


 それはあくまでも小説での話であり――フィクションと誰もが思う様な物である。


「それを本気で思っている人間がいるからこそ、炎上させては連中の思う壺だ」


『馬鹿馬鹿しい――。こっちだって、ネット炎上がどうして起きるのかくらいは分かっている。それ位の出来事で炎上させようと考えているのは悪質なクレーマーや英雄願望を持った悪目立ちアカウントだけよ』


「君は、ARゲームに何を求めている?」


『何って――それは、パルクールのプロプレイヤーになる為――』


「それこそ、ひと山当てて有名になろうと考える動画投稿者や歌い手、実況者と同じだ。彼らは夢小説勢力によって――」


『ナマモノ夢小説勢力の話こそ、既に条例で禁止されているエリアもあるような存在よ。それこそ、過去の話題を引っ張るような物』


「――平行線だな。どうやら、お前をギルドにスカウトしようと言うのは失敗らしい」


 西雲とマスターの話は続いたが、その内容を巡ってギルドとは組めないような展開になっていた。


 どうやら、この場所へ案内したのはスカウトする為の理由があったのかもしれない。


「そのARガジェットは、お前に合わせてカスタマイズされた物だ。気に入ったのならば、持っていけ」


『どういう事なの?』


 マスターの発言は、西雲の思考回路を止めるのには充分な物だった。


 つまり、マスターは西雲の正体を知った上で接触した事になる。本人が出向いた事は――予定外だったが。


「お前が過去のネット炎上案件に関与した人物――西雲春南であるのは知っていた。その上で、お前に頼みたい事があった――」


『まさか、私にナマモノ夢小説を復権させようとする勢力を倒せと?』


「その件は、どう転んでもガーディアンが対処するだろう。お前に頼みたかったのは――ミカサだ」


『ミカサって、あのミカサ!?』


 詳細を聞こうとも考えたが、それを遮るかのようにARバイザーが何かをキャッチしていた。


 どうやら、何者かがギルドに接近している事を意味しているのだが――。

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