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パルクール・ランナーズ  作者: 桜崎あかり
第4部

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限界を超えた先

・2021年10月31日付

細部調整

 遂に再戦が実現したと言ってもいいカードだった。ビスマルクと西雲春南にしぐも・はるな、二人のレースは注目度が高かった。他のプレイヤーなしで1対1にしてほしいという声も上がるほどである。しかし、マッチングプレイヤーが集まらない等の理由がない限りは、1対1マッチングは実現しないだろう。


【他のプレイヤーも、あの2人とは当たりたくないとは思っているだろうが――】


【しかし、強豪と当たるのはマッチングの宿命――】


【逆に弱いプレイヤーとマッチングして、俺TUEEEやって楽しいのか――って問題もあるな】


【どちらにしても、さじ加減か?】


【今回に限っては他のプレイヤーが不憫に思えてくる】


 様々なコメントが飛び交う中、レースは既に始まっていた。


 10キロコースなのだが――西雲とビスマルクのどちらかが勝つのは明白と言わんばかりのレース展開になっている。


 実際、5キロまでは接戦であり――西雲の動きもビスマルクの動きも互角だった。だからこそ、他のプレイヤーが当たりたくないと思ったのだろう。


 西雲の動き自体はARガジェットをフル活用した物であり、ビスマルクがガジェットをあまり使用せずにセーブしている動きとは対照的だ。


 お互いに一般住宅の屋根と屋根を飛ぶような事はせず、普通にランダムフィールドの一般道を走っていたのである。


 他のプレイヤーは何とか順位を上げようとランダムフィールドでギリギリ設定されたショートカットを使用していた。それでも――3位に入るのがやっとな程に、西雲とビスマルクの一騎打ちに入り込む隙は存在しないのである。



 レースの様子を動画で視聴していたのは長渡天夜ながと・てんやだった。


「上位プレイヤー同士のバトルは、他のプレイヤーにとっても刺激になるのは間違いない――」


 レースの方は既に7キロ付近を越えた所であり、ゴールも残り2キロ強――逆転は難しい位置だろうか。順位はビスマルクがトップ、それを追いかけているのは西雲だけと言ってもいい。


 他のプレイヤーは、3位争奪戦を行うのがやっとな程にレベルの差が激しい状態だったのである。


「しかし、特定プレイヤーだけで盛り上がるのも――逆に打撃となるかもしれないが」


 本来は6人で走っているはずなのに、気が付けばビスマルクと西雲のレースとなっていた。他のプレイヤーは蚊帳の外と言わんばかりの展開である。しかし、こう言う状況ではレースは成立しないと――長渡は思う。


 特定プレイヤーだけをよいしょするような状態では、超有名アイドル商法やSNSテロで炎上した時と変わりがない。


「一部勢力だけが盛り上がるだけでは、それは内輪でプレイしているのと同じ――超有名アイドル商法の一件と変わりない」


 レースの方は、ビスマルクが9キロ直前で抜かれる事になり――西雲が逆転勝利する。まるで、長渡はビスマルク一強時代が来ない事を予言しているかのようでもあった。


「攻略本片手に、あるいはウィキで情報収集して攻略――どちらも自分で情報を収集する事を意味するが、本当にゲームをプレイしているのか?」


 長渡は――ビスマルクが負けた理由を何となく察していた。プレイスタイルを単純に変えただけで、あそこまで動きは変化しない。


 逆にパルクールでの癖が残るような部分だってあるはず。そこで長渡が考えたのは、プレイスタイルを変えた事だろう。


 それこそ、プレイ動画や攻略サイトの鵜呑みと言うレベルで――技術を吸収したのかもしれない。


【西雲が勝つのも想定内か?】


【そうではないだろう】


【ビスマルクのプレイスタイルは、確かに修正の余地があるだろう――】


【これもSNSテロに利用されるのだろうか?】


【どちらにしても、ネット炎上防止策が急務になるだろうな】


 確かにプレイスタイルとしては悪目立ちするようなスタイルからは脱却できたが――結論から言うと、西雲には勝てなかった。


 彼女には――ARゲームをプレイし続けてきたからこそ感じた空気を知っていたのである。ビスマルクが直前で抜かされたのは、ARガジェットの能力差かもしれないが――単純な能力差ではなく、ゲームのスキル的な部分かもしれない。


「ゲームをプレイする上で重要な事、それは自分で勝手に限界を決めてしまってはいけない事かもしれない――」


 レースリザルトを全て確認する事無く、長渡は別の中継動画にチャンネルを切り替えた。


「ゲームの想定しているプレイを越えた限界を見せれば――ARゲームは自然と盛り上がるだろう。それこそ、未知のバグを探すような――」


 別の中継でレースに参加していたのは、スクルドである。他のプレイヤーでは相手にならないような展開にも見えていた。


 しかし、そのスクルドをあっさりと抜き去って勝利したのは――何とミカサだったのである。


「ミカサ――だと?」


 その姿を見て、思わず驚かずにはいられなかった。ミカサは別行動をしていると思っていたからというのもあるが。


 ミカサの便乗であれば、アーマーの形状やプレイスタイルなどを再現できたとしても、本家にしかできない動きやテクニックも存在する。


 それらも披露しての勝利だったのは――長渡だけではなく、視聴者も同じ気持ちだったのかもしれない。



 レース終了後、ビスマルクはなぜ勝てなかったのか――西雲に問いかける。しかし、彼女は簡単に説明できるはずがない。それ位に集中してのプレイだったのだから。


『多分――ゲームにかける思いの差かもしれない』


 何となくだが、頭の中で閃いた事を言ってみた。実際、西雲がARゲームに情熱を注いでいるのは明らかだが――。


(ゲームにかける思い――)


 ビスマルクはARゲーム側にシフトしただけで周囲の歓声が変化した事に、納得してしまったのだろう。だからこそ、本当にそれだけで勝てるのか――と考えるのを忘れてしまった。いわゆる慢心と似た感覚――それが敗北の理由のひとつかもしれない。


 それを聞いたビスマルクは、別のフィールドへと向かう。それを実践する為なのかは不明だが、思う所はあるのかもしれない。

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