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パルクール・ランナーズ  作者: 桜崎あかり
第3部
45/63

もう一つの世界へ

・2021年10月29日付

細部調整

 午後1時40分、ある程度の動画を見終わった西雲春南にしぐも・はるなはランダムフィールドに再び参戦する。マッチングに関しては――既に彼女のレベルが30を超えた辺りなので、強豪プレイヤーが入る可能性も否定できないだろう。


『これは……まさかの展開です! あの強豪プレイヤーが電撃参戦しました!』


 あの女性実況が流れ、まさかの電撃参戦を告げている。その人物とは西雲ではない。むしろ、ウルズと言うジャイアントキリング枠が出てきた中で――西雲の名前が告げられるかと言うと微妙な情勢だ。


『今までは実況の方ではハイライト程度の扱いでしたが、まさかの登場です――』


『その人物とは、この人物だぁ!』


 センターモニターに表示された人物、それは軽装ARアーマーの人物だと分かったが――カラーリングは紫で誰なのかは想像できない。しかし、分かる人物がこの人物を見た印象は――誰もが言葉に出来ないプレッシャーを感じたと言う。


『そうです! 数週間前から電撃参戦したパルクールプレイヤー、ダークバハムートです!』


 すっかり名前にダークが付いたバハムートを騙る人物――ダークバハムートだった。レベルの方は50を超えている所から、ある意味でもマッチング的な仕様があるのかもしれない。


【あれがバハムート?】


【ダークバハムートだ。バハムートとは無関係だろう】


【そうだよな、パルクールプレイヤーがこちらに来るはずがない】


【決めつけるのは良くないぞ。実際、ビスマルクもかなり前から参戦している】


【しかし、プロのアスリートがARゲームで成果を上げた事例はない】


【そうかもしれない。あくまでもゲームだからな】


【ゲーム実況に挑戦する元アスリートと言う事例もある以上、ARゲームに元アスリートと言う法則も流行るかもしれないだろう】


 様々な意見が飛び交うつぶやきサイト内でも、あまり否定的な意見は飛ばなくなっていた。どのようなジャンルだろうと、こうしたケースは有名人の売名行為とか宣伝活動の延長線と考えて否定的な事例が多い。中にはネット炎上に発展したり、運営側が謝罪してゲームその物が終了するケースもあったとされている。



 中継映像が繋がったスタート地点にいたのは、ダークバハムートと無名プレイヤー2人だった。西雲に関しては別のスタート地点からスタートする為、ここには映し出されていない。どうやら、6人レースになるようである。


【無名プレイヤー扱いされていても、レベルを見る限りでは50近いな】


【逆に平均レベルが低いのが気になった。一番低いのは20らしいが】


【マッチングのシステムが理由だから、そこはあえて突っ込まない】


【しかし、ダークバハムート以外のプレイヤーが無名だらけなのは――?】


【一人だけ上位プレイヤーがいるぞ。西雲だ――】


 周囲も無名プレイヤーだらけでダークバハムートのワンサイドマッチになると思いこんでいる。そう言う展開のコメントばかりが流れているので、錯覚するかもしれないが――このマッチングには西雲もいた。


 しかし、西雲はウルズに敗北した事もあって期待はされていない。ネット上でも批判的な意見が飛び交っているのも、一つの理由かもしれないだろう。


【さすがに西雲は無理だろう。彼女が勢いに乗っていたのは初期だ。現状は――】


【しかし、ゲーマーは日々進歩するし――思わぬ進化もするだろう。レッテル貼りは良くない】


【ミカサの炎上案件もある以上、評判は悪いだろうな。レッテル貼りは別にしても】


【一体、何を始める気なのか――運営サイドは】


【こちらも分からない。一体、バーチャル動画投稿者を使って何をするのか――】


 まとめサイト等も炎上し、マスコミも正確なニュースを報道する事はないという混乱の中、ARゲームのバーチャル動画投稿者進出は始まったのである。果たして、この状況で進出したのは正しかったのか?



 レースは遂に始まった。10キロレースに決まり、障害物も若干多めのコースを使うようだ。さすがに車が走っているような道路は使用されないので、大事故に発展する事はないと思うが――念には念を入れてコースの変更が行われている。


 運営も最新の交通情報を考慮し、コースの設定を行っているので――そこまでの事故に発展したら、サービス終了に追い込まれるだろう。


「10キロコースでも、これは車の裏道に使われている道路も使われています」


「宅配便のトラックが通る可能性がある道路をコースに使うのは、さすがに危険でしょう」


「ARアーマーは無敵のスーツではない。事故の軽減はするだろうが――」


「交通情報でも注意を呼び掛けるアナウンスを放送している最中だ。それを無視すれば、宅配業者が事故の責任を――」


「それでも事故は起こる可能性が否定できません。コースの変更を要請します」


 結局はコースの変更を余儀なくされ、大型車両が通過するような裏道は使われない事となった。しかし、それでも自転車等が通らないとは断言できない為、通行止めを指示する。


『――こちらのコースはARゲームで使用される為、一時的に通行止めとなります。レース終了まで、しばらくお待ちください』


 該当するコースには、通行止めを知らせる放送が流れる。通学路や私有地等は通行止めの対象にはならないので、ARゲームとは無関係な一般人を巻き込む事はないだろう。


『さて――他のプレイヤーが、どう動くのかが見所か』


 ダークバハムートは周囲のギャラリーが気になり、周囲を見回すのだが――それっぽい人影はない。


 無名プレイヤーが逆にダークバハムートの仕草を気にする気配を見せているが、無名プレイヤーの様子を気にしている余裕は彼にはないだろう。


 同じ事は西雲にも該当し、今の彼女はレースではなく逆にビスマルクを気にする状況だった。その為か、周囲のプレイヤーの声は聞こえていない。


(ダークバハムート? 何処かで見覚えが――)


 西雲が気になってARバイザーをSNSモードにしようとした頃には、既にレース開始1分前となっていた。1分前になるとマッチポンプなどを防止する理由でSNSモードが使えなくなる。それは西雲も把握しているのだが――。

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