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パルクール・ランナーズ  作者: 桜崎あかり
第2部
18/63

想定外の展開

・2021年10月25日付

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 2月11日、カレンダーでは祝日になっていた事もあり――草加駅と谷塚駅は大量の観光客が訪れていた。その目的は様々だが――圧倒的に多いのがオケアノスだったのである。一昔前とは比較できないような展開には、草加市役所も驚いたに違いない。


「計画を進めていた当時は、そんなに話題にはならなかったのが――」


「確かに。オケアノスに関しても、当初は太陽光発電等を有効活用する為のショッピングモールと言う話もある」


「しかし、ネット上ではオケアノスの噂は――」


 市役所内でもこうした声が聞かれるほどには、現在の盛り上がりを信じない声も存在する。春日部市や鷲宮、秩父と言った場所が聖地巡礼を成功させた事例もあり、茨城県大洗市は――説明するまでもない。


 そうした流れに便乗する訳ではないが、聖地巡礼を観光の切り札にしようと考えていたのは数年前から構想があったようだ。


 その証拠が――ゲーム会社を招致した一件がニュースになった事だろう。その時はネット炎上等は草加市も把握しておらず、ああいう流れになるとは――想定していなかったようだが。


「それにしても、ここまでの影響力があると言う事を改めて知る事になるとは――」


 単発的にテレビの取材が入る時もあるが、その場合の観光客は一時的に過ぎない。ブームが去れば、街に魅力はないと判断されるだろう。しかし、聖地巡礼の場合は――様々な難点もあるのだが、得られる物は想像を絶すると言う話だ。


 その話を持ち込んだのは、ARゲームメーカーの男性スタッフだった。彼は草加市を舞台としたゲームを作りたいと取材の許可を得る為に市役所へ姿を見せる。


『我々が作るのは、ゲームであるのは間違いないですが――家庭用ゲームやアーケードゲームとは少し違う物です。それが――』


 当時の話では試作品もなかった為、映像による説明だったが――そこで提示された物こそが拡張現実を使用したARゲームだった。


 この男性スタッフが、後に長渡天夜ながと・てんやだった事がわかったのは、2018年ごろの話である。この時になって、ARゲームのネット炎上事件が発生し――初めて、オケアノスの事にも言及されたからだ。


「しかし、彼の話は――我々の想像を絶していた。だからこそ、これだけの観光客を呼び込めるコンテンツを生み出したのだろう」


「他の都市もARゲームに本腰を入れ始め、秋葉原や北千住、竹ノ塚がノウハウを得る為に相談に来たのもありましたね」


「だからこそ、改めて思うのだ。我々は長渡という人物がパンドラの箱を開けたのではないか――と」


 役所仕事では出来ないような事を、長渡はやって見せてしまった。そして、色々とトラブルはあったが――モデルケースを広めるきっかけが出来たのは大きいだろう。



 同日午後1時、各駅停車の電車から降りたのは様々な観光客だった。満員電車に近い車内でヲタクやコスプレイヤーに混ざって、元アスリートが谷塚駅に降りる光景は――下りの地下鉄を待っている一般市民もドン引きだろう。


 谷塚駅は各駅停車しか止まらない駅だが――何か新しい名所でもできたのか? 同じ電車から降りたサラリーマンもコメントに困っていた。


「これだけのプレイヤーが多いと、下手に動けないか――?」


 軽装備で様子を見にやって来たのは、バハムートだった。彼も同じ電車から降り、鞄のポケットからスマホを取り出して改札口を通過する。


 いわゆる電子マネーで支払いを行い、彼は駅を出ていくのだが――途中で人混みの多いエリアを発見した。


「噂のARゲーム――そう言う事か」


 あの時は、事情が呑み込めていない中であの騒動を起こしてしまったのだが――今ならば分かる気配がする。彼の知名度は業界内でもそこそこあるので――このような混雑しているエリアに姿を見せれば、大騒ぎになりそうな気配はするだろう。


 しかし、訓練されているかのように反応しないのは、逆に彼を不安がらせてしまった。有名人は色々とつらいようである。


 あくまでも知名度はプロのパルクールプレイヤー内の話であり、ARパルクールの話ではないのだろう。元アスリートの姿を見ても騒ぐような流れもないので、ここで降りる観光客の目的はアレしかかないような物らしい。


『あれは――バハムート? 何故、この場所に――』


 遠目からバハムートを発見していたのは、ARインナースーツにARメットと言う姿が明らかに目立つミカサである。しかし、それでも騒ぎにはならない。谷塚駅の近くには交番があるのだが、警察のパトカーが来て大騒ぎになるような要素も見当たらないのだ。

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