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パルクール・ランナーズ  作者: 桜崎あかり
第2部
17/63

始まりの第2ラウンド

・2021年10月25日付

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 2月9日、ランダムフィールド・パルクールを巡るネット炎上記事が出回り始めてきた。


【暴力事件に発展か? 該当プレイヤーをライセンス凍結に。犯人は――】


 煽り文章だけを見ると――バハムートが先に仕掛けたような書き方もされている。実際、事件の詳細を記したとされている文章も特定炎上ユーザーの書き込みをコピペして貼り付けただけであり、明らかにアフィリエイト収入狙いと言われるだろう。


【チートプレイヤーを複数摘発。関連人物にはバハムートか?】


 こちらはチートプレイヤーのライセンス凍結は事実に基づいた物かもしれないが、そこにバハムートは関与していない。つまり、半分の事実と一部の記事に嘘を混ぜたものと言えるだろう。


 こうした記事は実在人物を扱う夢小説として認識され、ARゲームプレイヤーからはゲーム系迷惑サイトとしてブラックリストに入れられていると言ってもいい。


「これらの記事を――何とかしたい所だけど」


 飲み物を買う為にスーパーへと立ち寄り、買い物帰りな中で――メイド服姿の西雲春南にしぐも・はるながスマホを片手に、記事をチェックしている。


 チェックと言ってもスーパーの入口に設置されたベンチに座っており、歩きスマホではない。さすがに歩きスマホは炎上の対象として見られており、あまり歓迎されていないのが現状だろう。


 下手に、そんな事をすれば大事故に繋がるのは――過去にも事例があるだけに、スマホユーザーは自覚をしなくてはならない。


 一部の買い物客が西雲のメイド服姿を見て、ひそひそ話をするのだが――その程度であれば既に慣れており、何時も通りのスルー技術を披露する。


「別のゲーム研究家でもいれば――?」


 スマホを適当にいじって、検索をしていた時に――話題の動画を発見した。既に10万再生を突破しているので、そこそこ有名なプレイヤーの物だろうか?


 しかし、動画のタイトルにはそれっぽいプレイヤーネームがなく、それで10万再生以上は難しい――再生をせずに探し物を優先しようとしたが、周囲の状況を見て――今はチェックを止める。


「これは後で見た方がよさそうかな」


 電波状況が悪くて再生できない訳ではなく、ここでは大爆音の動画を再生すれば迷惑客としてマークされかねない事情もあった。


 場所が場所だけに――ある程度のマナーは重要と判断する。オケアノスの該当エリアではコスプレも問題はないが、ここはオケアノスのエリアギリギリだった。


 東京都足立区はオケアノスのエリア外なので、下手に向こうへ行ってしまうと――不審者と指摘されかねない事情もあるが――。


【さっき、あのベンチでメイドがいたのだが――】


【メイド? 秋葉原でもあるまいし】


【確かにいた――はずなのに】


【コラ画像を見て、メイドがいると勘違いしているのでは?】


【いや、秋葉原でなくてもメイドはいるぞ】


【どういう事だ? それこそイベント会場でもなければ――】


【最初の発言は嘘ではない。オケアノスと言うエリアでは、コスプレイヤーの目撃率が多い。メイドは、比較的多いだろう】


 あるつぶやきサイトのやり取りが、何時の間にやらまとめサイトに掲載され、オケアノスの注目度は思わぬ所で上昇している。


 これを良いニュースと判断するかは個別案件だが、ARゲームプレイヤーとしては隠れた名所をネット上で晒されるのを歓迎しない事が多かった。


 こうした反応の違いこそ、ネット炎上にとっては都合の良い材料であり――ARゲームを潰すチャンスでもあったのかもしれない。



 2月10日、アンテナショップではなくギルドで色々と試行錯誤があった末に、ビスマルクは何とかランダムフィールドに参戦出来た。


 初プレイに関しては彼女自身がパルクール出身という事で期待はされていたが――結果としては2位に終わる。実際、スポーツアスリートがARゲームに進出してもボロ負けで炎上する展開がテンプレだったので、健闘した方だろう。


【予想外だな。プロアスリートでボロ負けではないプレイヤーは】


【陸上選手辺りでも、スタミナ配分ミスでリタイヤするケースがあるARパルクールを――】


【あのプレイヤーは明らかにARゲームも知っている気配だったな】


【ソレは本当か?】


【実際、プレイスタイル自体はパルクールの経験者と思ったが――ARゲーム独自のシステムも把握しているようだった】


【今までのアスリートも、そうであればよかったが――】


【結局は現役に戻る為に利用したとか――そう言う路線だったからこそ、炎上したのかもしれない】


 ネット上では、まとめサイト経由ではなく動画サイトで動画を見た者による意見が半数近くある。全く視聴せずにコメントを書き込めば、それこそARゲームの民度を疑われるのは間違いない。


「実力は、そこそこあるような雰囲気だが――」


 フレスヴェルクは、ふと気になってセンターモニターで動画を視聴している。その動画に映し出されていたのは、明らかに重装備とは程遠いバックパックと――ミリタリー系を思わせるデザインのARアーマーとARバイザーを装備していた。


 この外見だけでは、誰かは特定できる物ではないだろうが――この人物の動きを見て、手慣れている人物とフレスヴェルクは思う。


「あのプレイヤーって、ゲーマーではないらしいな」


「パルクール出身者らしい」


「ソレは本当か?」


「プレイヤーネームを見ろ――」


 フレスヴェルクはギャラリーの声が気になり、プレイヤーデータの項目をチェックする。そして、そこに書かれていた名前は――。


「まさか――本当に参戦したと言うのか」


 順位が2位だったのが初見プレイだったとしても、あの動きだと1位になってもおかしくない。別の意味でも可能性があるような動きを、彼女は見せていたのだろう。


「あの動きだと、数日もあれば――化けるかもしれない」


 ビスマルクの動きは、まだARゲームとしての動きには慣れていないのは事実だ。しかし、パルクールとしての動きは既にプロと言う事もあって熟知している。動きの調整が出来れば、ARゲームには早い段階で適応出来るだろう。

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