表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/23

第23話

 三日後──

 マシロ・コーポレーション本社ビルであったテロ事件は世間を騒がせていた。

 まず、〈赤の旅団〉が襲撃したメインサーバからデータが流出し、隠蔽されていたさまざまな不正が判明した。その影響は、あらゆる企業、個人に及び、次々と捜査当局の手が入り、連日メディアを賑わせていた。

 次に大衆の興味を引いたのは、マシロ・コーポが裏で行っていた非人道的な人体実験のことだった。数え切れないほどの少年少女の犠牲がセンセーショナルに報道された。あの白衣の男は、あのあと逮捕され、現在取調中だ。そのうちシュリのことも明らかになることだろう。

 最後は、すべての元凶である真城コウタロウが、本社ビル屋上から転落して死亡したことだ。自死の疑い、遺体の無残さ、真城の死によって葬られた数々の真実、それらすべてが大衆の娯楽として消費されていた。


 一方、本多は──

 本多の部屋のソファーには、シュリが目を閉じたまま座っている。あの日以来、シュリは活動停止したままだった。充電しようが、再起動しようが、状況が改善しなかった。アンドロイド自体が壊れてしまったのか、それともシュリが成仏してしまったのか──

 本多は、右手にコーヒーを入れたマグカップをもって、シュリの向かいの席に座った。

 壊れた左腕は欠損したままだ。左腕は修理に出しているが、いまのところ修理代を工面できる目途は立っていない。右腕だけでの生活を余儀なくされているわけだが、利き腕が残っているとはいえ、片腕は不便だった。

 吐血をしたわりに命に別状はなく、二日間の療養だけで、体調は元通りにもどった。我ながら丈夫な身体である。

 しかし、二日間の欠勤のあとに神社に出勤すると、事態は一変していた。マシロ事件で流出したリストの中に、この神社の宮司の名前もあったらしく、本多が職場に着いたときには宮司がすでに逮捕されていた。駐車場には、本多が半壊させた空中浮遊車両(エアリアル・ビークル)が停まっていた。そして、三日前まで枯れかけていた御神木のクスノキは、信じ難いことに青々とした葉を見事に復活させ、生気に満ち溢れた姿へと一変していた。御神木が宮司に天罰をくだしたにちがいない。

 本多は無職になった。


「シュリ。今朝出勤したらさ、職場がなくなってたよ。例の流出したリストのなかに俺の雇用主の名前もあったらしい。ッたく、俺も被害に遭うとはね。ま、いいけどよ」

 返事はない。

「なあ、ほんとに成仏しちまったのか? まあ、それはそれできっといいことなんだろうけどさ、挨拶くらいしてけよ。いきなりだとこっちがびっくりするじゃんか」

 返事はない。

「……あーあ、もう一度、お前がつくった料理が食べたかったぜ」

 そう言うと本多は席を立った。マグカップは空になっていた。キッチンへ行こうとしたときだった。

「オマエっていうのやめてくんない」

 と、きこえたような気がした。

 幻聴だろうか?

 本多は振り返ってソファーのほうを見た。

「……ハハッ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ