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第17話

 大量の武器をかかえ、本多は途方に暮れていた。これだけの銃器をもってモノレールに乗ることはできないし、まして、マシロ・コーポレーション本社ビルがある NEOTOKYO 最上層に入ることは不可能だ。

 最下層の住人たちは、重装備の本多を警戒して、遠巻きから覗いている。

(どうにかしないと……)

 気持ちばかりが逸る。

(……車で強引に進入するしかないか)

 かといって、本多は車をもっていない。となると、盗むことになるわけだが──

 周囲に住人たちの監視の目が光っているが迷っている時間はない。路上に停まっているガソリン車やバイクを、手当たり次第に調べてみるが、どれもなにかしらの部品が抜かれていて、まともに走れそうなものは一台もなかった。

 ここは諦めて別の場所へ行くことにした。本多が走り出すと、覗いていた最下層の住人たちは、蜘蛛の子を散らすように、物陰に隠れた。


 途中、ヒミコから着信があった。

「シュリが連れてかれた」

 本多は通話に出るなり、叫んだ。

『な、なに? 一体どういうこと?』

「シュリが武装した奴らに拉致された。場所はおそらくマシロ・コーポレーション本社だ」

『わかった。私もちょうど、カチコミの準備ができたって、連絡したかったところだから。我々もすぐに行動に移すわ』

 そう言うと、通話が切れた。

 本多も先を急いだ。


 本多は、最下層の娼館密集地区に来た。ここなら客が車をつかっているだろうと踏んだからだ。案の定、広い駐車場に十数台の車が停まっていた。時代遅れのガソリン車だけでなく、高級車や電磁力車も停まっていた。そのなかでもひと際目を引く車がある。空中浮遊車両(エアリアル・ビークル)だ。しかも見覚えがある。勤務先の神社にあった宮司(ぐうじ)の車に似ていた。まさかとおもったが、近づいて確認すると間違いない、宮司の車だ。ということは、あのスケベ宮司が娼館に来ているということか。

 ほどなくして娼館の女主人と娼婦に見送られながら店から出てきたのは、拝金主義で本多の雇い主である、あの宮司だった。本多は身を隠した。あの宮司め、女を買うのにわざわざ最下層まで出張(でば)るとは、金持っているくせに、女にまで金をケチるかね、と本多は呆れた。

 宮司は、上機嫌で駐車場を闊歩しながら、自身の空中浮遊車両(エアリアル・ビークル)に近くまで来ると、車のキーを取り出した。本多は、宮司の背後から音もなく忍び寄り、腕を首に巻き付けると、チョークスリーパーで締め落とした。

 落ちたキーを拾う。宮司はアホ面で眠っていた。

「少し借ります」

 そう言うと、空中浮遊車両(エアリアル・ビークル)に乗り込んだ。

 本多は、憧れの空中浮遊車両(エアリアル・ビークル)をはじめて運転することになり、少なからず緊張していた。キーを挿しこみ、回す。ブゥゥゥン、という反重力場機関リパルサーフィールド・エンジンの唸るような低音が身体の奥底に響いた。

 サイドレバーを引くと、空中浮遊車両(エアリアル・ビークル)はゆっくりと上昇していった。

「うひょオォォ」

 子供の頃からの夢が叶って、本多は興奮した。

 アクセルを踏み込む。すると、空中浮遊車両(エアリアル・ビークル)は急発進して、娼館の大きなネオン看板に向かって一直線に突っ込んでいった。

「ヤバッ!」

 急ハンドルを切る。空中浮遊車両(エアリアル・ビークル)は、車体側面を擦らせながら、看板との衝突をギリギリ回避した。

 空中浮遊車両(エアリアル・ビークル)は、そのあとも右に左に暴れ回った。本多は、暴れ馬を乗りこなすカウボーイよろしく、車をなんとか抑えつけた。

「ふゥ」

 冷や汗を拭う。

 しかし、これならゲートをくぐらず、直で NEOTOKYO 最上層にあるマシロ・コーポレーション本社まで行ける。

 本多はアクセルをベタ踏みした。

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