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君時雨(きみしぐれ)  作者: 葉月 ひより
5/12

アイス

ちょっと間が空いちゃったかな。まぁ、そういうもんだしな。

 セミがうるさい。クーラーの効いた部屋についさっきまでいたから降り注ぐ熱線が余計暑い。

 こんな日に部活に来させる部長は何を考えているのだろうか。うちは文芸部じゃないか。

「あつい、暑過ぎる」

 日焼け止めを塗るのが面倒で長袖ブラウスなんて着てきてしまったが、じんわりじんわりとかく汗で非常に気分が悪い。

 駅近くの公園と通り過ぎようとすると見覚えのある人がいた。

「先輩、何してるんですか?」

 同じ部活のいずみ先輩がエイティーンアイスをブランコに腰掛けて食べていた。

「なっちゃんか。こんなところで奇遇だね。見ての通りだよ」

「おいしそうですね。……私も買おうかな」

「うん、美味しい。通はバニラだ、なんて言うけど私はストロベリーが一番美味しいと思う」

「あ、私もそう思います」

 いずみ先輩もストロベリーが好きだったんだ。だから何ってわけでもないけど。

 自販機の方へ歩くとなぜかいずみ先輩もついてくる。

「先輩なんでついてくるんですか?」

「用事がそっちにあるから、かな」

「そう、ですか」

「うんうん、そうなんだよ」

 何なんだろう。別にいいんだけどさ。

 自販機の前でどれにしようかなと眺めて、やっぱりストロベリーかなとは思うも、わざわざ同じやつを買うものかと思う。でも私もいずみ先輩と同じの食べたいな。

 隣でチャリンチャリンと硬貨を入れていくいずみ先輩がいた。その手には私も食べようかと思い悩むアイスを持っている。

「何を……」

 私が声をかける前に手に持ってる物と同じ物のボタンを押し、自販機からアイスをはかせる。

「あ、最後の一個か。どうぞ、私と同じ物ですが」

「えっと、どういうことですか」

「ここであったが百年目ってやつ。偶には先輩っぽいこともしときたいしね」

「それじゃあ私殺されることになりませんかね。アイス、ありがとうございます」

 いずみ先輩からアイスを受け取ると満足そうな顔をしてブランコの方へ戻っていった。

 私もいずみ先輩の後を追う。

 ブランコに腰掛け私を見上げながらいずみ先輩は尋ねてくる。

「なっちゃん部活なんでしょ?行かなくていいの?」

「それは先輩も同じじゃないですか」

 そう言えばそうだみたいな顔をしてる。この先輩は何をしに公園にいたんだろうか。

「それはさて置いてさ。長袖なんて着てきて暑くないの?」

 さて置いたぞこの先輩、本当に何をしに公園にいたんだ。

「そりゃ、暑いですよ。でも、先輩には言われたくないです」

 先輩はこの炎天下でブレザーを着てきている。なのに私よりも暑そうな感じがしない。

「いやいや、私なんかが人様に肌見せたところでなんの需要もないけどなっちゃんならあるって」

「……セクハラですか」

「やだなぁ、冗談だって。そんな冷めた目で見ないで、照れる。本当だと思ってるけど」

 一つため息をはき、いずみ先輩に言う。

「そろそろ部活行きません?」

「冷たいなぁ。うん、そうだね。そろそろ行かなきゃ部長が怒りそうだ」

 空がゴロゴロと言っている気がする。

「あ、降り始めた?」

 顔に冷たいものが当たった気がした。

「わぁお、もう雲が覆ってるや。早く屋根のあるところに行こう」

 いずみ先輩がおもむろに私の手を取ってくる。

 それと同時に頭上からバケツをひっくり返されたみたくなる。

「ひぃやぁぁ!」

「そんなに私に触られるのが嫌だったのかい!?」

 いずみ先輩は上を見上げて困った顔をしている。

「あららー、降っちゃったかぁ」

「ま、せめて雨風はしのげるところにいよう」

 いずみ先輩は私を小さな小屋のようなものがある遊具のほうへ引っ張って行く。

「ここなら雨はしのげるかな」

「狭くないですか?」

「窮屈だとは思うけど入れないことはないだろう」

 二人で入るのが精一杯な狭さだが、うだうだと言ってこのまま濡れるわけにはいかない。

「わかりました、なるべく小さくなっておきます」

 別にいいのになみたいな顔をしていずみ先輩は小屋に入っていった。

雨要素少なくね?

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