教室→帰り道
放課後の教室で一人ぼんやりと机に突っ伏して空を眺めるのが好きで、私はよくそうしていた。
今日は一面灰色。雨でも降りそうだな。
そう言えば最近、ヒナタ君と話せてないな。
かっこいいもんなぁ、いつも誰かと話してて私には入りにくいんだよな。いつも一人になったとき一人になったときって機会をうかがって話せてないや。
ヒナタ君って科学部だったっけ?たしかこの前表彰されてたな。すごいなぁ、私なんて理科がちんぷんかんぷんなのに……。教えてくれたりしてもらえないかな。あ、でも絶対私テンパって頭に入らないや。
四月に隣の席になったときにもっと話してたら良かったのにな。あーあ、勿体無いことしたな。時間巻き戻ったりしないかな。そしたらもっと上手くやるのに。だいたい神さまは酷いよ。あんなかっこよくて優しいヒナタ君といきなり隣にするなんて私が話せるわけないじゃん。まぁ、ヒナタ君から話しかけてもらえたけど……。
あれ?そしたらクラスで最初に話したの私なのかな。ヒナタ君かなり遅くに来て席についたし、なんか友達と同じクラスじゃなかったって言ってたし。うわぁ、私が最初なんだ。神さま、さっきはごめん、ありがとう。
ヒナタ君ってモテてるのかな。でもあんまり女の子と一緒にいるところ見たことないな。いつもいるのってヒナタ君と一緒じゃないときは本ばかり読んでる人たちってイメージしかないや。
この前、ヒナタ君たちはオタクだって別のグループの子たちが言ってたな。私は別にいいと思うんだけどな。夢中になれるものがあるのって羨ましいし、私も毎日とはいかないけどかなりのアニメ観てるし、漫画とかも好きだし。
こういう話をしたら仲良くなれるかな。変だって思われないかな。
バケツをひっくり返したような音と雷の音とで私を空想の世界から意識を現実に戻された。
うわっ、びっくりした。
「あー、かなり降ってるなぁ。傘持ってきてないのに……」
こんなことなら空を眺めずに早く帰っておけば良かった。
「あれ、西森さん?一人?」
「え?春日井くん、どうして」
なんでヒナタ君が教室に?一人で教室にいたとか変な人って思われたよね。
「いきなり雨降ってきちゃってさ、折りたたみ取りに来たの」
「あ、うん。そんなんだ」
なぜか教室を後にせず、ヒナタ君はその場でそわそわと言いにくそうにしている。
なんだろ、やっぱり私のこと変なやつだって思ったんだ。
「西森さんってさ……その、傘持ってないんだよね。さっき聞こえちゃってさ」
あれ?なにこの感じ。
「だからさ、傘……小さいけど…………その、一緒にどうかなって」
え?なにこれ?
「えっと、いいの?」
「西森さんが良ければ……だけど」
「あ、じゃあ……ありがと、助かります」
静寂の中で雨の音だけが存在を主張する。
突然ヒナタ君は吹き出した。
「なんだろ、すごい改まっちゃってさ。こちらこそよろしく、でいいのかな」
ぷくく、と笑いながらも握手を求めるように手を差し出される。私もよく分からないがおずおずと手を差し出す。
傘はやっぱり二人では小さすぎて、お互いどうしようと肩が濡れてしまう。でも私はそんなのすぐ蒸発してしまうんじゃないかってほど体温が上がっているような気がした。
しばらく傘をお互いに譲りながら歩いていたがそれが終わると途端に無言が続いた。
道も中程になったころにヒナタ君は思い出したように呟いた。
「職員室いったら傘借りられたんじゃね?」
「あ、ほんとだ」
ヒナタ君はまた吹き出すとよく分からないことを言い始めた。
「でも西森さんと帰れたしまぁいいか」
「えっと、どうゆうこと?」
ヒナタ君はチラチラと周囲を見てから小声で告白をしてきた。
「誰にも言わないでよ。実は僕、雷が苦手でさ。西森さんだったらこの秘密言ってもいいかなって教室で会ったときに思って。ごめんな、こんなことで僕と一緒の傘に入ってもらって」
こんな気持ちになったのは全部雨が運んできたんだ。
「じゃあ、変だって思わないでね。実は私、アニメとか漫画が好きで────」
ヒナタ君の瞳が空とは対照的にキラキラと輝いているように見えた。
どうも作者の葉月ひよりです。
偶には後書きにでてこようかと思ってみたら本当に出てきちゃいました。こんなことってあるんですね、私も驚いてます。
さて、戯言もほどほどにして作品について語っちゃいます。
今回は『雨』と『恋愛』をテーマししてみようかな、と思ったのでやってみたら思ったよりも綺麗な世界観が出せそうな気がしたので、至らないところも多々ありますが、少しでも甘酸っぱさや幻想的なものを感じていただければと思っております。私も精進していきたいです。
ではでは、毎度ながら言わせていただきます。
読んでいただきありがとうございます。
感想などをもらえると作者は喜びます。
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