第八話
「今日は、何してたの?」
夕食時、訓練から戻ってきた光征と凛たちのグループは合流し、一緒に食事を取っていた。
今日の出来事を凛たちは、和気藹々と楽しそうに話をしをしている。
光征は、あまり会話に入るようなことはせずに適当に相槌を打ったりしてしていたのだが、訓練が分かれたことを気にした凛から質問を受けてしまった。
「別に特別なことはしてないよ。素振りとかいろいろ基礎的なことをしてたかな。」
「そうなんだ。何か変わったこととか無かったの?」
召喚されてから特に元気がないように見える光征が気になり、凛はなるべく光征に話しかけるようにしているが光征の態度は、だいたいそっけないものであった。
もともと仲の良かった凛たち4人は、夕食後もお互いの部屋に集まって話をしたりしているが、光征は声を掛けてもいつも断ってさっさと1人で部屋に戻ってしまう。
凛には、どうしようもないことだが、それでも自分の召喚に巻き込まれてしまった光征が、今誰ともなじめておらず元気のない様子なのは、見ていて胸の詰まる思いだった。
「そう言えば、今日からエルって言う人が付いて訓練してくれるらしい。」
「へえ。そうなんだ。どんな人だった?」
「同い年くらいの女の子でなんか厳しそうな人かな。」
「え~いいじゃん。山守クン、女の子に訓練してもらえるんだ!俺たちなんてむさいおっさんだぜ。まあ。めちゃくちゃ強くてすごいんだけどさ。とにかく厳しいんだよなー。なー凛?」
光征と凛の会話に反応したのは、健一だ。
健一は、うらやましそうに光征を目をやり口と尖らせた。
凛たちの訓練の教官は、ベルベット・マカロフとい偉丈夫で、この国きっての実力者である。
ベルベットは、騎士でありながら魔法も高いレベルで行使することが出来る所謂、魔法剣士のようなもので、高い魔法適正を持ち神器による近接戦闘も視野に入れている凛にとっては、最適な教官であった。
彼の訓練は騎士団でも厳しいと評判なのだが、それにもめげずについっていっている凛たち4人は、流石、勇者一行であるともっぱらの噂である。
「確かにベルベット先生は厳しいけど、それは私たちの為でもあるしね。」
「そうだよねー。でもベルベット先生ってちょっと口数が少なくて、何考えてるか分からないから少し怖いなー。」
綾がうんうんと腕を組み首を縦に振りながら肯定した。
「でもいい先生だよ。僕たちのことを強くしてくれようとしっかり考えてくれてる。今日だって--。」
「まあ。ベルベット先生の話はいいじゃん。それより今は、山守クンの教官になった人の話だろ!」
いつの間にか凛達の教官の話になってしまいそうな所を健一が遮って話の軌道を修正した。
よっぽど光征の担当になった教官が気なるみたいだ。
「でさ、山守クン。その女の子ってかわいいの?」
「うわ。宮里さいてー。」
健一の思春期の男ならではの言葉に凛が冷たい目をして非難した。
「ち、違うって凛。ほら、そういうの聞くのはお約束なんだよ。な?流?」
「あ、ああ。まあ。そういうもんかな?」
「ふーん。男子って馬鹿だね。」
「へいへい。どうせ馬鹿ですよ。っでどうなの?」
開き直った健一は、光征に再度同じ質問を繰り返した。
面倒だと思いつつも光征は。その質問に答えた。
「かなり可愛かったんじゃないかな。」
「おお!いいなー。」
「山守君もそういうの気にするんだなんか意外。」
光征の答えに健一は目を騒がしく返事をし、逆に凛はじとっとにらめつけるような目で光正を見た。
「別に客観的に思ったことを言っただけだし。もういいだろ。食べ終わったし、部屋に戻るから。」
「あ、ちょっと・・・・・・。」
光征は、そういうとテーブルから立ち上がり声を掛けた凛を無視して、足早に食堂を出て行ってしまった。
「んだよ。あいつノリ悪りーな。」
「どうしよ。せっかく今日は、珍しく山守君私たちと話してくれてたのに。怒っちゃったかな。」
「凛が気にすることないよ。山守君ってクラスでも前からあんな感じじゃなかったっけ。」
「そーそー。ほっとけばいいんだって。たぶんあいつ自分が勇者じゃなかったから拗ねてんじゃねーの?なんかそういう漫画っぽい設定に憧れありそーだし。オタクっぽいっていうかさ。」
出て行ったしまった光征を気にする凛に対して綾や健一はフォローを入れた。
奇しくも健一の言っていることは、ニアミスしていたが、拗ねているといううよりも絶望しているといった方が正しかったのだが、それを彼らが知る術はなかった。
「凛は、責任感が強いから。あんまり気にしないほうが良いよ。そのうち彼も打ち解けてくれるようになるよ。」
「そうかな。そうだといいんだけど。」
気落ちしている凛に流は、やさしく声を掛け、首を振った。
凛は、心配そうに光征が出て行った扉を眺めた。




