↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/39

39 転 勤

 四月から書き始めたマルちゃんのお勤めは、8月に最終話を迎えました。今の段階で、詳しい内容は決めていません。最後はどうなるのか、作者である私にも全くわかりません。いつもこんな感じです。辛みと笑いと幸せが描けたら幸いです。


 お盆が終わり、世間は通常の営みに戻ります。この家の大黒柱である正さんも今日から出勤しています。

 正さんのお仕事は、国家公務員の事務官と言っていました。具体的にどの様なお仕事かは知りません。年に数回の出張がある他は、毎日定時に帰って来ます。忙しい部署ではないのでしょう。


「ただいま」

 正さんが仕事から帰って来ました。

「お帰り。お疲れさまでした」

 若奥さんの早苗さんが出迎えます。

「転勤になった。京都の舞鶴市だ」

「こんな時期に、また急な話ですね」

「ああ、人が倒れたらしい。その人の代わりに私が行くことになった」

「それは大変、もしかすると今度は、大変なお仕事なのですか」

「いや、大した事ないだろう。やる事は、今と変わらない」

「それは良かった。それなら楽しみですね。舞鶴は何が美味しいのですか」

「カニだな。でも旬は冬だから少し間があるな」

 転勤と聞いても、特に慌てた様子はない。この二人にとっては、よくある普通の事のようだ。

「転居先を探さなければならない。今度は、犬を飼える借家が必要だから、探すのに時間がかかるだろう」

「そうね。それならマンションより、一戸建てをさがしましょうか」

「いや、雪が多いから一戸建てだと手間がかかる。マンションにしよう」

 会話の中に、犬が飼える借家とあった。何の事だろう。まさか、私も行くのだろうか。


 正さんの転勤に伴い、若奥さんと私は、京都府舞鶴市へ引っ越すことになった。

 今まで、私の雇い主は、おじいちゃんとおばあちゃんだと思っていたのですが、本当の雇用主は、若奥さんの早苗さんでした。

 80歳であるおじいちゃんは、高齢であるため、私をペットとして雇用することができないのだそうです。

 私たち犬は、基本、終身雇用であるあめ、犬より先に寿命を迎えるおじいちゃんとは雇用契約を結べないと言う事です。


 そう言う事で、私は正さんたちと一緒に転勤です。

 優秀な私も、所詮はサラリーマンです。辞令が下れば従うほかありません。

 不安です。転勤先で、私の仕事は、何をすればいいのでしょう。この地では、おじいちゃんとおばあちゃんの散歩の付き添いが、主たる任務でした。

 転勤先で、私は何をやらされるのでしょう。

 舞鶴では、カニ漁が盛んだと言っていた。もしかして私は、船に乗せられ漁師になるのでしょうか。北の海の漁師、漢の仕事です。カッコいいです。

 でも私は、女の子です。そう言うのは遠慮したいです。

「マルちゃん、大丈夫。あっちでも、お友達はできるよ」

 私は、とても不安そうな顔をしていたのでしょう。早苗さんが優しく頭をなでてくれます。

 でも、雇い主の早苗さんにははっきりと聞いておかなければならない。

「キャンキャン?」

 私は、舞鶴で何をすればいいの?

「舞鶴で、美味しいもの沢山食べようね」

 なんと、私の次の仕事は、料理の試食なのか。これなら解かる。美食家の私にぴったりの仕事だ。

「キャンキャン」

 うん。分かった。頑張るよ。


 この転勤は、俗に言う、ご栄転というものだ。私のこれまでの実績が認められたのです。

 この2年、色々な事がありました。そして、それなりのお付き合いもある。

 ご挨拶をしておかなければならないと思います。


「マルちゃん、散歩に行こう」

 おばあちゃんからのお誘いです。

 丁度良かった。この時間だと、南原さんの散歩に出会うはずです。2匹のチワワとお別れの挨拶ができます。

 散歩の途中にある南原さんの家の前で、予想した通り2匹のチワワも散歩に出てきました。向こうも私に気が付いたようです。

「「キャンキャン」」

 マルちゃん久しぶりだね。

「キャンキャン」

 久しぶり。でも今日はお別れを言いに来たの、わたし転勤になったのよ。

「キャンキャン?」

 え、どこに行くの?

「キャンキャン」

 舞鶴という所。

「キャンキャン」

 知っているよ。そこカニの美味しとこだね。寒ブリも美味しいのよ」

 持つべきものは友達です。それもセレブの友達、次のお仕事に役に立つ情報を教えてくれる。

「キャンキャン」

 ありがとう。食べるのが楽しみだ。それじゃ、元気でね。

「「キャンキャン」」

 元気で。


 折角できた友達と別れるのは悲しい。

 でも、何かもやもやする。なぜ、カニや寒ブリの味を知っているのか、それは彼女たちが、それらを食べたことがあるかに他ならない。私は知らなかった。

 この世には沢山の美味し物が有るようだ。

 舞鶴に行ったら、早苗さんの言う通り、沢山美味しい物と出会えるかもしれない。そして、またこの地に戻ってきたら、彼女たちの知らない美味しい食べ物を教えてあげよう。


 私は、彼女たちと別れて、散歩を続けます。

「あら、珍しいね。あれは前田さんと太郎じゃないか」

 おばあちゃんの言葉に前方を見ると、前田さんが犬の太郎を連れて散歩しているのが見えます。

「キャンキャン」

 太郎さん、久しぶり、散歩で出会うのは珍しいね。

「ワンワン」

 マルちゃん、久しぶり、今日はこの近くで用事があったので散歩のついでに寄ったのさ。

「キャンキャン」

 太郎さん、実は、私、舞鶴に転勤になりました。今までありがとうございました。

「ワンワン」

 えっ、急だね。こちらこそお世話になりました。舞鶴と言えば、但馬牛が近いね。

「キャンキャン」

 何それ、美味しいの?

「ワンワン」

 えっ、知らないの。凄く美味しいよ。ステーキも美味しけど、僕はすき焼きだな。

 なんと言う事だ。毒蛇を生で食べる太郎さんが、グルメを語るなど青天の霹靂。

 そして、その食材の各種料理を食べたことがあるような口ぶりだ。

 美食家を自負してきた私が、太郎さんが知っていて、私が知らないなどあってはならない。

「ワンワン」

 それから、海軍カレーに舞鶴肉じゃがは、レトルトがあるから、お土産にお願いする。

「・・・キャン」

 ・・・分かりました。


 太郎さんと別れ、私は散歩を続けます。

 直ぐ先は、白山さんの畑がある所です。

 畑では、白山さんが、キュウリを収穫していました。そしてブロック塀にはネコ先生の姿があります。

「キャンキャン」

 ネコ先生、こんにちは。

「ニャー」

 マルちゃん久しぶりだな。

「キャンキャン」

 私、舞鶴に転勤することになりました。

「ニャー」

 焼鯖にサバのみりん干し、舞鶴かまぼこが美味いらしい。正月には帰ってくるのだろ、お土産にたのむ。

「・・・」

 もっと違う言葉が欲しい。お世話になったとか、寂しくなるとか。

「・・・ニャー」

 ああ、世話になったな。元気でな。

「・・・キャン」

 ・・・お世話になりました。先生もお元気で。



 舞鶴に向け出発する朝、正さんは、車に荷物を積み込んでいます。

 近所の人が、集まっています。

 前田さんに太郎、南原さんに2匹のチワワ、白山夫妻、少し離れた所には、ネコ先生も見える。佐藤さんに性格の悪いトラ蔵まで来てくれています。

 みんな、見送りに来てくれた。嬉しい。

「キャンキャン」

 みんな、ありがとう。みんなの事は忘れないよ。

「ワンワン、キャンキャン、ニャー」

 絶対、お土産忘れるなよ。


「・・・」

 お土産の念押しに来ただけか。


 私たちは、沢山の友人たちに見送られて、舞鶴に向け出発しました。


 終わり


 締まらない終わり方でした。取敢えずは、これで終了です。

「マルちゃんのお勤め」読んで下さいました方々に感謝申し上げます。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。