17 白山おじいちゃん退院
私の家庭菜園では、キュウリの収穫が始まりました。毎日3本はできる。そのせいで、キュウリを毎日食べています。その内、河童になると妻は言って怒ります。でも、それは楽しみです。
本日、白山のおじいちゃんは退院してきました。まだ当分の間、畑仕事はできないようです。
それでも、白山のおじいちゃんは、畑に行きます。
小屋の前に、椅子を出してきて座り、畑を眺めています。その直ぐ横には、黒ネコ先生が座っています。二人は以前からの親友のように見えます。
散歩の途中、畑に通りかかったおり、その様子が見えたので声をかけます。
「キャンキャン」
おはようございます。先生。
「ニャー」
おはよう。
驚いた。先生から朝の挨拶が返ってくるのは初めてだ。
先生の足元を見ると、先日一緒に頂いた、ニャンチュールを入れたお皿が置いてあります。
むむむむ、 少し口惜しいです。
あの後、私は、ワンチュールを口にしていません。先生は、あれから何回かワンチュールを食べたのに違いありません。
白山のおじいちゃんが退院していなければ、巡回警備が続き、もしかしたら、また一緒に頂けたかもしれない。白山のおじいちゃん、また入院してくれないかな。
私が身勝手な事を考えていると、私の散歩の相方である、おじいちゃんが、白山のおじいちゃんと話しています。
「白山、退院できて良かったな」
「おう。入院中は、畑の面倒まで見てくれたようで、ありがとな」
「なに、こっちこそ新鮮な野菜をもらえて、ありがとよ。それより、そこのネコだよ。そいつがカラスからこの畑を守った。お前のネコだったのか」
「いや違う。こいつの事は、女房から聞いた。お礼に毎日ニャンチュールをあげている。少しは懐いたのかもしれない」
「キャンキャン」
何と、毎日ニャンチュールを食べていたのか!
私は思わず叫んでしまった。
白山のおじいちゃんは、一瞬、私の鳴き声に驚いたようだが、直ぐに私に話しかけて来た。
「お前は、マルちゃんだったかな。お前の事も女房から聞いている。色々と世話になったな」
白山のおじいちゃんはそう言いながら、お皿とワンチュールを取り出し、私の前に出してくれました。
「キャン」
えっ!
私は何かしたかな?ワンチュールを貰えるほどの事をした?
私が戸惑っていると、おじいちゃんが「頂きなさい」と言ってくれた。
「キャン」
頂きます。
「キャン」
うめー!
あっという間に平らげた。美味しかった。
「マルちゃん、食べたね」
おじいちゃんたちが、私の顔を覗き込む。
えっ、何、どうゆう事?
「マルちゃん、ワンチュールを食べたからには、特別に働いてもらわなければならないよ」
私は思い出した。おじいちゃんは、某国のスパイだ。不当な報酬を握らせ、私をそちら側のスパイとして、働かそうとしている。
そうなると、白山のおじいちゃんも某国のスパイだったのだ。
「キャンキャン」
私に何をやらそうとしている。
「簡単な事だ。散歩のときに、ばあさんと白山智子との会話の内容を教えてもらいたい」
おじいちゃんは、真剣な目で、私を見つめている。おじいちゃんたちは、おばあちゃんたちを疑っている。
私は知っている。おじいちゃんとおばあちゃんは、別の組織のスパイだった。そして今気が付いた、白山夫婦も同じだ。
「なるほど、分かった。だが、報酬がワンチュール1個では少ない、毎日2個要求する」
「よし分かった。交渉成立だな。同志よ、これからはよろしく」
私は、いつの間にか、おじいちゃんと普通に話している。なぜ?
「マルちゃん、起きなさい。散歩の続き始めるよ」
おばあちゃんが私を揺すっています。私はキョロキョロ周りを見ます。
どうやら、散歩の途中、例の話し好きのおばさんと出会い、おばあちゃんたちのお喋りの間、寝ていたのだ。
あれは、夢だった。
でも、夢で良かった。おじいちゃんとおばあちゃんが、敵国同士のスパイだったら、大変だ。
しかし、毎日ワンチュール2個は、捨てがたい。
早く帰って、夢の続きを見よう。
散歩の帰り道、おばあちゃんは突然思い出したように告げた。
「今日は、白山さんが退院する日よ。マルちゃんにとっては、少し残念でしょ。智子からワンチュール貰えなくなるね」
「・・・・」
毎日ワンチュールを食べられるはずだった夢を食べる前に起こされ、現実でのワンチュールもないと告げられる。
私はおばあちゃんを見上げて思った。
童話に出て来る、意地悪ばあさんとは、こういう顔をしているのだろうと。
昔話に出て来る「舌切り雀」の意地悪おばあさん、どこが悪いのか今一ピンとこない。どう見ても雀の方が悪いと思う。
更に、おじいさんに皷を選ばせる所は、悪意を感じました。もしおじいさんが大きな皷を選らんでいたら、おじいさんは家で化け物に襲われていたはずです。




