15 友情の証
コミニケーションは、難しいと思います。親しい仲でも誤解が生じる事が有ります。
カラスの襲撃の心配はないと分ったが、畑の見回りは継続している。
智子さん一人で家事をやりながら、畑の仕事もやるとなると大変だから、我々が、畑の仕事を手伝っている。
この時期、畑の仕事と言っても大半が収穫だ。
今もおばあちゃんは、畑で野菜の収穫をしている。私は、塀の上の黒ネコ先生とおしゃべり中。
「キャンキャン」
おはよう、先生
黒ネコ先生は、薄眼を開けて、尻尾だけを2回振った。どうやら、それが「おはよう」の意味らしい。
「キャンキャン」
最近カラス見ないですね。
黒ネコ先生の尻尾がまた2回振られた。たぶん、「そうだな」と答えている。
「キャンキャン」
先生は何処に住んでいるのですか。
黒ネコ先生の目線が、小屋の方を指している。なるほど、先生のお住まいは、やはりあの小屋なのだ。
私が少し考えている間に、先生はすっと立ち上がり、小屋の方へ歩いて行く。小屋のドアの前で立ち止まり、こちらを一度振り向き、そして小屋に入って行った。これは、私に入ってこいと言っているようだ。ご馳走でもしてくれるのかな。
私は急いで、小屋に駆け寄る。私がドアから入ろうとした直前。
バタン、ドアが閉められた。
「・・・・」
私は、コミニケーションの難しさを感じた。共同でこの畑を守る者同士として、小さくない絆を感じていたのに、そう思っていたのは私だけだったのでしょうか。
「マルちゃん、あまり先生に吠えてはいけないよ。先生はここを守る同士なのだから、仲良くしてね」
「・・・・」
おばあちゃんは、野菜を採るのに夢中で、私たちの会話を聞いていなかったようだ。
日頃から、新谷家の人たちは私の話を聞かない。解っています。
でも時々寂しく感じます。
「キャンキャンキャン」
おばあちゃん聞いてよ。私は黒ネコ先生と仲良くしたいと思っているんだよ。
「分かっているよ。マルちゃんは、優しい子だよ」
おばあちゃんは、私の頭を優しく撫でます。
「キャン?」
本当に解ってくれているの?
私は、疑いの目をおばあちゃんに向けます。何度も騙されているから、素直に喜べません。でも少しだけ嬉しいと思う気持ちがあります。
私が複雑な気持ちに悩んでいる時。
ギー、静かに小屋のドアが開きます。
そこから、黒ネコ先生が、黒い物体を咥えて出てきました。
そして、その物体を私とおばあちゃんの前に落とします。
それは、間違いなくカラスの死体です。
「ニャー」
一緒に食べよう。
「「ひっ」」
私とおばあちゃんは数歩後ずさりした。
何か言わなければ、折角の黒ネコ先生からのお食事のお誘いだ。多分、取って置きの食材だろう。これは友情の証だ。
「キャンキャンキャンキャン」
とても嬉しいお誘いなのですが、私たちは、今からこの野菜を白山さんに届けなければなりません。
「ニャーオ、ニャー」
そうか、残念だ。ではお土産に持って帰ってくれないか。
うっ、これは断れない。どうしよう。私は助けを求めて、おばあちゃんを見る。
おばあちゃんは、私の目を見て、全てを悟ったようだ。
「黒ニャンコさん、気持ちは嬉しいのだけど、こんな大切の物は受け取れないわ。あなたが守ってくれた野菜だけで十分よ。反対に私からお礼を差し上げなければ申し訳ない」
さすが、おばあちゃんだ。お見事です。
「キャンキャン」
そうだ。今度来るときはお礼の品を持ってくるよ。
「ニャーニャー」
返って気を使わせたようだ。それなら楽しみにしている。
「キャンキャン」
うん、楽しみにしてて、じゃねー
私たちは、畑を後にした。
帰り白山家に立ち寄り、おばあちゃんは一部始終を智子に話した。
「本当なの?ネコが友情の証にカラスの死体をプレゼント?」
智子は信じられないようだ。
「うーん」
おばあちゃんも、智子に言われると、自信がなくなってきている。
「でもね、状況を振り返って見ても。そうとしか考えられないのよ」
「京子が言うのなら、その通りね。分かった」
「えっ、何が分ったの?」
「私が次に、畑に行くときは、ネコ缶が必要だと言う事よ」
「キャンキャン」
ネコ缶より、ニャンチュールが良いと思うよ。
「ねえ、京子、マルちゃんは何て言っているの」
「多分、ネコ缶よりニャンチュールが良いと言っている」
「おー。何故わかる」
「マルちゃんは、ワンチュールが大好きだから。私も同じことを思ったのよ」
おばあちゃん流石です。
「分った、マルちゃん。ナイスアドバイス。ニャンチュール買う時に、マルちゃん用のワンチュールも買っとくね」
「キャンキャン」
智子さん大好きです。
内のネコもニャンチュールが、大好きです。名前を読んでも、無視されるが、「ニャンチュール上げるよ」と言ったら、必ず「ニャー」と返事をします。




