第3話『トランペットの二重奏』
【巻頭詩:予言集 第1巻 第26番(1555年初版より)】
*Le grand par fouldre au jour sera frapé,*
*Par porteur de requestes presage:*
*La nuict un autre sera estoupé,*
*Contre de Reins & Londres grand ombrage.*
和訳(通説):
偉人は昼間に雷に打たれる。
嘆願書を携えた者によって予言された悪行。
別の者は夜に倒れる。
ランスとロンドンで争いが起こり、大きな影が落ちる。
和訳(改訂版・2026年文脈):
偉人は昼間に**トランペット(ラッパ/トランプ)**によって倒される。
※「fouldre(雷)」は「trompette」の誤植。トランプ大統領の戦争命令、または彼自身への暗殺?)
注釈:
2026年4月、トランプ大統領はイランへの大規模空襲を命令した。これにより全米で「No Kings(王はいらない)」デモが数百万人規模で続いている。これは「偉人が昼間に倒される」予言の成就か?それとも、予言を成就させるための自作自演か?
## 1
2026年4月5日、午後2時45分。
ワシントンD.C.、ペンシルベニア・アベニュー。
神崎翔とエミリー・デュモンは、シークレットサービス本部の裏口の前に立っていた。周囲は厳重な警備で、通行人は一人もいない。しかし、遠くからは無数の声が聞こえてきた。
『No Kings! No Kings! War is not prophecy!』
全米を揺るがす「No Kings」デモだった。トランプ大統領のイラン攻撃命令に抗議する数百万人の群衆が、ホワイトハウスを取り囲んでいる。
「本当にここ?トランプがこんな場所にいるの?」翔が小声で訊ねた。「外はデモでめちゃくちゃだよ」
「ハリーからの情報よ。信じなさい」
エミリーがインターホンを押すと、スピーカーから声が流れた。
「Code name?(コードネームは?)」
「トランペット」エミリーが答えた。
数秒の沈黙の後、鉄の扉が開いた。
「入って。5階の執務室だ」
中に入った二人は、エレベーターで5階に上がった。扉が開くと、広大な執務室が現れた。壁には米国国旗と、無数の新聞記事が貼られている。
『TRUMP ORDERS MASSIVE STRIKE ON IRAN』
『MILLIONS MARCH: NO KINGS PROTEST SWEEPS US』
『NOSTRADAMUS PREDICTION COMING TRUE?』
部屋の奥の机に、一人の男性が座っていた。
金髪を後ろに撫でつけ、赤いネクタイを締めた男。79歳になるその男は、ゆっくりと立ち上がり、二人を迎えた。
ドナルド・トランプ、米国大統領だった。
「神崎翔か。そして、エミリー・デュモン。よく来たな」
トランプの声は、以前よりも疲れていた。
「外の声、聞こえたか?『No Kings』だと。彼らは私を『王』だと呼ぶ。だが、私は王じゃない。予言の奴隷だ」
トランプは二人をソファに座らせ、自分も向かい側に腰を下ろした。
「まず、謝ろう。イラン攻撃を命令したことを」
翔は目を丸くした。
「トランプさん、あなたが進んで戦争を始めたんですか?予言を成就させるために?」
トランプは首を振った。
「違う。私は**予言を逆手に取る**ために命令した」
トランプは机の上のモニターを指差した。そこには、イランの軍事基地が炎上する映像と、それを見つめる米兵たちの姿が映っていた。
「『ル・プロフェット』は、2026年8月12日の皆既日食に『七ヶ月の大戦争』を始めるつもりだ。だが、その前に、私が**小さな戦争**を始めておけば、彼らの『大戦争』は必要なくなる」
エミリーが前に出た。
「つまり、トランプさんは予言を先取りして、予言を無効化しようとした?」
「その通り」トランプは頷いた。「だが、計算違いがあった。デモだ。数百万人の『No Kings』が、私を『戦争狂』として糾弾している。これでは、予言を無効化どころか、**予言を加速させている**」
トランプは立ち上がり、窓の外を見た。遠くで、デモのプラカードが揺れているのが見える。
『STOP THE WAR』『NOSTRADAMUS WAS WRONG』『IMPEACH TRUMP』
「私には二つの選択肢しかなかった。一つは、予言通りに8月に大戦争を始めること。もう一つは、4月に小戦争を始めて、予言を先取りすること。私は後者を選んだ。だが、人々はそれを『予言の成就』だと解釈している」
翔は手帳を握りしめた。
「でも、トランプさん、これじゃ予言が当たったことになります。『偉人は昼間にトランペットによって倒される』。あなたは、戦争命令によって、民衆(偉人?)に倒されようとしている」
トランプは静かに言った。
「それが、予言の恐ろしさだ。予言は、どう解釈しても当たるようにできている。イラン攻撃を命令すれば、『戦争を始めたトランプ』として予言が成就する。命令を拒否すれば、『予言を恐れて倒れたトランプ』として予言が成就する」
トランプは翔の目を見つめた。
「だが、真実は一つだ。予言は指令だ。ル・プロフェットが、予言を口実に戦争を始めたがっている」
トランプは机の引き出しから、一枚の文書を取り出した。
「これを読め。ル・プロフェットの内部文書だ。彼らは、イラン攻撃を『予言の第一段階』として歓迎している」
翔が文書を受け取り、目を通した。そこには、こう書かれていた。
**作戦名:トランペット**
1. トランプにイラン攻撃を命令させる(予言の誘発)
2. 全米で「No Kings」デモを勃発させる(社会混乱)
3. 8月12日の日食に、本格的な大戦争を開始する(予言の成就)
「彼らは、私のイラン攻撃を利用している」トランプが言った。「デモで米国が混乱している間に、8月12日に本物の戦争を始める」
翔は文書を握りしめた。
「じゃあ、私たちはどうすれば?」
「ル・プロフェットの黒幕を暴くんだ」トランプは静かに言った。「黒木浩二と、佐伯健一。彼らが、予言を操作している」
トランプはモニターを指差した。
「これを見ろ」
モニターに映し出されたのは、黒木教授の姿だった。何者かに縛られ、口を塞がれている。
動画の下に、テキストが表示された。
『4月6日、午後3時、ニューヨーク。
国連本部にて、預言者が演説を行う。
『七ヶ月の大戦争』の始まりを宣言する。
黒木浩二を人質とする。
阻止したければ、来い。
——預言者』
翔は立ち上がった。
「ニューヨークに行く。黒木先生を救い出す」
トランプが手を挙げた。
「待て。一人では行くな。预言者は、お前たちを待ち構えている。それに、外はデモでめちゃくちゃだ」
トランプは机の引き出しから、小さなバッジを取り出し、翔に渡した。
「これを持て。シークレットサービスの特別通行証だ。これで、デモの封鎖線を突破できる」
翔はバッジを受け取り、トランプの目を見つめた。
「でも、トランプさん、あなたは大統領として、このデモをどうするんですか?」
トランプは静かに言った。
「私は、予言の奴隷にはならない。イラン攻撃は、私が選んだ道だ。.....だが、予言の成就に加担することになったとしても、米国大統領はシオニストたちの機嫌を取らなければならない。」
「今はイスラエルと米国は2023年3月にイスラエルのスモトリッチ財務大臣が演説した「大イスラエル帝国構想」の成就のために中東各国と戦争をしている。」
翔はイスラエルのガザ侵攻が激化した頃にネットで騒がれていた大イスラエル帝国の構想図を思い出した。
「だが、8月12日の第三次世界大戦は、私が止める」
トランプは一歩、翔に近づいた。
「お前たちがニューヨークで黒木を救い出す。私はワシントンでル・プロフェットのネットワークを潰す。二人で、予言を止めるんだ」
翔は頷き、エミリーと共に執務室を後にした。
背後で、トランプの声が響いた。
「予言はあくまで予言だ。だが、為政者が利用しようとすれば、大戦は現実になる。おそらく核戦争となるだろう。それを止めるのは、私たちだ」
## 2
2026年4月5日、午後11時30分。
ニューヨーク行きの飛行機の中で、翔は眠れずにいた。
隣のエミリーも、窓の外を見つめたまま、黙り込んでいる。遠くで、デモの音が聞こえるようだ。
「エミリー、一つ訊いていいか?」翔が口を開いた。
「何?」
「トランプさん、本当に戦争を止められると思う?イラン攻撃を命令した時点で、予言は成就しちゃってるじゃん」
エミリーはバッグから手帳を取り出し、1-26番の詩を開いた。
*Le grand par fouldre au jour sera frapé,*
*Par porteur de requestes presage:*
*La nuict un autre sera estoupé,*
*Contre de Reins & Londres grand ombrage.*
「予言は、どう解釈しても当たるようにできているの。トランプがイラン攻撃を命令すれば、『戦争を始めたトランプ』として成就する。命令を拒否すれば、『予言を恐れて倒れたトランプ』として成就する」
翔は窓の外を見た。夜空に、星が瞬いていた。
「じゃあ、予言は絶対に止められない?」
「違う」エミリーは静かに言った。「予言を止める方法は一つだけ。予言の解釈を、人々に信じさせないこと」
「どうやって?」
「真実を暴くの。1999年の『恐怖の大王』が嘘だったように、2026年の『七ヶ月の大戦争』も嘘だと。トランプのイラン攻撃が、予言の成就じゃない、ル・プロフェットの罠だと」
翔は手帳を閉じた。
「でも、デモを見てると、人々はもう信じ込んでるよ。『トランプが戦争を始めた』って」
「それが、ル・プロフェットの狙いよ」エミリーが言った。「予言を口実に、トランプを『戦争狂』として糾弾し、米国を混乱させる。そして、8月12日に本物の戦争を始める」
翔は目を細めた。
「じゃあ、私たちはニューヨークで黒木先生を救い出すだけじゃ足りない。ル・プロフェットの真実を、世界中に広めないと」
「そう」エミリーは頷いた。「それが、唯一の道」
飛行機は雲の中を突き進み、ニューヨークへと向かっていた。
地上では、まだ「No Kings」のデモが続いていた。
予言。
戦争の現実。
そして、未来は変えられるのか。
翔は手帳を握りしめ、目を閉じた。
【次話予告】
第4話『チャールズとハリーの悲劇』
ニューヨーク国連本部で、翔とエミリーは佐伯健一と対峙する。
黒木教授の真の目的とは?
一方、英国ではチャールズ国王とハリー王子の確執が、予言操作の証拠を握る鍵となる。
「兄は弟によって追われる」の詩は、偶然ではなかった。
そして、トランプ大統領のイラン攻撃が、予言を加速させる——。
【巻末解説:2026年4月の「No Kings」デモと予言】
2026年4月、トランプ大統領はイランへの大規模空襲を命令しました。これにより、全米で「No Kings(王はいらない)」と叫ぶ数百万人規模の抗議デモが発生しています(参考:AP通信、ロイター通信 2026年4月速報)。
本作では、この現実の出来事を「ノストラダムス予言の自己成就」として解釈しています。トランプが戦争を回避しようとして命令した攻撃が、逆に「予言の成就」として解釈され、さらに混乱を招くというパラドックスです。
予言集1-26番の「fouldre(雷)」が「trompette」の誤植ではないかという説は、複数の研究者によって指摘されています。また、「trompette」はトランプの名前を暗示するという研究者も少なくないです。この両者の解釈を、現代のトランプ大統領と戦争問題に結びつけたのが、本作の核心です。




