第8話:忍者来訪!狙われた醤油の樽
味噌汁外交で隣領との関係は改善。
村人たちは今日も「みそしる〜♪」と歌いながら平和な日々を送っていた。
……だが、平和は長くは続かなかった。
その夜。
月明かりの下、黒装束の影が屋敷の屋根を駆け抜ける。
「目標……“妙汁の樽”なり」
「奪取せよ、殿の命より重し」
忍者である。
―――
俺はというと、その頃布団の中で考え込んでいた。
「……醤油、もっと仕込むには……あれがいるな……桶職人……」
すると、ふと気配を感じた。
現代人補正か、戦国オタク補正か……いや、赤ん坊にしては鋭すぎる察知能力。
「……だれ?」
障子の影に、人影。
すーっと音もなく忍者が現れた!
―――
「フフフ……おとなしくせよ、御子息殿」
「……だれ?」
「我ら、黒風衆。妙汁を奪いに参った」
醤油狙い!?
おいおい、刀じゃなくて調味料狙いって……いや、確かに価値あるけど!
俺はとっさに叫んだ。
「みそしるーっ!」
―――
ドタドタドタ!
村人たちが駆け込んでくる。
「殿が叫んだぞ!」「非常事態だ!」
しかも、晩飯の残りの味噌汁を鍋ごと抱えて。
忍者が刀を構えた、その瞬間――
「えいやっ!」
おばちゃんが鍋をひっくり返した。
熱々の味噌汁が忍者に直撃!
「ぐわあああああ!?」
忍者はゴロゴロ転がり、顔を真っ赤にして飛び退いた。
「くっ……これが妙汁の力……!」
「違う、ただの味噌汁だ!」
慌てて突っ込む村人たち。
―――
結局、忍者は味噌汁まみれで撤退した。
村人たちは息をつき、残った鍋を囲んで再び味噌汁を啜る。
「殿、やっぱり味噌汁は強ぇな」
「鉄砲より効くんじゃないか?」
俺は胸を張った。
「これぞ……みそしる・じゅつ!」
父上がまた額を押さえたのは聞かなかったことにする。
布武丸、3歳。
味噌汁で忍者を退けた冬の出来事である。