第33話:殿、牧畜外交でケーキを掲げます
禁忌のホールケーキが宮廷を制した翌月。
だが問題がひとつ。
「殿!牛乳が足りません!」
「ケーキをもう一度食べたいという貴族からの注文が山ほど……!」
「バターが高すぎて台所が火の車です!」
……そう。乳製品は生産が追いつかない。
牛もヤギも数が少なく、保存も難しい。
父上「布武丸、もはや乳の供給源を確保せねばならん」
俺は拳を握った。
「……ぼくちく!がいこう!てんかふぶ!」
―――
数日後。
俺たちは北の草原地帯に向かった。
そこには遊牧を営む牧畜国家があり、無数の牛とヤギを飼っているという。
だが――
牧畜王「小僧よ、乳は我らの命。そう易々とは渡さぬ」
髭もじゃの大男が槍を持ち、にらみつけてくる。
村人たちが震え上がる中――
俺は静かに……ホールケーキを掲げた。
―――
牧畜王「……なんだその白き山は?」
俺「けーき!にゅうせいひん!あまい!」
王は警戒しながらも一口。
「……ッ!? な、なんだこれは……! 甘い!ふわふわだ!」
家臣たちも次々に食らい――
「うまい! 酒にも合う!」
「こんな菓子は見たことがない!」
―――
数分後。
牧畜王は両腕を広げ、笑い声を上げた。
「布武丸よ! このケーキこそ、我ら牧畜民の乳の誉れ! そなたと取引しよう! 乳もバターもチーズも供給してやる!」
父上「な、なんと……!」
重臣「乳製品の大量確保……これでケーキ量産が可能に!」
俺は胸を張った。
「けーき!ぼくちく!てんかふぶ!」
牧畜王&村人「「「おおおおぉぉぉ!!!」」」
布武丸、10歳。
牧畜国家とケーキ外交を結び、乳製品供給を手に入れた夏の出来事である。




