第20話:殿、情報はゴロゴロより煮物のほうが役に立ちます
味噌汁で寝返った刺客たちは、いつの間にか布武丸家の“家臣団”になっていた。
黒装束のまま畑を耕し、見張り台に立ち、夜は鍋を囲む。
……完全に“味噌汁忍軍”である。
だが問題がひとつ。
「殿!隣領の倉庫の壁が崩れてました!」
「殿!城下町で猫が三匹生まれました!」
「殿!敵領の奥方が味噌汁を二杯おかわりしました!」
……情報がゴロゴロ入りすぎる。
―――
俺「……いらねぇ」
父上「布武丸、これは情報過多だな」
重臣「いやしかし、細かすぎるのも困りますな……」
結局、必要なのは――領主本人の“好み”だ。
腹を掴めば心を掴む。
それはすでに味噌汁外交で証明済みだ。
「……おりょうり、でぃぷろましー!」
―――
翌週、隣領との会談が開かれることになった。
例のごとく、険悪な空気。
「布武丸め、また妙な策略を……」と敵領の重臣が睨みをきかせている。
だが俺には味噌汁忍軍からの情報があった。
「領主殿……魚料理が好物。特に塩焼き」
「さらに、甘いものに目がない」
これだ。
―――
会談の席。
まずは定番の味噌汁。
続いて、香ばしく焼き上げた川魚に醤油とオリーブ油を塗り……
「どうぞ!」
領主「……ッ!? こ、香ばしい……うまい!」
さらにデザートとして、甘味噌を使った団子を差し出す。
「これは……甘い!? しかも香り高い……!」
領主は目を輝かせ、一気に三本食べきった。
―――
結果。
「布武丸殿……貴殿の提案、受け入れよう!」
「街道の関所を開き、交易を拡大する!」
一同驚愕。
父上「……布武丸、お前……」
重臣「戦でもなく、金でもなく……胃袋で領主を屈服させたか……」
俺は胸を張り、堂々と宣言した。
「おりょうり!こうしょう!てんかふぶ!」
村人たち「「「おおおおぉぉぉ!!!」」」
布武丸、6歳。
家臣団の余計な情報を整理し、料理外交で領主を従わせた冬の出来事である。




