第15話:殿、道を繋げば天下も繋がる
街道を整備して数か月。
村は物資と人で溢れ、まるで小さな都のような賑わいを見せていた。
「殿、この道はすげぇぞ!」
「旅人が“この村を経由すれば安心だ”って評判を流してる!」
「味噌と醤油も飛ぶように売れております!」
村人は大喜び。
だが俺の目は、もっと遠くを見ていた。
「……みち、つなげば……くに、つながる!」
そう――街道外交。
道を繋げば交易が生まれ、争いよりも利益を選ぶ。
それこそ俺の“天下布武”への布石だ。
―――
父上もその意志を汲み取り、隣領の領主を再び呼び寄せた。
例の“味噌汁外交”以来、二度目の会談である。
「さて布武丸……今度は何を用意するつもりだ?」
「……どうろ!」
父上はため息をついた。
(味噌汁の次は道路か……)
―――
会談当日。
隣領の領主は再び鎧姿でやってきた。
「また食い物で籠絡するつもりか?」と鼻で笑う。
俺は堂々と、棒きれで地面に道を描いた。
「ここ!つなぐ!こっち!はし!こっち!みせ!」
領主は目を細めた。
「……道を繋ぐ?なぜだ?」
父上が代わりに説明する。
「布武丸はこう申しております。道を繋げば、互いの領が栄える、と」
―――
そして用意しておいた試作品――“旅人セット”を披露した。
それは、醤油で味付けした干し肉、味噌玉、そして街道沿いの休憩所の絵図。
「旅人は食と休みに困らず、荷も安全に届く。商人は利益を得、領民は豊かになる。……戦など無用になるでしょう」
俺の稚拙な言葉を父上が補って伝えると――
隣領の領主は大きくうなった。
「……妙な子供だと思っていたが。
なるほど、道を繋げば……戦より利があるか」
―――
そして数日後。
両領の間に大規模な街道整備が始まった。
荷車が行き交い、宿場ができ、商人の往来が増える。
やがてそれは“戦国インフラ革命”と呼ばれる一大事業となった。
「殿、すげぇ!味噌汁の次は道で天下獲りだ!」
「もう“妙汁の御子息”じゃなく、“道路の御子息”って呼ぶべきじゃないか?」
……いや、どっちも微妙な肩書きだろ。
俺は空を見上げて叫んだ。
「どうろ!てんかふぶ!」
布武丸、4歳。
街道外交で隣領と手を結び、“道が天下を繋ぐ”ことを証明した秋の出来事である。




