第13話:殿、地質学は戦に勝る
算術で“呪文の御子息”と呼ばれるようになった俺。
だが、本当の本領はそこじゃない。
専門学校で学んだ保存修復科。
文化財や遺跡の調査で必須だった――地質学。
そう、俺はオタク気質ゆえに“地面オタク”でもあったのだ。
―――
ある日、父上がぼやいた。
「布武丸……近頃、山賊どもが多い。村の守りを固めねばならん」
村人も不安そうに頷いている。
確かに、俺の目から見ても村は丸裸。
田んぼの位置はバラバラ。
家は川沿いに密集してて、水害のリスクも大。
さらに――丘の上から見下ろす形で村が丸見え。
「おい、これ戦略的に致命的じゃん……」
―――
俺は棒きれを手に、地面に地図を描き始めた。
「ここ、たに!てき、おそいやすい!」
「こっち、かわ!みずあふれる!」
「やまのかげ、みはり、たてる!」
村人たちはポカーン。
だが父上は真剣に耳を傾けていた。
「布武丸……お前、なぜそこまで分かる?」
「がくじゅつ!れきし!ちしき!」
言葉がうまく出ないが、要は保存修復と歴史オタク知識の融合である。
―――
その日から、村の大工や農民たちは総出で“地形改造”を開始した。
丘の上に見張り台を設置。
谷の入り口に柵を築き。
田んぼの畝を整備して排水路を作り直す。
「殿の言う通りにしたら、田が水害にやられなくなったぞ!」
「見張り台からは敵が丸見えだ!」
「川沿いの家を移したら、夏も涼しくて快適だ!」
次々と成果が出て、村人は大歓声。
―――
そして数週間後――山賊襲撃再び。
「行けぇぇ!」と谷を抜けようとした賊たちは、
柵と落石トラップに阻まれて大混乱。
「うわああ!?」
「なぜここに石が!?罠か!?」
その上、見張り台からの早期警戒で村人たちは万全の迎撃態勢。
あっという間に山賊は退散した。
―――
戦後。
父上は俺を見下ろし、誇らしげに言った。
「布武丸……民を守るは剣ではなく、知だな」
俺は味噌汁を啜りながら、にやりと笑った。
「ちり……ちしつ……ちしき……てんかふぶ!」
村人たち「「「おおおおぉぉぉ!!!」」」
布武丸、4歳。
地質学で要塞を築き、民と村を守った春の出来事である。




