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世界が滅びると聞いたとき、「ようやく終わるのか」と安心したのを覚えている。
ある日、州都から使者とやらが訪れ、予言がどうとか報酬がどうとか言って、この村に勇者がいると宣った。
そのとき俺は、額から血を流し、地面に倒れ込んでいた。
村人たちは、お辞儀の代わりに石を投げ、乾杯の代わりに俺を取り囲んで暴力を振るった。
父は強くあれと言いながら床に落ちた飯を俺に食わせ、母は優しくあれと言いながら床を舐める俺をただ見ていた。
そんな自分に勇者の適性があると言われたときは、心底どうでもよかった。
その夜、村を挙げた祝宴が開かれ、翌朝早く、使者と俺は村を発った。
州都に着き、王様とやらに会った俺は、ただ言われたままに剣術を習い、魔法を覚え、仲間を集めた。
適性があると言われていただけに、どれも期待を裏切るどころか、誰よりもうまくいった。
剣術の師範からは、まるで砂漠が水を飲み干すようだと言われたが、砂漠が何か分からなかった。
訓練を終えた俺は、仲間たちと旅をして、279の夜を越えた。
今は小高い丘の上から魔王城を眺めている。城の頂上にある塔がもう少しで月に刺さりそうだ。
遠くから、俺を呼ぶ「エイト」という声が聞こえる。
「また一人でこんなところにいて、危ないですよ」




