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聖女に愛された侯爵令嬢は愛を貫く決意をする  作者: 樋口 涼
皆の考え

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2

「で?」


アスールが勇の側に居るのを確認し、マホンに近付くとロホが本題は何かと聞いた。

聖女の腕の中のセピアは、もしかしたらもうそろそろ意識を飛ばしているかも知れないと思う。


「セピアは生きてる?」

「い…生きてるぅ…」


か弱い声が、聖女の胸元から聞こえて来た。

一応、セピアもセピアで抗う気はあるらしく、聖女の腕をぽふぽふと叩いている。

それが、ただ聖女を喜ばせているだけに過ぎない事を、本人は気が付いていない様だった。


セピアが動く度に、聖女の口角が上がり頬をセピアの頭にすり寄りつけている。

城下町でみた光景に似ている。とロホは思うが、あれは人間ではなく猫だったから可愛いモノだった。


「で、こんなに集まって…セピアを迎えに来ただけじゃなさそうね」

「あぁ。王が会議の間に集まる様に…との仰せだ」


オールはセピアを離さない聖女に目を向け、アスールと勇にも手招きをした。


「セピア嬢は…もう部屋で休みたまえ…それ以外は…」

「まって。セピアもよ」


オールの言葉を遮り、聖女が断言する。


「王は聖人達と私、聖女…そして…」


オールは勇を何と呼んで良いのかと、躊躇する。

ロホの様に勇と言うのも憚られ、セピアの様に『さん』付けで呼ぶのは王族としての格が邪魔をする。

かと言って、アスールの様に『ちゃん』もおかしいし、聖女の様に『あの子』だのと、名を呼ぶのを頑なに拒否する訳にも行かない。


「勇と呼んでいただいて大丈夫ですよ?」


屈託のない顔で勇が言う。

しかし、そう言う問題ではない。


「この子を当分の間、セピアに任せたのは王じゃない」


聖女がやっとセピアを離し、オールに向き合うと不機嫌な顔を隠そうともせずに、胸の前で腕組みし睨みつけた。


「この子の事なんだから、セピアにも関係あるわ」

「…では…疲れていなかったら…一緒に来たまえ…」


聖女に言われ渋々と言った感じのオールは、先頭に立ち歩いて行く。

その横にいつの間にか勇が並んだ。

その後ろにマホンが歩き、セピアと聖女が続く。


切なそうな視線をオールに向けながら、ため息を吐くセピアを心配そうに見つめ、アスールの横を歩くのはロホだった。

オールとマホンの側に居た他の護衛達は、裏門に残り見張りを続けた。


オールがノックをし、挨拶を済ませると扉が開いた。

中からは「入れ」と声がする。

王の声だけだ。


「失礼します」


口々に言い、部屋に入ると各自いつも通りの席に座る。

セピアと勇は昨日と同じく立って居ようと思ったが、王に着席を促され、二人横並びに座った。


「皆、揃ったな」


王が確認する。

ブランが居ないとセピアは言いかけたが、王の言葉に「はい」と答えたのはブランだった。

遅れてふわりと風が室内を流れ、ブランが自席の横に立つ。


「急ですまんな」


緊急の招集なのだろうが、王はいつも通りのキッチリとした身なりの上、夜も更け始めたにも関わらず、疲れも眠気も伴っては居なかった。


「いえ、大丈夫です」


少し衣服を正し、ブランが答えると皆の顔を見回した。

セピアと勇が居る事で、ブランも勇に関する事だと理解した様だった。


「立花勇に対しての…教皇の事だ」


召喚魔法に反対していた教皇の使いが来城した事は、皆知って居た。

王が追い返した後、教会に出向いていた聖女に教皇が要請した事。


「教皇が立花勇、君に会いたいと」

「私に?ですか?」

「あぁ…」


何故?と不思議そうにする勇に、聖女が視線を流す。

そして、王からの言葉を引き継いで教皇の要望を皆に伝えた。


「教皇は自分の息子と貴女を結婚させたい。と言っていたわ」

「え?」


誰と誰の声か分からない、困惑の声が室内に響いた。


「でも、私は…貴女を元の世界に帰したいと思っている」


聖女はハッキリと確固たる意志である。と、勇に言い放った。

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