嘘つき
「唯、春翔君のこと気になってるらしいよ。」
嘘は言っていない。なにも。咄嗟に出たのがその言葉だっただけだ。
「え?まじ?」
あからさまに嬉しそうな顔をする春翔。
これで春翔が唯にアプローチすれば、少しは唯からの攻撃も減るだろうし、俺も吹っ切れることができる。
そうだ。これが正解だ。一瞬だけ唯の、俺を見る狂気的な目を思い出すが、すぐに振り払う。
「実は俺も唯のこと気になっててさぁ!なんか最近反応いいし、ワンチャンあると思ってたんだよ!」
「告白、しちゃえば?」
狼狽える春翔。
「おま、それはちょっと急すぎね?もっと自然にこう..さぁ!」
「ハッキリ言ってくれる人の方が唯は好きだと思うな。もちろん流れでもいいと思うけどね」
「...まじ?」
うーんと真剣に告白を検討し始める春翔。
ハッキリ言ってくれる人が好きなんて知らない。でも、早く区切りをつけたい。そういう悪い気持ちが、功を成してしまった。
「考えてみたらめっちゃ脈アリだわ。俺行くわ。今日告白する!」
「そっか。頑張って」
「おう!ありがとな!」
いいやつなんだろうな。俺なんかと違って。きっと成功するんだろう。悲しいけど、
それでいい。
それが自分の本意なんだと、本音なんだと、自分に言い聞かせた。
今俺が立っている廊下の少し先、曲がり角から俺たちを覗き見していた人影がそっと消えた。
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「わざわざ呼び出してごめんな。あのさ..分かってると思うんだけど、俺..唯のこと..」
「..ごめんね」
「え.....?」
目の前で春翔の顔が凍りつく。
当たり前だ。
彼との関係は私が恋人という関係にはならないと凪斗に言うための道具でしかない
私が春翔と付き合い始めたら、凪斗は私を諦めて、幼馴染の関係に戻れるかもって思ってた。
でも凪斗の気持ちは思っているよりも深くて、予想以上に彼を傷つけてしまった。
その気持ちの深さが、私と同じベクトルに向いていたらよかったのに。
なぜ誰とでも成り立つような、浅い関係を望むんだろう。私と凪斗は2人で一つで、ありのままの姿のまま、ずっと一緒に、ずっと一緒にいるべきなのに。
「唯...冗談..だよな?」
「なんとか言ってくれよ」
春翔の掠れ声で、現実に引き戻される。
忘れていた。
「嘘じゃないよ。友達としては好きだから、ごめんね」
そう言い、彼に背を向けて歩き出す。
「なんだよぉ...おまえの幼馴染....嘘つきじゃねえか」
幼馴染?
..凪斗
「脈アリだから告白しろって言ったくせに...
んだよぉ」
私は足の進める向きを変え、凪斗の元へ向かった。
凪斗は、自分の席膝をつき、うたた寝をしていた。
なんだ、こいつ。
彼の寝顔に近づき、囁く。
「今の私なら振るって知っててやったんでしょ。あんたも大概だね」
その時、凪斗が目を開いた。




