決別
「ねえ凪斗」
「返事して凪斗」
「目合わせてよ凪斗」
あの日以来、何度無視しても唯は話しかけてくることをやめず、それどころか日が経つごとにそれは悪化していた。
唯が隣のクラスの男子といい感じだと言った時、初めて恋を自覚した。そして、その瞬間その恋は終わった。
唯は、俺と恋人よりもっと深いところで繋がっていたいと、そして誰のことも好きになるなと言ってきた。唯が、唯でいるために。
幼い頃からずっと一緒に育ってきた、唯の一部となっている俺が変わるのが許せないんだろう。言っていることは分かる。でも無理だ。好きになってしまった。変わらない関係なんてもう無理なんだ。
また、唯の目が俺を捉える。足が、こっちへ動いてくる。
言うんだ。
「ねぇ凪..」
「もう話しかけないで欲しい。お願いだから」
「勝手に好きになったくせに。それに言ったでしょ?凪斗が私無しで生きられるわけない。はやくいじけんのやめた方がいいよ」
「別に生きられなくたっていいよ。好きになってごめん。」
「は..?」
席を立つ。とにかく、ここではないどこかへ逃げないと。
「逃げんなっつってんじゃん!」
シャツの袖を掴んだ唯の手を振り解く。
「2度と喋らないから」
「ねえ本気?」
返事はせず教室を出る。また目が熱くなってくる。本気なんだ。そう自分に言い聞かせる。
もう、唯とは喋らない。
スマホの通知音が絶え間なく鳴り始める。既読はつけず、唯のアカウントに飛ぶ。
ブロック。歩き続けているからなのか、手が酷くぶれる。視界も良くない。どこからともなく降ってきた雨が操作を妨げる。
「あぁ..」
学校の一番端。体育館の裏扉に寄りかかるように座る。
唯のアカウントとトーク履歴は俺の端末から消滅し、通知は鳴り止んだ。
最後に見えた通知は、私たちはずっと一緒。
「ふざけんなぁ..」
自分の体に顔を埋める。また、足音が聞こえてくる。逃げなきゃ。
がむしゃらに足を動かす。廊下を抜け、階段を駆け上がり、誰かと肩がぶつかった。
「いって」
「あ、ごめん」
「あれ、君あれじゃん。唯の幼馴染でしょ」
端正な顔立ちをした彼は、唯がいい感じと言っていた、蒼井春翔その人だった。
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