告白
「振ったよ。あいつのこと」
寝起き早々言われた言葉がそれだ。
「だから、私のこと見てよ」
唯が俺の髪を触りながら言う。
「...嫌だよ」
「どうして?」
「言っただろ。もう前みたいには無理なんだよ」
唯が、寂しそうな目をする。
恋人より深く繋がっていたいというあの言葉。それが唯の本音なんだと実感する。
..もし唯の気持ちが、自分と同じベクトルに向いていたなら。
駄目だ、また泣いてしまう。
「..泣かないでよ」
唯が、俺の頬を伝った涙を袖で拭き取る。
唯の顔を見ると、彼女も泣いていた。
「分からないの....私..」
唯の顔に手を伸ばす。とめどなく流れる涙に袖がすぐびしょ濡れになる。
「一緒がいいの。ずっと..」
「...うん」
「あいつといい感じだって言ったのは、私と凪斗は恋人じゃ駄目って言おうとしたからで..」
「..分かってる」
2人で、顔が触れ合うような距離で、涙を拭いあう。似たようなことが、沢山あった気がする。
俺が泣いて、唯も泣いて。
唯のことを好きになってしまう前もあったし、多分、後も何度かあった。
いつから唯を好きになったのか分からない。でも唯は、分かってるのかもしれない。
唯は、唯を好きになってしまった俺を、好きじゃ無いんだ。
俺も、気づかないふりをしてた。俺だってこんな自分、好きじゃ無い。でももう、それが今の自分なんだ。
こうやって変わっていくんだ。全部。それが普通なんだ。
「私、凪斗のままでいて欲しかった。ずっと同じ、凪斗のまま」
「うん」
「2人で1つだったのが、段々ただの2人になっていくのが..怖かった」
後ほんの少し首の角度を変えれば、唇が当たるくらいの距離、唯が喋るたび唯の温度を感じる。
「振っちゃえば、全部言っちゃえば昔の、ありのままの凪斗に戻るって、馬鹿だよね」
また一筋、涙が流れる。
「今の凪斗が、ありのままの凪斗なんだよね。」
「唯...」
「ねえ、凪斗。」
唯がか細い声で言う。
「私を好きな凪斗と、一緒にいてみたい。真正面から受け止めてみたい。」
唯は俺の目の、どこまでも奥を見つめながら言った。
「...」
「付き合って」
分からない。何を言っているのか。
どういう意図があるんだろう。
せっかく、全て終わると思ったのに。
それでいいのかよ。唯。
どうせ別れる。どうせ...
でも....
「..うん」
馬鹿だ。




