第119話 次は何をしようか
湖宮の扉をコンコンと叩く音がした。
「どうぞ。」
扉が開き、双竜兄妹のテンマとツバキ、それにリョウコが部屋へと入ってきた。タタラは喜びの声を上げ、席を立ち、労いの言葉をかけた後、3人にルルを紹介した。
ツバキは九尾の狐の玉藻前を見て、目を見開き、釘付けになった。ツバキの視線に気付いた玉藻前は9つの尻尾をひらひらさせた。
さらに、茶々丸が玉藻前のひらひらさせた尻尾に反応し、玉藻前が乗っている椅子に自分も跳び乗って、身体の側面を密着させ、2本の尻尾を玉藻前の9本の尻尾に合わせてひらひらさせた。
それを見たツバキは彫像のように固まった。タタラとテンマはツバキの様子の変化に気付かないふりをした。
そこへ、芭蕉と書記官のピアが急須に入れたお茶と湯呑みを盆に載せて、湖宮に入ってきた。芭蕉とピアもそのまま席についた。タタラ、ルル、テンマ、リョウコはお茶をすすった。
「タタラ王にご相談がございます。」
芭蕉の発言にタタラが答えた。
「どうしました?」
「実は、他国の者より、湖都ユマで開業したいと申し出がございました。」
「へぇ。どなたですか?」
「赤神ナナセ様です。」
リョウコが口に含んでいたお茶を全て吹き出した。
「リョウコさん、いかがされましたか?」
「ごほっ、ごほっ。いえ、あの、詰まってしまっただけです。申し訳ない。」
ピアが布巾を手渡し、リョウコは礼を述べた。
「それって、アカガミ国からの正式な依頼なの?」
「いいえ。それを聴くと、あたふたした様子でしたので、おそらくは赤神ナナセ様の独断だと思います。」
「ふうん。諜報活動をするにしては堂々としすぎているし、かと言って、アカガミ国からの正式な依頼じゃないし、いったい何がしたいのかな?」
「申し訳ございませんが、よく分かりません。」
「まぁ、アカガミ国と揉めたくないし、断ろうか。」
タタラはまたお茶をすすり、ゆっくりと息を吐いた。
「国営のお店を開こうと考えていてさ、どうしてもって言うなら、その店の店員さんをやってもらってもいいけどね。」
「どのようなお店でしょうか。」
タタラはにやり笑みを見せた。
「ふふふふふ。店名はマドリーナ堂。お庭番衆の絵柄の入った生活用品やお人形さんを売るお店さ。交通整備に力を入れてるし、王国内の往来が活発になれば湖都ユマの観光客も増えるでしょ?だから、お土産物屋さんを開くのさ。茶々丸、分福丸、真珠丸、玉藻前の可愛い絵柄の服とかを売るの。赤神ナナセさんはこの話に、絶対に乗っかってくると思うよ。」
それを聞いたツバキはさらに硬直した。そんな中、シヴァ、赤の女王、分福丸、真珠丸も湖宮に入ってきた。
「皆、勢揃いだね。」
シヴァがタタラに言った。
「タタラ、次は何をしようか?」
茶々丸がタタラの膝の上にぴょんと乗った。タタラは茶々丸の頭を撫でながら、笑顔で答えた。
「シヴァ達に食べさせてあげたい魚介類があるんだよ。テチス海へ皆で旅行しよう。」




