カフェ事件2
「じゃーん!図書館から現世に来ましたっす!」
ニッパーはテレビ番組でよくあるジャンプすると別の所にワープする編集された演出のようにジャンプしていた。
目の前にはダージリンコーヒーの看板がかかっているカフェ。きれいなお庭があり、周りは高いビルばかりの都会なのだがここだけ西洋の雰囲気が漂っている。カフェの中にも席があるがお庭の方に出されている席でティーブレイクをするのがどちらかといえば人気が高そうだ。現在は午後二時半。天気は冬なので寒いが快晴なので外でお茶をしている奥様なども多い。
「時刻は午後二時半。現世のカフェに不思議なところはない。まずは情報集めだけど私達は人間の目に映らない。では、どうするか。」
ツマはドラマなどでよく見る探偵のように顎に手を当てて無駄に歩き回る。
「ツマ探偵!ツマ探偵の能力を使うっす!」
勝手にツマ探偵と呼ぶようになってしまったニッパーを別に咎めるわけもなくツマは大きく頷いた。
「イクザクトリィ。その通り。ニッパーくん、ちょっと一緒に来たまえ。」
慣れない言葉を使い、ツマはニッパーを連れてカフェのまわりに植わっている植木の前に立った。
「ここで木に話しかける。私は草木の神なので木と話せる。しかし、会話という会話はできず、私の能力では『YES』、『NO』クエスチョンしか木が答えられない。答えられない質問はすべて答えない……という設定。」
「設定とか言っちゃってるっすね……。」
おそらく他の事もできるはずだがツマはこのゲームに縛りをかけるようだ。
ツマツヒメ神は木種の神と名乗れば有名すぎるほどの神であるイソタケル神、大屋都姫神の妹であり、スサノオ尊の娘でもある。
神格はそこそこ高い。
もしかすると木々を従わせる能力も持っているかもしれない。
「では質問タイムに入る。」
「質問タイム!?探偵っぽくない言葉が出たっすね。」
ツマはニッパーを半ば無視し、植木にそっと手を置いた。
「……男女のいざこざがここで起こったか?」
ツマがそう質問すると木がザワザワと風で動いた。
その後、
……YES……
と言葉が返ってきた。言葉というより文字が頭に浮かんだ感じだ。
「今日それが起こった?」
……NO……
「昨日それが起こった?」
……YES……
「昨日の……えーと……二時頃に起こった?」
ツマはカフェでお茶を飲みそうな時間帯を言ってみた。
……NO……
「違うのか。じゃあ午後起こった?」
……YES……
「じゃあ午後の三時頃に起こった?」
……YES……
ここまでを整理すると男女のいざこざは昨日の午後三時頃に起こったという事らしい。
「えー、では……どれくらいの年齢か聞こう。……学生だった?」
……YES……
「学生……。高校生だった?」
……YES……
「高校生か。」
「高校だったらこの近くに麻木理高校があるっすよ!」
「なんでそれを知っているの?」
ツマは無機質にニッパーに尋ねた。
「いや……そこの学割を見たからっすよ。麻木理高校の生徒は割引って。わざわざ名を出して割引にしてんだから近くにある高校でしょって話っす。」
ニッパーの軽い推理にツマはどこか悔しそうな顔をしていたがプイっとそっぽを向いて再び木に尋ねた。
「それは麻木理高校の生徒か?」
……YES……
「……麻木理高校の生徒……。」
ツマは思わせぶりに辺りを見回す。よく見ると学生服を着た人間が何人かいた。学校が終わる時間にしては早い。
店内をこっそり見ると、麻木理高校の生徒だと思われる彼らは皆、問題集を開いている。
「なるほど試験期間中……。はっ!」
お庭の方にある席で学生服の女性二人が何やら真剣に話しているのが見えた。一人は半泣き状態でもう一人は彼女を慰めている。
「怪しいっすね。」
ニッパーはどこか悪戯っぽい顔をして女学生を興味深そうに見ていた。
ツマも耳を傾ける。
「もう、ほんと酷いの。昨日、ダージリンコーヒーに来たらさ、彼が知らない女の子と一緒にいてさー……。なんか楽しそうに話してんの!全然浮気しなそうな男だったからショックで……。彼のとこにいって怒鳴って一方的に帰っちゃった。」
「……あの人、そんな感じじゃないのになあ。見た感じ。まあ、テスト終わったら聞いてみたら?間違いかもしれないしさ。」
「……うん。」
女の子二人はある程度の会話をすると問題集を広げ勉強を始めてしまった。
「……間違いない。あの事件だ。」
ツマは探偵にありそうな腕を組んで考える仕草をすると再び植木に向き直った。
「男の方はそういう事する人じゃないっぽいから潔白を証明してあげよう。楽しそうに話していたというのは気になるがそれよりもまず……浮気を疑われている彼は潔白か?」
「ちょ、それ聞いちゃったら話終わっちゃうっすよ!」
確かに木が『YES』と答えたらこの事件はうやむやに解決する。
しかし、木は意外な答えを出してきた。
……。
無言だった。
つまりわからないという事だ。
「わからない……。見てなかったって事か。」
ツマはしばらく考えて頷いた。
「つまり、犯行は店内で起こった。この木々からじゃあ店内の様子は遠くてわからない。しかし、被害者の女の子が泣きながらとかアクションを起こして出てきたため、この事件を木が知っていたって事か?」
植木からは確かに店内をうかがう事はできない。店内の窓はスモークガラスになっており、今日のように快晴ならば光が反射してさらに中が見えない。
「……当時、店は混んでいたか?」
……。
これにも木は無言だった。やはり植木からは店内の様子がわからないようだ。




