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お花屋さん ー春ー  作者: ニケ
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チューリップ ~永遠の愛~

写真の祖母に文句を言ってじっと見つめれば、少しずつ心が落ち着いてきた。人を好きになる気持ち、大切にするね。そう呟けば写真の中の祖母が意味深に目を細めたかように見えた。西森は驚いて顔を近づけて写真を見る。いくら凝視してもいつもの写真と変わらない。見間違いだったのか。



「不思議だな。。うー。俺、まだ疲れてるのかも。。時間もあるし、もう少し寝ていよう」



おやすみ、お祖母ちゃん。写真をそっと優しく撫でながら西森は立ち上がる。急に立ったので立ちくらみがした。茶碗をなんとか台所に持っていき、布団の中に倒れ込む。心地よい布団の肌触りに力が抜けて、そのまま意識を手放した。



カチャカチャとした静かな音が聞こえる。小さくて聞き慣れない音なのに、なぜか優しい。不思議と心地よくて、西森は重い瞼をこじ開けるように力を込めた。とても怠いが、聞こえてくる優しい音が気になる。もしかしたら、祖母が何かをしているのかもしれない。散々教えてくれと懇願したのだ。自分が寝ている間にやってきたのか。西森は気づかれないように目を薄く開いた。



台所に立つ影がぼんやりと見える。小さい頃、こうして祖母は台所に立って何かをしていた。ああ、やはり祖母がやってきたのかと嬉しくなる。西森が祖母の存在に気づいたらすぐに消えてしまうかもしれない。西森は目を細めたまま台所の影を見つめていた。



誰かの気配を感じるのに、緊張しない。その存在が嬉しい。優しくて心地よい雰囲気に西森はそっと息を吐いた。



影がこちらに向かってくる。顔を覗き込むように近づいてきたので、西森は静かに目を閉じた。寝たふりをしよう。西森は動かないように気をつけて影の様子を伺った。温かいものがおでこを覆う。熱を計るようにそのまま動かず、しばらくすると西森の頬を優しく撫でてきた。



「。。。」



影は何も言わない。祖母が西森の文句に答えてやってきたのだなと思う。嬉しくて自然に笑みがこぼれてきた。祖母がいるということは、これは夢なのだろう。嬉しい。夢でも、祖母に会えた。西森はゆっくりと口を開く。夢ならば、何でも気兼ねなく聞ける。



「お祖母ちゃん。俺の好きな人のこと。。話そうか?」



頬を撫でていた温かいものがピタリと動きを止めた。西森は構わず、話を続ける。自分の好きな人の話をすれば、それを聞いた祖母も強制的に好きな人の話をしなければならなくなる。逃げ道を奪うかのように西森は言葉を紡いでいく。目の前の祖母は静かに聞いていた。



「ふふふ。優しい人なんだよ。俺、その人のこと、大好きなんだ。なんかね。そばにいると、ふんわりと優しくて。大きく包み込まれて、心地いいんだよ。守られてるって言うのかな?」



羨ましいでしょ。でも、ダメだよ。俺の好きな人なんだからね。祖母はきっと魅力的だった。西森が必死に速水のことを想っていても、祖母には敵わない気がする。大好きなんだから、見守っていてよね。強く言い放つと、目の前の影は、ぷっと小さく吹き出す。やっぱり祖母は速水のことを格好いいと思っていたのだ。少し悔しい。



「俺ね。その人のこと、大切にするんだ。そばにいられるって素敵でしょ?」



口を尖らせて問いかければ、肯定するように頭を優しく撫でられる。嬉しくなって、ふふふと柔らかく笑った。



速水のことは全て話した。自分がいかに速水が好きなのか、人を好きになった気持ちを祖母に打ち明けた。さあ、今度は祖母の番だ。西森は聞きたい気持ちを抑えながら、祖母に教えてほしいとねだる。自分も教えたのだから教えろと、半ば強迫した。このまま、あの世とやらに帰してたまるか。目の前の影は何も言わず、優しく頬を撫でていた。



目を開けると視線の先にはいつもの天井がある。日が影ったのか辺りは少し薄暗かった。布団の中で体を動かしてみると、軽い。西森は寝返りをうって体を大きく伸ばす。ゆっくりと体を起こせば、頭痛はしなかった。だいぶ回復したようだ。



「ふぁ。。今何時だろ?時計は。。あれ?」



きょろきょろと辺りを見回す。そういえば祖母はどうしたのか。焦りながらどんなに捜しても誰もいない。もう帰ってしまったようだ。祖母の話を聞きたかったのに、狡い。せめて写真に向かって文句の一つでも言ってやろうと布団から出る。ちゃぶ台のある居間へと足を進めれば、明かりが点いていた。



「?電気、消し忘れてる。はぁ。。」



逃げられてしまったことを残念に思いながら、襖へと手を伸ばす。祖母には逃げられるし、電気を消し忘れるし、何も良いことがない。ため息をつきながら、勢いよく襖を開けた。とりあえず電気を消そうと顔を上げた先には、のんびりと座っている速水がいる。急に現れた西森に速水はポカンと口を開けていた。西森も速水がいるとは思わなくて固まっている。



「!!??」



速水は暑いのか、また上半身が裸だった。のんびりと食べていたお茶漬けと、西森が食べたかった梅干しを箸でつまんだまま止まっている。食べたかった梅干し。。思わず西森は梅干しに釘付けになる。じっと見つめていると、いるか?とばかりに箸が動く。



「食べます。。」



美味しそうな梅干し。花農家の奥さんが西森のために浸けていて、一週間ほどで食べ頃ですよと渡してくれた秘伝の梅干し。冷蔵庫の奥に閉まっておいたものを、西森は今日取りやすい場所に移動させた。ずっと楽しみにしていたのだ。すすすと動いて箸から梅干しをほおばる。甘くて酸っぱい深みのある味が口の中に広がった。幸せだ。



「。。。」



あまりの美味しさに目を閉じて、しばしこの素敵なハーモニーを楽しむ。時間を忘れて、梅干しの種を転ばせた。



「。。リスみてぇ。。」



もうちょい、太れば完璧だな。しみじみとした声に西森は動きを止める。さりげなく失礼なことを言われた気がする。ムッとして反論しようと目をぱちりと開いて速水の顔を見た。



「あ。。」



とても優しい顔がすぐそばにあった。穏やかに笑いながら、そっと西森の頬を撫でた。先程までちゃぶ台の前にいたのに。西森の隣にいて寄り添っていた。



「西森」



たった一言、名前を呼ばれただけだ。穏やかで優しくて、ちょっと意地悪な目に見つめられただけなのに。急に心が熱くなって、奥から温かさが溢れてくる。



「好きだよ」



両手で頬を包み込まれる。大切な宝物を慈しむように速水は西森の頬を撫でた。目の前がぼやけて、口元がかすかに震える。俺も、と言いたかった。



「大好きだ」



そう聞こえた瞬間、西森の視界は大きく変わった。むき出しの腕がすぐそばにあって、息がかかりそう。恥ずかしくて服を着てくれと伝えたいのに。激しい鼓動が、抱き締めてくる大きな力が。西森の動きを止めてしまった。このままずっとここにいたい。抱き締めていてほしい。素直な気持ちに息が苦しくなる。



「。。速水さん。。」



苦しくて、熱くて。でも、そばにいたい。もっともっと速水を感じたい。胸の奥から燃えるような衝動が体を包み込んでいく。西森は顔を勢いよく上げると、少し高い位置にある速水の唇を奪った。



朝がやってきた。今日もなんら変わらないいつも通りの朝だ。ランダムに設定した目覚ましの音。穏やかで優しいフルートの調べに西森は手を伸ばして目覚まし時計を止める。少し怠い体を動かして布団から出ようと力を込めれば、横から伸びてきた温かいものに強く体を持っていかれた。後ろからくっつくように抱き締める存在に西森は大きく笑う。温かくて、くすぐったい。いつもの朝なのに。



「速水さん。もう、離してくださいよ。花籠を作るんです」



強く引っ張って離れない腕に自分の手を添えてなだめる。耳元で唸るような声が聞こえてきた。優しくて温かくて、やっぱり意地悪だ。



くるりと向きを変えられて、とろんとした眠そうな目と視線がぶつかる。おはようございますと呟けば、のろのろとした動きのまま近づいてきて、かぷりと唇を噛みつかれた。



おはようございます。速水さん。これからもよろしくお願いしますね。



居間には穏やかな顔をした老婆の写真がある。朝の光に包まれて、その優しい口元がゆっくりと美しい弧を描いた。



お花屋さん ー春ー 完結

皆様、こんにちは(*^^*)いかがお過ごしでしょうか?

ああ。。完結致しました。ー春ー完結でございます。ここまで読んで頂き、本当にありがとうございます(*^^*)

完結致しまして、ほっとしました。皆様のお陰でここまで書くことができました。ありがとうございます(*^^*)

次のー夏ーは、二人の愛を育みながら、スーツの男達と対決ですよ!

火曜サスペンス劇場!タラララ!タラララ!ターラー!!の如く、サスペンス風に。。

夏だけにー。。ホラー!まあ、残酷なことは書けませんが、サスペンス目指して頑張ります。

本当にありがとうございました!ー夏ーでお会いしましょう。それでは素敵な時間をお過ごしくださいね(*^^*)

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