【レージside】
†light†きぼう†
あれから、カスミが観たいと言った映画を観て、デパートに立ち寄って。
一般的なデートをしてから俺達はマンションに帰った。
—— けど……
未だ、俺の記憶は戻らない。
何でカスミのことを、忘れてしまったのか。
どうやら俺は、難しい顔をしていたらしい。
カスミがそっと近付くと、背伸びをして俺の思考を遮るように、甘い唇で俺の口を塞ぐ。
しばらくしてから離れると、そっと唄うように言葉を紡いだ。
『いいの。レージはそのままで』
それは甘く、俺を誘っているような響きを帯びていて。
俺は自身のカラダの奥底に眠る、飢えたケモノが揺さ振り起こされるのを感じた。
そして、まるでクスリにでも溺れるように、俺はカスミを貪った。
それでもカスミは文句を言わない。
俺が求めるままに、応えてくれた。
そのまま二人揃って眠ってしまったらしい。
時計に目をやれば、丁度12時。
日付が変わるところだ。
何となく、溜息が漏れる。
上体を起こして、サイドテーブルに置いてあるミネラルウォーターを手に取った。
一気に煽れば、渇いた喉に染み渡る。
しばらく、そのままベッドの先の闇を見詰めていた。
「レージって、シンデレラみたいね」
静寂の中、カスミの声が透るように耳に届く。
「起きたのか」
俺の言葉にフッと艶だ。
細い白皙の肢体を緩慢な……それでいて、どこか艶かしくしならせながら、俺の腕に絡んで来た。
預けられた身体から漂う甘い香りが、鼻孔をくすぐる。
「ねえ、シンデレラって知ってる?」
「0時になったら魔法が解ける話だろう?」
――まるで、俺みたいに
知らず、自嘲の笑みが口の端に浮かんだ。