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春28日 リーン ミズキちゃんには敵わない

今日はわたしはお仕事がおやすみ。

ミズキちゃんがお洋服を作っているそばで、わたしは読書。

今は基本魔道技術者試験の参考書を読んでいます。

記憶を無くしたせいか、存在を忘れている基礎魔法も多いので、これを読んで再習得。

基礎魔法は地味に便利な魔法が多いのです。


「リーン、ちょっと丈合わせさせて」

ミズキちゃんがわたしの体にサラリとした布をあてました。

今はユカタっていう服を作ってるんだって。

裾を待ち針で留めながら、ミズキちゃんは今日も溌剌とお喋りしてくれます。


「アイスのおかげで夏に向けてテンション上がってきたよ!

 そういえば、昨日ヴァニラちゃんたちが町に水着買いに行ったみたいだけど、どこで泳ぐの? 川?」

「川は浅いから、泳ぐなら森にある泉かな。

 わたしは泳いだことないからよく知らないけど、泉は足が届かない所もあるみたいだから、

 もし行くときは誰かと一緒に行ってね」


村を横断するように流れる川は、いわゆる小川で、水位も低め。

ちょっとした水遊びから、罠を使った魚とり、魚釣りまで楽しめます。

森にある泉は、数人で泳ぐには、深さも広さもちょうどいいらしいです。


「リーンは行かないの?」

「うん。……あ、でも、泳がないけど、ミズキちゃんが行くならお弁当作って一緒に行こうかな」

わたしが「うん」って言ったら、ミズキちゃんがすごく残念そうな顔をしたので、つい「行こうかな」って言っちゃいました。

「リーンも泳ごうよ! それで、水着披露してよ!

 あ、もしかして泳げないとか?

 私、こう見えて泳ぎは結構得意なんだ!教えられると思うよ!」

ん……それはちょっと困るかな。

「あれ? えっと……、そんなに行きたくない……?」

わたしが困っているのに気付いて、ミズキちゃんがおろおろし始めました。

ちゃんと理由言った方がいいよね。

「ん……、あのね、背中……」

「あ……ごめん……」

「ううん、ごめんね」


わたしの背中には大きな傷があります。

ざっくり、何かで切られたような。

村長の髪の毛は魔法でなんとかなりそうだけど、この傷は、わたしが知ってる魔法では治せそうにありません。

どうやってついた傷なのか記憶がないからわからないし、今となってはそんなに知りたいわけでもないけれど、ただ、キレイなものじゃないから、あんまり人前に晒したくないなって思ってます。


「……背中が出ない水着だったら、どうかな?」

ごめんと言ったまましばらく俯いていたミズキちゃんが、こちらを伺うようなちょっと不安げな目でこちらを見てきました。

そういう顔をされると、ちょっと困ります。

「そういう水着……あるかな?」

水着には色々な形があるけれど、どれも背中、肩甲骨のあたりは大きく開いています。

「私が作るからさ!」

「ミズキちゃんが……」


ここに来てから、ミズキちゃんは何着かわたしに服を作ってくれました。

ちょっと変わったお洋服。

変わっているけれどヘンテコって感じじゃなくて、個性的な感じのお洋服です。

デザインはともかくミズキちゃんが作ってくれたっていうのが、わたしは嬉しいんだけど……でも……


「だめ……?」


絨毯に座ってるミズキちゃんは上目使い。

つい「いいよ」って言いそうになります。

でも、いくら背中が隠れても、それが特異なデザインなら、明らかに背中を隠すためのデザインだってわかると思うの。

水着は……背中を見せるものだもの……。

背中が隠れる水着を着たら、「背中の傷を気にしてます!」って露骨にアピールしてるみたいで、それはそれで嫌です。


「私も着るから! お揃い! だったらどうかな?」


お揃い……ミズキちゃんとお揃い……。

ん……すごく心惹かれる提案をされてしまいました。

お揃いなら……わたし一人が着るんじゃないなら、いい……かな。


「ん、わかった。ごめんね、ミズキちゃん」

気を遣わせてごめんなさい。


「なんでリーンがあやまるの!

 でも今『いい』って言ったよね! やたー! 張り切って作るね!

 どうしようかなー、ビキニかなー。おなかは出したいからツーピースは絶対だよねー」


…………おなか?


ミズキちゃんの言ってることはよくわからないけど、今、おなか出すって言ったよね?

水着には色々な形があって、どれも背中は出ているけれど、どれもおなかは出ていません。

というか、家族以外におなかを見せるなんて、変態です。

変態さんは春の風物詩で夏じゃないの。

もしかして、もしかして……ミズキちゃんの世界では、おなかを見せるのは普通のことなのかな?

ん……ちょっと想像できないや。


「背中隠すなら、猫耳フードつけて、上はパーカー風にしてもいいなあ。

 あ、でも、私も着るのか……。私に猫耳はちょっとな……」


なんだかとっても不安なので、

「やっぱなし」って、言ってもいい……かな?


基本魔道技術者試験参考書の索引を最初から最後まで見たけれど、やる気になったミズキちゃんに太刀打ちできそうな魔法は一つもありませんでした。

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