春27日 ミズキ ピコピコシューズいりませんか?
昨日アイスを食べたいとホセに言ったところ、急遽今日仕入に行ってくれることとなった。
まあ、アイスのためじゃなくて、なんか急遽別の用事が出来たかららしいんだけど。
そんなわけで、私は今ラスシャ村のメインストリートにいる。
雑貨屋に帰るには、馬車はここを通るはずだからね!
ホセが戻ってきたら、搬入を手伝った後でアイスをもらう算段だ。
待ってる間にジャンが来た。
雑貨屋が閉まっているのを知ると
「なんだよー! 今日はSR(スーパーレア)が出るはずだったのに!!」
と、騒ぎ出した。
何の話かと思って、暇つぶしに聞いてみたところ、
騎士道チップスというお菓子に入っている、カードのことらしい。
でも、「出るはずだったのに」って、ただの予想……いや、願望だよね?
諦めきれないらしいジャンと一緒に、ホセの帰りを待つ。
しばらくすると、エメリアさんがやってきた。
雑貨屋が閉まっているのを知ると、
「嫌だわあ、三時間もかけてここまで来たのに……」
と、項垂れた。
病院と雑貨屋はそこまで遠くないと思うんだけど、どこに寄り道したら三時間もかかったんだろう。
ルリちゃんと一緒に帰ると言うので、エメリアさんも一緒にホセの帰りを待つ。
ルリちゃんは、ヴァニラちゃんと一緒にホセの馬車で町に行ったらしい。
しばらくすると、ホセの馬車が帰ってきた。
馬車が停まると、後ろの荷台からヴァニラちゃんが降りてくる。
地面に降りると、ピョコっと音がした。
ヴァニラちゃんが歩き回るたびにピョコピョコ音がする。
これは、あれか……赤ちゃんがよく履いている、笛が入った靴か!(正式名称はわからん)
とりあえず、ピコピコシューズと呼ぶ。
ピコピコハンマーと似てるし。
「それ、どうしたの? 可愛いね」
赤ちゃんの履物ってイメージが強いけど、ヴァニラちゃんが履いても、結構似合っている。
背が小さいからってだけじゃなくて、ゲームキャラの足音みたいな感じで、ポップな印象だ。
「ねっ可愛いよね! 問屋のおじさんが、これから流行るよ~って言ってた!」
流行……るのか?
可愛いけど、流行りはしないんじゃ?
だって、流行ってみんながみんなピッピコプップコ言わしてたら、すごくうるさそうだし。
「まあ、流行るかどうかはわかんねーけど、靴自体の品は悪くねーし、
問屋がかなり安く卸してくれるっつーから、何足か仕入れてきたわ。
お前、いる?」
「いや、私はいらないかな」
王子のイメージじゃないし。
それにそれ、在庫処分されただけなんじゃないのか?
ホセは荷台から、靴を数足取り出してきた。
む? ヴァニラちゃんのは丸い感じの女の子らしいブーツだけど、編み上げブーツにパンプスに革靴にサンダル……いろいろあるみたいだ。
「あらあ、結構品はいいのねえ。一足いただこうかしら。ルリちゃんもどお?」
「あたしはいらない」
ルリちゃんにすげなく断られて残念そうにしながらも、エメリアさんはパンプスを試着した。
歩いてみると、カツカツと音がする。
なんていうの? 出来る女のハイヒールの音みたいな。
是非、スタイリッシュな眼鏡をかけてほしい。
「あらあ、いいじゃない。いただくわー」
エメリアさんはルリちゃんに連れられ、カツカツ音を響かせながらよたよたと帰っていった。
あれ? なんかもともと雑貨屋に用事あったの、済ませてないんじゃない?
「へー、結構安いじゃん。俺も買おうかな」
ジャンも試着。歩くと、ガッションガッション音がした。ロボか!
こんな色々な音が鳴るってことは、笛じゃないんだろうなあ。
魔法、なのかな。
魔法の無駄遣い感がすごいと思ってしまうのは、私がまだ魔法に慣れてないからだろうか。
それにしても、ヴァニラちゃんやエメリアさんの靴音はともかく、ジャンの靴はかなりうるさい。
「いいな! これいいな! 買うわこれ。このまま履いてくぜ!
よっしゃ! テンションあがってきたー! 一狩りいってくるぜ!」
ジャンはハイテンションでガッションガッション言わせながら森方面に向かっていった。
その音、獲物逃げるぞ?
あと、SRカードはいいのか?
「拙者も履いてみても?」
いつの間にかサトウがいた。
テンション高い忍べない忍かと思ってたけど、意外と気配消せるのか……。
サトウが歩くと、靴から「シュタッ」という音がした。
「感服いたした」
サトウは代金を払うと、シュタシュタ言わせながら去っていった。
忍べ。忍者、忍べ。
「おー、結構売れたなあ。あと一足……お前買わねえ?」
「いらんな」
残った一足はサンダルだ。
そりゃたしかに、スウェット着てればサンダルもいいけどさ。
でも、このサンダル、男用のサイズだ。
私も女にしては足が大きいけど、それでも男用を使うほどじゃない。
「まあお前の足にはちょっとでかいか。……俺が履くかなあ」
店に並べておいて売ればいいだろ、と思うけど、もしかしたらホセが履きたいのかもしれない。
ホセが履くと、サンダルはカコカコと音を立てた。
何だろうこれ……どっかで聞いた音のような……。
「なんかこれ、地味だな」
たしかに地味だけど、悪くない音だ。
なんだろう……郷愁を誘う。
あ、これ下駄だ! 下駄の音だ!
私は大急ぎで家に帰ると、大きめの布で羽織と袴を作る。
昔、時代物をやった時、着物一式は作ったからね!
作り方はわかってるからサクサク作業できる。
時間がないからインナーはいいや。
私は本格派じゃなくて、コスプレ歓迎派だし。
つまり、タンクトップとサンダルに羽織と袴を来たなんちゃって武士でも、全然気にならないし。
数時間後出来上がった衣装を持って雑貨屋に行き、ホセに頼み込んで着てもらう。
ホセは「しょーがねーなー……」と言いつつ羽織を羽織って、「結構いいじゃねーか」とまんざらでもない様子。
すごく良く似合う。コスプレっぽい意味で。
私、良い仕事した。
私は満足すると、軽快な足取りでリーンの待つ家に帰った。
あ、アイス忘れた……。




