第五話 〜不一致〜
六波羅は目を覚ました。
前回と同じ展開だって?いいや違うね。何故なら……、
知らない天井だ……。
本当に知らない天井なのだ。
ここは六波羅宅の廊下。床に客用の布団を敷いて寝ている。廊下の天井をじっくり見たことなんて今までなかったし。ていうか廊下寒いんだけど……。
何故六波羅がこんな場所に寝ているかというと、件の居候にベッドを占拠されたからだ。
六波羅は起き上がる。よかったよかった。今回は拘束されていないようだ。
すると、味噌汁のいい匂いが漂ってきた……。
「おお! 朝起きたら美少女がエプロンつけて味噌汁作ってるなんて!
もう死んでもいいかもしれない……」
そう言いながら、六波羅は台所まで移動する。と、そこではフィリスが料理を作っていた。
「おはよう。美味そうな匂いだな」
「おはよ。美味しそうなのは当たり前だと言いたいところだけど、日本食はあんまり作ったことないのよね。これで平気かしら……」
「大丈夫だろ。匂いを嗅ぐ限りでは」
本当に美味そうだ。早く食べたい。
早く食べたいので、六波羅は手伝いを申し出た。
「何かお手伝いすることはあるでございましょうか」
「ないわ。出来上がるまで座って待ってて頂戴」
「マジすか。では遠慮なく」
そんなこんなで朝食が完成した。
白米に味噌汁、焼き鮭という、典型的な日本の朝御飯だ。
「いただきま〜す」
「どうぞ」
最初は味噌汁から頂くことにした。
結論、美味かった。
味噌汁と焼き鮭はもちろんのこと、電気釜に入れてボタンを押すだけなはずの白米まで普段より美味かった。
「ごちそうさまでした」
「はいはい。じゃあ、片付けちゃうから」
「洗い物くらい俺もやるよ」
「洗わなくていいから、食器運んでくれる?」
「りょーかい」
六波羅は言われた通りに食器を運ぶ。
その後、食卓に座ってボーッとフィリスの洗い物を眺めていた六波羅だったが……、
「何ジッと見てんの。何かついてる?」
自分をボーッと見ている六波羅にフィリスは怪訝な顔を向けていた。
「あ?あぁ。いや、悪い。なんか昨日に比べてトゲがなくなったような気がして」
六波羅は咄嗟に言い訳をする。
「そりゃそうよ。いつもあんなな訳ないでしょ。まして今の私は居候なんだし」
「さいですか。それはいい心がけだことで」
「はいはいありがと。それより、聞きたいことがあるんじゃないの?」
フィリスが皿を拭きながらそんなことを言ってきた。
「そりゃあ、あり過ぎて困るくらいにはあるけどさ」
「なら言いなさいよ」
「お前、一人でCosmosの奴を相手にするつもりなの?」
六波羅はいきなり核心をついた。
「まあ、そうね。今回のCosmosの動きを察知してる人は少ないから、私がやるしかないでしょう」
おそらくこのことについては、彼女は既に考えていたのだろう。少しも待つことなく答えた。
「だからあなたも手伝ってくれるとありがたいんだけど」
「それはできない。もう魔術師は辞めたんだ」
「また始めればいいじゃない。魔力が枯れたわけじゃないんでしょ?」
「魔力を練っただけで頭痛がするんだけどな。それに、下手に手を出してどうなるかなんてわかったもんじゃない」
「意気地なしね」
「おう。なんとでも言え」
六波羅の頑なな態度に、フィリスは両手を肩の高さまで上げて、ため息をつきながら首を振った。これがまた憎らしいほどに似合っている。
その後は会話もなく、フィリスは洗い物を続け、六波羅はボーッとテレビを見ていた。




