〜プロローグ〜
「ハァッ、ハァッ、ハァッ」
夜の帳が下りた街中を一人の少女が走っていた。
ここは東京都南区域の第三地区。とある事情により再編された東京都の南部だ。
少女の着ているワンピースの右袖は紅く染まっている。少女は傷ついた腕をもう一方の手で庇いながら、時折背後に向かって青白い閃光を飛ばしていた。
左の掌から飛び出すその閃光は、ズビチッ!! という大きな音をたてながら背後に向かう。が、すぐに後ろの人影がそれを弾いてしまう。
「なんであんなに防げんのよ。意味わかんない……」
少女は小さく毒づきつつ、懐から一本の白い棒を取り出した。その10cm程の棒には、アルファベットの文字列がびっしりと刻まれている。
「本当はこんなところで使いたくなかったんだけど……。仕方ないか」
そう呟き、少女は白い棒を左手で強く握る。
すると棒の文字列が白く輝き、その側面に沿ってクルクルと回り始めた。
その光を見た背後の人影が、慌てたようにスピードを上げた。
しかし、追いつく前に少女は白い光の粒となって消えてしまった……。
追手の人間は、踵近くまである大きな黒いコートを着ていた。フードを目深に被っているので、顔は見えない。ただ、背格好からすると大柄な男のようだ。
その男は今しがた少女が消えた場所を踏みつけて、大きく悪態をついた。そして、手を口元にやり何かを喋ると、踵を返し、そのまま夜の闇に消えて行った。




