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後日談

蝉の声が響く夏の午後。

蒼真と夕奈は、並んで歩いていた。


手をつなぎ、

笑い合い、

まるで7年前の続きを取り戻すように。


夕奈は言った。


「ねえ蒼真。

 こうして歩くの……なんか不思議だね」


「なんでだ?」


「だって……

 7年前は、もう二度と会えないと思ってたから」


蒼真は夕奈の手を握り返した。


「俺もだよ。

 でも……こうして会えた。

 運命なんて、変えられるんだな」


夕奈は微笑んだ。


「うん……変えられるんだね」


二人はゆっくりと歩き続けた。


その姿を――

空の上から見つめる影があった。


雲の上。

白い光に包まれた空間。


そこに、

小さな二つの影が浮かんでいた。


ココとミミ。


ココは足をぶらぶらさせながら、

下界の二人を眺めていた。


「やっと……終わったね」


ミミは静かに頷いた。


「うん。

 夕奈は“生きたい”って言えた。

 それだけで未来は変わる」


ココはミミを見上げた。


「ミミは……後悔してる?」


ミミは少しだけ目を伏せた。


「……してるよ。

 本当は、夕奈に生きてほしかった。

 でも……本人が“変えなくていい”って言ったから……

 私はその選択を守っただけ」


ココは優しく微笑んだ。


「でも最後は……

 夕奈、自分で選んだよ。

 “生きたい”って」


ミミの表情が、

ほんの少しだけ柔らかくなった。


「……そうだね。

 あの子は強かった」


二人はしばらく黙って、

下界の蒼真と夕奈を見つめた。


夕奈が笑う。

蒼真も笑う。


その笑顔は、

どんな運命にも負けないほど眩しかった。


ココは空に寝転びながら言った。


「ねえミミ。

 運命ってさ……

 変えられないものじゃなくて、

 “変えようとする気持ち”があるかどうかなんだね」


ミミは小さく笑った。


「そうだね。

 運命は“決まってる”んじゃなくて、

 “選ぶ”ものだから」


ココは夕奈の方を指差した。


「夕奈は選んだ。

 蒼真も選んだ。

 二人とも……未来を」


ミミは静かに頷いた。


「だから……

 もう細工は必要ない。

 あの二人の未来は、

 あの二人が作っていく」


下界では、

蒼真と夕奈が並んで歩いていた。


夕奈がふと空を見上げる。


「ねえ蒼真……

 なんか、誰かに見守られてる気がしない?」


蒼真も空を見上げた。


「……そうだな。

 俺もそんな気がする」


夕奈は微笑んだ。


「きっと……

 ありがとうって言ってるんだよね」


蒼真は夕奈の手を握り、

優しく言った。


「俺たちの未来は……

 もう誰にも奪わせない」


夕奈は頷いた。


「うん。

 これからは……

 ずっと一緒に」


二人は歩き出す。


空の上で、

ココとミミが微笑んだ。


「……幸せになってね、夕奈」


「蒼真もね」


そして二人は、

静かに空の奥へ消えていった。


運命に抗い、

未来を変え、

ようやく辿り着いた“現在”。


蒼真と夕奈は、

もう二度と離れない。


そして――

二人の物語は、

ここから始まる。

---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

季節は何度も巡った。


二人は恋人として、

ゆっくりと、しかし確実に距離を縮めていった。


社会人として忙しい日々を送りながらも、

蒼真との時間を大切にした。


蒼真もまた、

リハビリを続けながら仕事に復帰し、

夕奈と共に未来を歩く準備を整えていった。


二人の関係は、

穏やかで、優しくて、

まるで“運命に抗ったご褒美”のようだった。


ある春の日。

桜が舞う公園で、

蒼真は夕奈を呼び出した。


「夕奈、ちょっと来てほしい場所がある」


「え? どこ?」


蒼真は夕奈の手を引き、

ゆっくりと歩き出した。


二人が辿り着いたのは――

7年前、

夕奈が“最初に死んだ”あの場所。


でも今は、

ただの静かな坂道だった。


夕奈は不思議そうに首をかしげた。


「ここ……?」


蒼真は深呼吸し、

夕奈の前に立った。


「夕奈。

 俺は……何度もお前を失った。

 何度も泣いて、

 何度も絶望して……

 それでも、絶対に救いたかった」


夕奈の目が潤む。


蒼真は続けた。


「お前が“生きたい”って言ってくれたから、

 俺は今ここにいる。

 だから……」


蒼真はポケットから小さな箱を取り出し、

ゆっくりと膝をついた。


「夕奈。

 俺と……結婚してください」


夕奈は口元を押さえ、

涙をこぼした。


「蒼真……

 もちろん……もちろんだよ……!」


二人は抱き合い、

桜が舞い落ちる中でキスをした。


その瞬間――

空の上で、

二つの小さな影が微笑んだ。


雲の上。

白い光に包まれた空間。


ココが足をぶらぶらさせながら言った。


「やっと……ここまで来たね」


ミミは静かに頷いた。


「うん。

 二人とも……本当に強かった」


ココは笑った。


「ミミもね。

 最後は未来を変える細工をしてくれたし」


ミミは少し照れたように目をそらした。


「……夕奈が“生きたい”って言ったから。

 あの子の選択を、今度は守りたかった」


ココは空の下を指差した。


「見て。

 二人……すごく幸せそう」


ミミは優しく微笑んだ。


「これからも……ずっと見守っていこうね」


二人は並んで座り、

蒼真と夕奈の未来を静かに見つめ続けた。


季節は夏へと移り変わり、

二人の結婚式の日がやってきた。


青空の下、

白いチャペルに鐘が鳴り響く。


夕奈は純白のドレスに身を包み、

ゆっくりとバージンロードを歩いた。


蒼真はタキシード姿で、

涙をこらえながら夕奈を見つめる。


(……生きてくれてありがとう)


夕奈もまた、

蒼真を見つめながら思った。


(……助けてくれてありがとう)


牧師の声が響く。


「新郎・蒼真。

 あなたは新婦・夕奈を、

 病めるときも、健やかなるときも、

 愛し、支え続けることを誓いますか」


蒼真は迷いなく答えた。


「誓います」


「新婦・夕奈。

 あなたは新郎・蒼真を、

 喜びのときも、悲しみのときも、

 愛し、支え続けることを誓いますか」


夕奈は涙をこぼしながら言った。


「誓います」


二人は指輪を交換し、

そっと唇を重ねた。


チャペルに拍手が響き渡る。


その瞬間――

空の上で、

ココとミミが手を叩いて喜んでいた。


「やったね!

 二人とも幸せになった!」


「うん……本当に良かった」


ミミは目を細め、

静かに呟いた。


「これが……二人が選んだ未来」


式が終わり、

夕奈は蒼真の腕に寄り添った。


「蒼真……

 これからもよろしくね」


「当たり前だ。

 ずっと一緒にいる」


夕奈は微笑んだ。


「うん。

 今度こそ……ずっと」


二人は手をつなぎ、

新しい未来へ歩き出した。


空の上で、

ココとミミが優しく見守り続ける。


運命に抗い、

未来を変え、

そして掴んだ“幸せ”。


二人の物語は、

これからも続いていく。


ー完ー

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