7‐開かずの間
3階の【回廊】へ戻ってきた。
黒い壁に囲まれた中央部を、ぐるりと回ってみる。
変化が起きていた。
「ドアができてる」
空洞部は部屋だったのか。
鍵もないのに、開かない。
いくら引いてもビクともしない。
「開ける方向、合ってるよな……?」
試しに押してもみるが、ダメだった。
『【開かずの間】』
SOSさんからメッセージ。
向こうも開かないのか。
『黒い壁にドアができ、3階の空洞部に入れるようになっていた。
中からは、何の音もしない。
慎重に開ける』
えっ!? あっちは開いたのか。
じゃあなんだ、【開かずの間】ってタイトルは。
『床はチェッカー。天井は全面パネル照明。壁は黒。
中央には、白い台がポツンとおいてある』
『ベッドにちょうどいい大きさだが……寝てみて、すぐ起きた。
落ち着かない。
壁際に寄せたくとも動かない』
四方に空間があると落ち着かないよな。
立ってる時も、壁を背にしていた方が安心するし。
部屋の真ん中に置かれた、長細い台……
想像してみて、俺は少し眉根を寄せた。
休むためのものいうより、何か別ためのものに思える。
診療台、手術台、安置台――縁起でもない連想に、首を振った。
『出ようとして、焦る。
開かないのだ』
え……?
『閉じ込められたのか……?』
メッセージの連投は、そこで止まった。
「SOSさん!?」
俺は全身でドアを引いた。
やはり開かない。
【開かずの間】って、そういうことか!
「SOSさん、居るんですか!?」
返事はナシ。
ドアに耳をそばだててみるが、人のいる気配はない。
『いくら引いてもダメ。
試しに押してみてもムダ。
鍵もないのに、なぜ』
『この部屋に不自然なところはない。
広さはタイル6つ分で、フロアのタイル総数と一致する。
影も正常だ。
他に何がある?』
助けなくては。
SOSさんのメッセージを読み返し、俺も状況を想像してみる。
ドアを開けて、台に寝転んで、ドアを引いて出ようとする……
「あれ……?」
俺は違和感を覚えた。
「引いて出ようとしたってことは……開けるときは、押してるよな」
俺は眼前のドアを眺めた。
「俺は、引いて開けてるよな」
ドアの端を注視する。
さっきも見た通り、蝶番の軸はこちら側にある。
俺側に引いて開ける造りだ。
『SOSさんと俺、ドアの開け方が逆ですね』
SOSさんのドアは押し開ける、外開き。
俺のは引いて開ける、内開き。
それが違う。
指摘すると、廊下が騒がしくなった。
――ドンドン! ドンドン!
中から誰かが必死に叩いている音。
「SOSさんですか!?」
俺はドア越しに呼びかけた。




