一筋の光に守られて
ロキシーが闇に取り込まれるのか?
ヴェルディと共に、闇の城へと帰還したフィオーレ。長い廊下を歩きながら、彼女は侍女を捕まえて尋ねた。
「ディオンは?」
侍女が、フィオーレを見上げ慌てて頭を下げる。
「陛下なら書庫にいらっしゃいます」
「そう。分かったわ」
フィオーレは短く答えると、そのまま書庫へ向かうと扉を押し開ける。部屋の奥では、一人の男が椅子に座り本のページをめくる手を止めた。
「フィオーレ、おかえり」
「ただいま!ディオン!」
フィオーレの顔がぱっと明るくなる。
ドレスの裾がふわりと広がり、ヒールの音を鳴らし て彼の元へ駆け寄った。
「随分、帰りが早かったね」
「卒業まで半年あるけど、ダメだったかしら?」
ディオンが、静かに本を閉じた。
「いいや。半年もあれば十分だよ」
その言葉を聞くと、ディオンの首元に、絡みつき身体を寄せた。
「ねぇ、私ロキシーを、早くこの手にしたいの」
ディオンが椅子から静かに立ち上がる。
「じゃあ、少し手伝うよ」
◇
彼が手をかざすと、闇の魔法が空間に広がる。黒い霧が集まり、やがて宙に映像が浮かび上がっ た。寝台の上で眠るロキシーの姿。
「さあ、フィオーレ」
ディオンがフィオーレに手を差し伸べると、嬉しそうにその手を取り、二人は闇の中へと溶けるように消えた。
そこは、どこまでも続く暗闇の世界だった。
「ディオン、ここはロキシーの夢の中なの?」
「そうだよ」
ディオンが指を差す。
「ほら、あれを見て」
闇の中に一つの光景が浮かび上がると、そこには──剣を握ったロキシーが立っていた。血を流して倒れているマリエット。ロキシーの手が震え、絶望の断末魔が響き渡る。
「マリエット…俺が…俺が!!」
錯乱し頭を抱えて、うちひがれるロキシーの姿を見たフィオーレは、恍惚の表情を浮かべ笑みを零して見ている。
「俺は…マリエットを守れる騎士になりたかったんだ…」
夢の中で、あの惨劇の記憶が繰り返され、その度にロキシーは絶望の闇に飲まれかけていた。
「やめろ!」
ロキシーは頭を抱えた。
「もう、やめてくれ! ! 」
ロキシーの様子を見ていたフィオーレは、自分の身体を抱きしめるように震えた。
「ああ…素敵な賛美歌なのかしら」
ディオンが、静かに言う。
「さあ、フィオーレ。行っておいで」
◇
泣き崩れるロキシーの前に、そっと膝をついて、優しく抱きしめる。
「可哀想なロキシー」
ロキシーの耳元で囁く。
「マリエットを切り裂いてしまったことを、嘆いているのね」
「…やめろ」
ロキシーは震えた声で言う。
「マリエットは、きっとあなたを許さない」
「やめろ!!」
ロキシーはフィオーレの手を振り払った。
だがフィオーレは再び抱きしめる。
「ロキシー、私があなたを許すわ。だから自分を責めないで」
フィオーレが甘く嘱く。
「私はあなたの痛みが分かるわ」
「離せ!」
ロキシーは叫んだ。
「お前に何が分かる!!」
フィオーレは微笑む。
「あなたの苦しみや悲しみ全て、分かるわ」
ロキシーの頬に手を当て、そして手を差し出した。
「だから、一緒に闇の世界へ来ましょう?その苦しみが消えて楽になれるわ」
フィオーレが、闇の奥を指さす。甘く、誘うように。
「さぁ、ロキシー。迷わないで」
差し出された手に迷いがあるが、フィオーレの言葉に
ゆっくりと、ロキシーの手が動き、触れようとした――その瞬間。
眩い光がロキシーを包んだ。
「きゃっ!」
眩しさのあまり、フィオーレが思わず後退する。光の中から声が響いた。
「その者に近づくな。ロキシー、闇に飲まれてはならぬ」
光はさらに強く輝く。
「そなたの強い想いが、新たな力を生む。だから、その手を取ってはならない」
フィオーレの顔が、怒りに歪むと闇のオーラが爆ぜる。
「邪魔をするな!!ロキシーは、私のものよ!」
しかし光は揺るがない。むしろその力はさらに増していく。その衝撃で、フィオーレとディオンは弾き飛ばされた。視界が歪み、闇が裂けると二人は、城へと戻っていた。フィオーレは床を踏み叩いた。
「あと少しだったのに!!」
怒りに震える。しかしディオンは静かだった。腕を組み、何やら考え込んでいる。
「あの光は…」
低く呟くと、口角が緩み笑っていた。
「なるほど。あの光は、奴の加護か」
ディオンが、小さく呟くと窓の外を見上げもうじき開くであろう封印の扉を見つめ、小さく笑うのだった。
更新が、遅くなりました。闇の帝王の名前が、ディオンになりましたことを、お知らせしますm(*_ _)m




